~あなたサイド~
停学が明け、
わたしの学校生活は再開した。
義勇くんが信じてくれている。
それだけで、残りの謹慎期間も
心穏やかに過ごすことができた。
謹慎について、あれこれ言ってくる
同級生もたくさんいた。
でも、義勇くんを想って、
くちびるに指を当てると、
心を強く保てた。
あの…公園でのキスが、
わたしにエネルギーを注いでくれた。
フル充電だ!!
***
お昼休みの中庭。
本を読んでしおらしくしている
わたしの横に、
時透くんが顔を出した。
ひぇっ…
うそでしょ…。
あきらめてくれたのかと…。
バカみたい…。
本当に、勝てるわけないんだから…。
…でも、時透くんのその本気が
少なからずわたしの心には
届いていた。
真っ直ぐな気持ちが…うれしくもあった。
そして放課後。
気になって、
武道場に行ってみると…
竹刀を構えた時透くんが、
義勇くんに決闘を申し込んでいた。
スパーンッ…!!
時透くんは、すさまじい早さで
義勇くんに斬りかかった。
だけど、すんでのところで、
義勇くんが顔を傾けてよけた。
義勇くんの本気の構えだった。
パァァァーン…
バシーン…
勝負は一瞬だった。
肩を押さえた時透くんが、
床に伏せっていて…
わたしは、時透くんのそばに
かけ寄った。
時透くんの本気の気持ちが、
痛いほど伝わってきて…。
わたし…時透くんに嘘ついてる…。
わたしも、本気で応えないと…。
すると…
時透くんは、剣道部の先輩達に
あっという間に囲まれた。
わたしは…その場に座り込んで
何も言えなかった。
胸が…痛かった…。
このままじゃ、
時透くんの本気に、失礼だよね…。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。