~あなたサイド~
小説に没頭して、
期末テストは散々だった。
かろうじて補習は免れたけど…。
でも、すべて出し尽くして、
心地よい疲労感だった。
放課後、わたしは久々に外出した。
いろいろと、ひと段落ついて、
気が抜けていた。
油断もしていただろう。
赤信号を見落とし…
キキー…
ガシャーン…
気を…失った…。
義勇くん…
…。
~あなたの夢の中~
ウェディングドレスを着たわたしが、
義勇くんの胸に飛びこみ、
義勇くんはびっくりして抱きかかえる。
これは…結婚式…?
でも…
誰だったっけ…。
思い出せない…大事な…友達なのに…。
~夢終わり~
気を失ってた!?
目を開けると、夢に似た派手な男の人が、
わたしをのぞき込んでいた。
学校の近くの交差点だ。
男の人は、わたしが無事なのを見て、
ほっと息を吐くと、
一気にしゃべり始めた。
車の右前が、電柱に当たって
へこんでいた。
ヤバいかも…。
ストン…
わたしは、あまりのことに
腰が抜けてしまったみたいだった。
ヒョイ…
軽々と肩にかつがれてしまった。
なんて背の高い人なんだろう…
地面が遠い…。
男の人が、わたしを肩からおろし、
顔をまじまじと見る。
な、なんだろう…/////
近くで見ると、やけにカッコいい顔だ。
…いやいやいや。
わけがわからない。
豪快に笑っているけど…
何で!?
そう言って、豪快に笑う男の人は、
わたしを再び、肩にかつぎ上げた。
車に放り込まれ、
運転をする男の人をよく見ると、
左眼に、派手な化粧が施されていた。
花のような化粧…どこかで見たような…。
誰だっけ!?
そして…
寮のベッドに横になった時、
ようやく誰なのか思い出した。
体が震えた。
そう。
わたしの尊敬する小説家、
宇髄天元先生だったのだ。
Next「運命のしらせ」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。