~あなたサイド~
どうしてこうなったのか。
私は今、悠々と女子寮から出てきた
クラスメイトの時透くんに、
抱きかかえられていた。
時透くんは、茂みや柵を華麗にとび越えて、
教室へと向かって行く。
キーンコーンカーンコーン
ガラッ…
教室の扉が中から開いた。
義勇くん!?
な、なんでここに…!?
時透くんが私を抱いていたもんだから、
クラスのみんなが、ヒューヒューと
はやし立てている。
義勇くんに見られたっ…。
…じゃなくて、なんで義勇くんが!?
如月は、私の旧姓だ。
“冨岡”になったはずなのに、
おばあちゃんが卒業までは如月でいなさいって…。
ようやく足をついたけど、
ふわふわフラフラして…。
クラスのみんなの視線が痛かったけど、
私は正直それどころじゃなかった。
な、なんで義勇くんが!?
担任っ!!??
ストン…。
わたしは頭が真っ白なまま席についた。
黒板には、義勇くんの字で
「冨岡義勇」と、大きく書かれていた。
後ろの席から、親友の禰豆子が
ヒソヒソささやいてくる。
ボキッ…。
すごい音を立てて、チョークが折れた。
クスクスとクラスに笑い声が起こり、
義勇くんが真っ赤になっている。
かわいい…。
…じゃなくて!
小声で禰豆子に聞く。
禰豆子に言われて周りを見ると、
確かに女子達が色めき立っていた。
義勇くんは、わたしのダンナ様なのに…。
昨夜、義勇くんそんなこと一言も…。
義勇くんが担任!?
なんで?
あ…なんかめまいが…
バターン…!!
新学期早々、わたしはキャパオーバー。
気がつくと倒れていた。
Next「保健室で…夢の記憶」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。