~あなたサイド~
義勇くんと神戸に行く。
わたしは、カナヲと禰豆子にしばしの別れを告げ、
学校をしばらく休むことにした。
おばあちゃんにも、許可はもらった。
びっくりさせちゃったけど、
最後には…
そう言って送り出してくれた。
おばあちゃん、ありがとう…。
そして、待ち合わせの日、
新幹線のある駅に行くために
寮の最寄り駅に行くと、時透くんに会った。
混乱を避けて、三学期まで、
義勇くんと神戸に行くことを
時透くんに話した。
時透くんの足は、ひどい痣で、
すねにヒビが入っているらしかった。
肩が軽くなったと同時に、
わたしからカバンを奪った時透くんが、
駅の改札を先に通り抜けていた。
~義勇サイド~
学校で退職の事務手続きを済ませ、
武道場へと向かうと、
激しい悲鳴が聞こえてきた。
ただごとではない。
俺は、走った。
血だらけの煉獄が、
竹刀を構えて立っていた。
そんな煉獄を、お構いなしに
妙なヤツが痛めつけている。
煉獄はいっさい、反撃しない。
…指導者の風上にも置けないっ。
俺の顔を見定めると、
ようやくその手を止めた。
怒りに燃えた眼光は、俺をにらみつけている。
だが俺はそいつには構わず、
煉獄に駆け寄った。
煉獄は、立ったまま気を失っていた。
なんという精神力だ…。
だが、危ない状況だ。
ひとまず煉獄を寝かせて、
帯を外して楽にさせる。
…すごい血だ。
あばら骨が、肺に
刺さっているかもしれない。
じきに救急車が到着した。
煉獄は、意識を失っている。
俺は、煉獄と一緒に救急車に乗り込んだ。
錆兎と不死川が来たから
ここはもう大丈夫だろう。
煉獄…。
頼むから…生きろ…!!
あなた…
待っていてくれ…
煉獄を助けたらすぐに行くから…。
Next「届かない」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!