~あなたサイド~
停学に外出禁止、
携帯も取り上げられて、
義勇くんには会うことはおろか、
連絡すら取れないでいた。
義勇くん、怒ってるかな…。
時透くんと部屋にいたこと、
もちろん聞いてるよね…。
わたしのこと、
嫌いになっちゃったかも…。
今日は金曜日。
まもなく停学期間が終わる。
ハァッ…。
窓から空を見上げると、
月が雲に隠れ、闇夜だった。
思い立ったら、
いてもたってもいられなかった。
わたしは靴を持ち、
窓からそーっと降りた。
見つかったら、
謹慎の延長は免れないだろう。
でも…
塀を乗り越えて、外に出るんだ…!
無理…かもしれない。
2メートルくらいある。
…とその時、
時透くんが、わたしの肩をつかむ。
行かせない…という強い力で…。
わたしは、時透くんに持ち上げられて
塀を乗り越えると、
義勇くんちに走った。
~時透サイド~
あなたは、
息を切らして行ってしまった。
僕は、闇夜の中、
しばらく座りこんでいた。
時折雲が途切れ、
月が顔を出す。
僕の影が、地面に伸びる。
悲しい影だ。
しばらくすると、
門のところに誰かの陰が見えた。
あなたが戻ってきたのかも…!
僕は急いで駆け寄った。
しかし、門に立っていたのは、
まさかの冨岡先生だった。
あなたの部屋を見つめている。
教えるのは癪だったけど、
あなたが傷つくのはもっといやだった。
僕がそう、つぶやいた時には、
冨岡先生は、すでに背中が見えないくらい
遠くまで走っていた。
~あなたサイド~
ピンポーン
焦っていたから、
合鍵は持ってこなかった…。
中からは返事がない。
…いないみたいだった。
義勇くんに会って、
わけを話して…
それから…
時透くんと一緒に、
寝ていた事実は消えないのに…
言いわけして…
それから…。
…。
わたしは、義勇くんちから離れて
歩き出した。
行くところがなかったけど、
寮に帰る気にもならなかった。
~義勇サイド~
ガチャッ…
部屋は真っ暗で、
誰もいなかった。
来ていないのか!?
この暗い夜に、
どこへ行ったというのだ。
喉の奥が、ヒリヒリする。
焦燥感ばかりがつのる。
会いたい…
会って、この腕に抱きしめたい…。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。