第21話

会いたい
3,121
2020/10/26 07:00
~あなたサイド~


停学に外出禁止、
携帯も取り上げられて、
義勇くんには会うことはおろか、
連絡すら取れないでいた。
あなた
声が…聞きたいよ…
義勇くん、怒ってるかな…。

時透くんと部屋にいたこと、
もちろん聞いてるよね…。

わたしのこと、
嫌いになっちゃったかも…。
あなた
義勇くん…会って話したい
今日は金曜日。
まもなく停学期間が終わる。

ハァッ…。

窓から空を見上げると、
月が雲に隠れ、闇夜だった。
あなた
行こう…!
義勇くんのところへ!
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
あなた?
思い立ったら、
いてもたってもいられなかった。
あなた
カナヲ、お願い…
どうしても義勇くんに会いたい

会って、わたしが好きなのは
義勇くんただ一人と伝えたいの…
栗落花カナヲ
栗落花カナヲ
わかった

点呼は何とかするから…
行ってきたらいいよ
あなた
ありがとう!!
わたしは靴を持ち、
窓からそーっと降りた。

見つかったら、
謹慎の延長は免れないだろう。


でも…
塀を乗り越えて、外に出るんだ…!
あなた
ん…この塀、
思ったより高い…
無理…かもしれない。
2メートルくらいある。


…とその時、
時透無一郎
時透無一郎
あなたっ…何してんだよ
あなた
時透くんっ…!?なんで
時透無一郎
時透無一郎
あなたが窓から出るのが、
見えたから
あなた
義勇くんのところに
行くのよ…
時透無一郎
時透無一郎
僕たち外出禁止だ
時透くんが、わたしの肩をつかむ。
行かせない…という強い力で…。
あなた
離して
時透無一郎
時透無一郎
バカなことはよしなよ
あなた
わたし…
義勇くんに勘違いされたら
生きていけないっ…
時透無一郎
時透無一郎
遊びじゃなかったの?
あなた
会って話したいのっ…
義勇くん、きっと怒ってる
時透無一郎
時透無一郎
そんな…好きなんだね…
あなた
お願い…行かせて
時透無一郎
時透無一郎
わかったよ、ほら
肩…足乗せなよ
あなた
あ、ありがとっ
わたしは、時透くんに持ち上げられて
塀を乗り越えると、
義勇くんちに走った。




~時透サイド~
あなたは、
息を切らして行ってしまった。
時透無一郎
時透無一郎
なんだ…本気なんじゃん
冨岡先生のこと

僕は、闇夜の中、
しばらく座りこんでいた。

時折雲が途切れ、
月が顔を出す。

僕の影が、地面に伸びる。
悲しい影だ。
時透無一郎
時透無一郎
バカだな僕も…
しばらくすると、
門のところに誰かの陰が見えた。

あなたが戻ってきたのかも…!

僕は急いで駆け寄った。
時透無一郎
時透無一郎
あなたっ…?
しかし、門に立っていたのは、
まさかの冨岡先生だった。
あなたの部屋を見つめている。
時透無一郎
時透無一郎
…冨岡先生
何してるんですか
冨岡義勇
冨岡義勇
…ッ時透!?

いや…
時透無一郎
時透無一郎
あなたなら、
先生のとこに行ったはずなのに
なんでここに…
冨岡義勇
冨岡義勇
なんだって!?
教えるのは癪だったけど、
あなたが傷つくのはもっといやだった。
時透無一郎
時透無一郎
早く行ったらどうですか
冨岡義勇
冨岡義勇
恩に着る、時透…
時透無一郎
時透無一郎
あなたの為だ…
僕がそう、つぶやいた時には、
冨岡先生は、すでに背中が見えないくらい
遠くまで走っていた。
時透無一郎
時透無一郎
冨岡先生も
本気なんじゃん…




~あなたサイド~
あなた
ハァッ…
ピンポーン
あなた
いないのっ…?義勇くん
焦っていたから、
合鍵は持ってこなかった…。

中からは返事がない。
あなた
義勇くん…開けて!
…いないみたいだった。


義勇くんに会って、
わけを話して…
それから…
あなた
それから…

それで…わたしはどうする?
時透くんと一緒に、
寝ていた事実は消えないのに…

言いわけして…

それから…。

…。
あなた
だめ…会えない

どんな顔して会えばいいのよ
わたしは、義勇くんちから離れて
歩き出した。

行くところがなかったけど、
寮に帰る気にもならなかった。



~義勇サイド~
冨岡義勇
冨岡義勇
ハァッ…ハァッ…
あなたっ!?
ガチャッ…
冨岡義勇
冨岡義勇
あなたっ!?
いないのか!?
部屋は真っ暗で、
誰もいなかった。

来ていないのか!?
冨岡義勇
冨岡義勇
ならば、
いったいどこにっ…!?
この暗い夜に、
どこへ行ったというのだ。
冨岡義勇
冨岡義勇
あなたっ…
どこにいるんだっ…?

あなた…
喉の奥が、ヒリヒリする。
焦燥感ばかりがつのる。

会いたい…
会って、この腕に抱きしめたい…。



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