~あなたサイド~
義勇くんが、不死川先生を
連れてきた週末。
不死川先生は、わたしのことを
昔から知っているらしい。
あっ…しまった!
リビングに日記出しっぱなし!!
義勇くんが、開いたページに
目を落としているっ…。
ちょっぴり読まれたかな/////
絶対読んだなぁぁ/////
昔って、どのくらい昔だろう。
なんだろ…
不死川先生が目を細めて
じっ…とわたしを眺めるので、
聞くに聞けなかった。
不死川先生は、
スーパーの袋いっぱいに
食材を買い込んできていた。
そしてなぜか、
不死川先生とわたしとで
料理をする流れとなった。
義勇くんは、ダイニングにひじをついて
柔らかい顔で、その様子を眺めている。
なぜだか、すごーくご機嫌だった。
義勇くん、やっぱり鮭大根が
好きなのねぇ。
不死川先生は、
本当に料理が得意で、
どんどん下ごしらえを済ませてゆく。
鯛を塩釜にして、
豚かたまりには、たこ糸を巻いている。
ほ、本格的…!!
あれだけやったんだもん。
それに…時透くんが、
たくさん教えてくれた。
そして、夜。
窓を開けると、
吸い込まれそうな、見事な満月だった。
リビングのテーブルに
ところせましと、料理が並ぶ。
不死川先生は、満足げに笑うと
わたしの髪をくしゃっとした。
すると、その手を
義勇くんがすかさず払いのける。
不死川先生の料理に舌鼓を打ち、
満腹でわたしは少し眠くなり、
ソファでくつろいでいた。
不死川先生と義勇くんは、
お猪口を手に、窓辺で呑んでいた。
なんでかな…。
二人の会話が、
途切れ途切れに聞こえてくる…。
耳に流れてくる二人の話は、
お伽話みたい…。
鬼とか、痣とか、
なぜだか、
私が昔見た、夢の話に似ていた。
Next「月に光る記憶」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。