第26話

なぜだか懐かしい
2,730
2020/11/03 07:00
~あなたサイド~

義勇くんが、不死川先生を
連れてきた週末。

不死川先生は、わたしのことを
昔から知っているらしい。
あなた
謎だわ…
不死川実弥
不死川実弥
んじゃ、上がるぜぇ♪
あっ…しまった!
リビングに日記出しっぱなし!!

義勇くんが、開いたページに
目を落としているっ…。
冨岡義勇
冨岡義勇
何書いてるんだ?
あなた
秘密っ!
エッセイもどきよ
冨岡義勇
冨岡義勇
フフ…
ちょっぴり読まれたかな/////
あなた
義勇くん、着替えて来なよ!
冨岡義勇
冨岡義勇
ああ、そうする

あなたは…
俺のとなりが幸せなのか
フフ…
絶対読んだなぁぁ/////
不死川実弥
不死川実弥
あなた…
着物似合ってるぜぇ
かわいいなァ
あなた
えっ…/////
ありがとうございます
不死川実弥
不死川実弥
そうしてっと、
昔みたいだなァ…
あなた
昔…ですか…?
昔って、どのくらい昔だろう。

なんだろ…

不死川先生が目を細めて
じっ…とわたしを眺めるので、
聞くに聞けなかった。
不死川実弥
不死川実弥
ククッ

ああ…昔だ

さてと
じゃあ、キッチン借りんぞォ
不死川先生は、
スーパーの袋いっぱいに
食材を買い込んできていた。
あなた
料理…!?
不死川実弥
不死川実弥
ああ
俺はこう見えて、料理が得意なんだ
夜に向けて、つまみを作るぞォ
あなた
あ…手伝います!
キッチン、勝手にあれこれ
さわらないでくださいっ
不死川実弥
不死川実弥
んじゃ、一緒にやるかァ…!
そしてなぜか、
不死川先生とわたしとで
料理をする流れとなった。

義勇くんは、ダイニングにひじをついて
柔らかい顔で、その様子を眺めている。

なぜだか、すごーくご機嫌だった。
冨岡義勇
冨岡義勇
(あなた…
 学校にいる時よりかわいい…
 俺のあなた…

 ちょこまか動いてかわいい)

フフ…
あなた
義勇くん、はいお茶
冨岡義勇
冨岡義勇
ありがとうあなた
あなた
今日は鮭大根も
作るからね!
冨岡義勇
冨岡義勇
ああ、楽しみだ
義勇くん、やっぱり鮭大根が
好きなのねぇ。


不死川先生は、
本当に料理が得意で、
どんどん下ごしらえを済ませてゆく。

鯛を塩釜にして、
豚かたまりには、たこ糸を巻いている。

ほ、本格的…!!
不死川実弥
不死川実弥
さてあなた…

中間テスト…
よく出来ていたぞ数学
がんばったなァ
あなた
ほんとですか!?
やった…!
不死川実弥
不死川実弥
プリント100枚、
効果あったみたいだなァ
あなた
へへ…
あれだけやったんだもん。
それに…時透くんが、
たくさん教えてくれた。
不死川実弥
不死川実弥
ほら、煮えてるぞォ…
アクをすくえ
あなた
あっ…はい!


そして、夜。

窓を開けると、
吸い込まれそうな、見事な満月だった。

リビングのテーブルに
ところせましと、料理が並ぶ。
不死川実弥
不死川実弥
どうだ、うまいかァ?
あなた
…ッ!!
すごく美味しいです!
びっくりです
不死川実弥
不死川実弥
そうかァ!
いっぱい食えよォ!!
不死川先生は、満足げに笑うと
わたしの髪をくしゃっとした。
あなた
…は、はいっ/////
すると、その手を
義勇くんがすかさず払いのける。
冨岡義勇
冨岡義勇
鮭大根は、すごく美味い
あなた
義勇くん、よかった!
不死川実弥
不死川実弥
…ンだよ、俺の料理は美味くねぇ
みたいな言い方すんなァ!
冨岡義勇
冨岡義勇
男が作ったというだけで、まずい
不死川実弥
不死川実弥
シェフだって板前だって
男だろうがァ!!
冨岡義勇
冨岡義勇
…違う
あなた
ふふっ
義勇くん、全部美味しいよ!
不死川実弥
不死川実弥
だよなァ!!


不死川先生の料理に舌鼓を打ち、
満腹でわたしは少し眠くなり、
ソファでくつろいでいた。

不死川先生と義勇くんは、
猪口ちょこを手に、窓辺でんでいた。
あなた
なんだか…懐かしい光景…
なんでかな…。

二人の会話が、
途切れ途切れに聞こえてくる…。
不死川実弥
不死川実弥
あんときゃおまえの手がすべって
刀が…
冨岡義勇
冨岡義勇
おまえの刀を受け、
刀身が赫くなって…
不死川実弥
不死川実弥
鬼…上弦の壱との戦いで
痣が…
耳に流れてくる二人の話は、
お伽話みたい…。

鬼とか、痣とか、
なぜだか、
私が昔見た、夢の話に似ていた。



Next「月に光る記憶」


プリ小説オーディオドラマ