~あなたサイド~
わたしは行くあてもなく、
公園のブランコに腰をかけた。
鈴虫のリリッ…という鳴き声が
胸にまで響く…。
かといって、どうしたらいいかも
もう、わからなかった。
ハァッ…
結婚式、感動的だったのになぁ。
こんなことになるなんて
夢にも思わなかった。
義勇くんと幸せになるって
ただただ夢見心地だった。
でも現実は…。
ガサッ…
暗闇から音がした。
な、何っ…!?
嘘みたい…!
義勇くんだ…。
義勇くんの顔を見たとたん、
がまんしていたものがあふれて、
言葉が詰まってしまった。
涙が止まらなかった。
ブランコから立てずにいると、
義勇くんが身をかがめて、
わたしの目の前にひざまずいた。
義勇くんが優しくほほ笑んで、
親指でわたしの涙をぬぐう。
義勇くんっ…。
義勇くんに、
口をふさがれた。
義勇くんのくちびるで…/////
義勇くんの顔が、首筋に寄せられた。
ものすごく久しぶりに感じる。
義勇くん…
会いたかった…会いたかったよ…。
義勇くんの腕が背中に回され、
強く…
とても強く抱きしめられた。
わたしは、ぎゅうっ…と
義勇くんの背中に手を回して
抱きしめ返した。
耳元でささやかれる、
義勇くんの声にぞくぞくする。
突如、義勇くんの
わたしを抱きしめる力が強くなった。
さっきよりも、
熱く…強く…熱烈なキスだった。
頭がくらくらする。
心臓が…
義勇くん…
溶けそう…このまま離れたくない…。
時が止まったかのように
長いキスだった。
角度を変えて、
何度も義勇くんのくちびるが
押し当てられる。
…ようやく義勇くんが離したのは
遠くに車が通る音がした時だった。
義勇くんが、わたしの両手に、
ぎゅうっ…と指をからませる。
よいしょっ…。
わたしは、
元気よくブランコから立ち上がった。
義勇くんが、
お姫様抱っこをした。
義勇くんは、優しくキスを落とすと、
わたしをそっと降ろした。
義勇くんの胸に抱かれている間、
義勇くんの体温と
早すぎる心臓の鼓動に、
ドキドキしっぱなしだったことは
内緒だ。
──義勇くんにもっとふれたい…
わわっ…わたし、
何考えてっ…/////
でも…近い将来、
そうなったらいいな…。
Next「決闘!?」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!