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第23話

!!!ヲ招ク???

ついていない。

今日は非常についていないと俺は思う。

あの化け物と戦闘になったこともたいがいだが、問題はそのあとに現れたこいつ。
アロハシャツでサングラスで…どう見てもチャラそうな奴に絡まれた。

「あー、鬱陶しいと思ってるだろ?だったら手短に済ませてやるぞ?」

とこんな風に心を読んだりもする。
この上原という男はおそらく俺のことを知っててこの調子なのだろう。

…まあだとしたら、いい度胸だと褒めてやった後でボコボコに…。

「よくねえなあ…。」

と考えるほうがこいつの前では無力だったか。

「あぁ?」
「お前なぁ今この俺、上原様に痛い目見せてやろうとか思っただろ?」
「あんたがそのつもりで来たんじゃないのか?」
「甘いなお前、マジで甘いよ。俺はお前に潰されに来たわけでもなきゃ、もちろんお前を潰しに来たわけじゃない。まあ信用されるとも思ってないがな。」

上原という男からは一種の余裕が感じられた。この間の柴田のとこの、あの防護服つけてたくせに怯えまくってた研究員とはえらい違いだ。

「でまあ用件から入らせてもらうんだが…。」

上原はそう言うと地面にひざまずいた。そして…

「すまなかった!」

そのチャラい格好には似ても似つかない、土下座を決め込んだ。

「は?何のつもりだアロハシャツ!!!」
「いや謝ってんだよ!!てかアロハシャツってひどくねお前!?」

アロハシャツの自称天才は文句こそ垂れたもののその跪いた体制だけは崩さなかった。そして…

「まあいいや。いろいろお前に話すことがある。まず謝ることだが…うちの職員の粗相だな。」

奴が"うちの職員"ということは…あのビビり防護服はこいつの部下だったってわけか。なるほどなるほど…。
道理で話が早いと思ったぜ。

「しかしな、俺の方は粗相しに来たわけじゃないしそれこそさっきも言ったようにお前を潰すつもりはない。」

奴は俺の態度など気にも留めていないかのように話し続ける。ここまで余裕を見せつけられると、俺の方が敵視する気力を失うくらいだ。

「あのな、俺はむしろお前の行動には賛同するし応援するし感謝してんだ。」
「じゃあなぜ柴田なんかに所属するのかが不思議だなあ。」
「蓋開けたら違ったって感じだよよくあることさ。」

男は割と重要な事実を軽いノリで語り続ける。もう俺はこのころになると一切の敵視や威嚇をやめ奴から情報を掘り出すだけ掘り出そうと、そう考えていた。

「ならあんたもあの化け物について知ってるのか?上原さんよ。」
「ああ、E$CAエスカのことか。当然知ってるよ。」

知っている、彼は確かにそう答えた。ならば次に取るべき行動は一つだけである。
こいつから絞り出せるだけの情報を…

「別に変に構えなくても、今から教えてやっから。E$CA…お前が狩ってきたバケモノのこと。」

やはり、見透かされていた。ただ断られるのではなく、教えるというのだから都合がいい。俺は上原が言うのとは別の意味で構えた。

「よし、あんたの知ってることを洗いざらい言ってもらおうか、上原さんよ。」

俺はそういってコンマ単位で上原をせかす。…が彼は一向に口を開こうとせず、むしろ自分が持っていたカバンの中からA4用紙の束を取り出すと無言で俺に差し出した。

「あ?何のつもりだ?」
「いちいち説明するのめんどくさいんだよな。そもそも俺直接の管轄じゃないし。ほら、取らないんなら地面に置くだけだ。」

俺はそれを聞き上原の手から半ば強奪する形でA4用紙で作られた資料を奪い取った。
上原は差し出していた手を引っ込めるとにやりと笑って再び口を開く。

「まあ今日はホテルかどっかでゆっくり休め。告げ口の方は心配ねえよ、俺非番だから。もう10時過ぎだし…ん?」

上原の表情が固まる。

「おい上原さん、どうかしたか?」
「10時から…推しのライブが…」
「は?」
「地下アイドルのナイトイベントだよ!!!あーやべ、今から行って15分で着けるから…」

意味が分からん…とまでは言わないがそんなに大事に思うならなぜこんな時間に俺のもとに来たのか、とも言いたい。てかそもそも態度が白々しい。どう考えても抜け出したいだけだろこのアロハシャツ。

「あ!最後一つ!!!」

ふと上原が大声を出した。また心を見透かして文句を言ってくるのか。

「昨今の行方不明の急激な増加がE$CAのせいってのはお前も薄々分かってるはずだ。だがなぜ、変死体ではなく行方不明だと思う?」

唐突すぎる質問が出た。こんな問いを出された暁には、もうこの男をアイドルのところに暖かい目で見送ってやることもできない。

「お前らが隠ぺい工作してるんじゃないのか?」
「あー、それもなくはないな。」

否定こそしなかったが…あいまいな答えだ。まだ何か隠してるということか。

「でもよく考えろ。あのバケモンはそこら中にいるんだぞ?そいつらが各々人を殺してる中で、俺たち柴田生物学研究所が全部に目通してられるか?」

…考えれば、もっともな話だ。
バケモノ…彼らが言うE$CAがそこら中にいるのは俺の経験則でも明らかだ。
にもかかわらず、変死体より行方不明になる人間の方が多くなる、言われてみれば不自然な話である。

「ああやべえ!ライブ終わっちまう!じゃあな桜山!達者でな!!!」

そう言って男…上原は話を切り上げて足早に去って行った。これが俗に言う、ご都合主義というものか。まさか現実で見られようとは。
俺は資料をもって…あー、そうだ。アレを忘れてた。

「店長の名前は…任田とうださんな…。辛かったな…。」

俺は上原から受け取っていたスーパーの店長の免許証を地面の比較的汚れていない場所に置き、手を合わせる。
そしてそのまま、宿を探す前に上原が渡した資料をぱらぱらとめくってみる。

「"E$CAについて"か…。うん?こいつは…?」

ここで俺が目をつけたのはその資料の著者の名前である。
そこに書かれていた名前はさっきのアロハシャツ、上原のものでは無かった。やつの言っていた、『直接の管轄ではない』は本当だったのか。

「"柴田生物学研究所 広瀬ひろせのぞむ"か…。」

E$CAという狩っても狩っても謎の多い存在、それを解き明かすことはもしかしたら俺の戦いの終結に繋がるかもしれない。
もしかしたらこいつ…広瀬望はさっきの上原よりももっと多くのことを知っている可能性だってある。
だとすれば…

「次に探すべきは…広瀬望…。」