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第6話

新入ハ何ヲ見ル
「待て!」

俺は必死にフードを被った人間…さっきの客を追いかける。足の速さは俺と同じくらいか、見失うことは無いな。ただそれは逆に言えば、そうそう簡単に追いつかせても貰えないということか。

「フッ…!」

フードを被った人間は路地に入る。俺もすぐに入るが、そこでそいつの姿を見失ってしまった。

「どこに行ったんだ…?」

…思えば、なんであの客を追いかけようと思ったんだろう。自分でも不思議だ。見失って始めて自分のした事があまり自分の中で意味をなしていないことに気づく。しかし…。

「どこに隠れた…?」

頭でわかっていても、その奥底にある気持ちは変わっていなかったのが事実。気がつけば俺は路地の周りを必死に探し回っていた。

「…お?」

と、ここで俺はあることに気づく。路地の床のある場所に、不自然にベニヤ板が置いてある。そのベニヤ板はこんな夜でも一際違和感を放っていた。俺はベニヤ板を外す。

「なるほどな。」

ビンゴだ。ベニヤ板の下にはハシゴがかかっていた。ハシゴの下に道が通じているのが上から見てもわかる。

「よっ…と。ハシゴ苦手なのに…。」

気がつけば俺はハシゴを下っていた。めちゃくちゃ苦手で、使いたくないと思っていたハシゴをである。やはり心の奥底にある何かが俺を動かしている。それは間違いない。

「…っと。何とか下りれたな。」

無事にハシゴを下りることに成功した。下りた先にある仄暗い道を一歩一歩ゆっくりと進んでゆく。

恐怖はあったが、心の底の何かの方が大きく勝っていた。

それは好奇心とはまた違う。何か本能的に、俺の心を突き動かすもっと大きなもの。

きっとこの先に、その俺を惹きつける何かが…

!!

「誰だ!?」

突然物音が聞こえた。俺はハッと我に返り叫ぶ。後ろを見ると人…と思われる影が立っていた。が、暗くてよく見えない。

「ああ、忘れてた!ちょっと待ってくれ!」

影はそう言って慌てて通路の奥の方に行く。そして少しすると暗かった通路の明かりが付き、人影の正体が明るみになった。そこにいたのは、工場の作業服を着た4、50代の男。男はこちらにゆっくりと歩み寄ってくる。

「よく来たな、古屋進(ふるや すすむ)くん。私は谷口(たにぐち)と言う者だ。」
「なんで、俺の名前を…。」
「ははっ。まあお近付きの印に、握手でもするか。」

その谷口と名乗る男は俺に手を差し伸べ、握手を求めてきた。しかし俺はどうしていいかわからず、その男と握手を交わすことは無かった。少しして男は手を引っ込めて俺に再び語り出す。

「まあそりゃ、その反応が普通だよな。付いて来るんだ。君が来るべくしてここに来た存在であるということを、分かってもらうために。」

谷口はそれだけ言って歩き出した。俺は無言のまま谷口に着いていく。明るくなった通路をしばらく歩いて、谷口はある古い扉の前で止まった。

「さあ、ここだ。」

谷口は扉を開け、俺をその中に入れる。

「…え?」

扉の先の部屋では、老若男女様々な者が退屈そうにしていた。しかし俺を見た瞬間、その者たちの目が輝き出すのが遠目でもわかった。やがて谷口も部屋に入る。

「紹介しよう、彼らは俺や君の仲間だ。で、この若い男が、古屋進くん。みんな仲良くしてやってくれ。」