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第9話

未知 〜地獄行キバス参リマス〜
とある地方の、とある田舎にて…
柴田生物学研究所の研究員である広瀬は部下の庄野を連れてローカルバスに乗っていた。2人以外にバスの中にいたのは運転手と老婆ひとりだけであり、バスの中には沈黙が走っていた。

「そこのあんた達…。」

後ろの席に座っていた人柄の良さそうな老婆がゆっくりとした口調で広瀬たちに話しかける。少しだけ驚き、それに答える広瀬。

「はい。」
「あんた達、今日はどこまで行くのかね?」
「豊本村です。」

広瀬が今回仕事で訪れる村、豊本村の名を口にした瞬間、老婆の表情が一気に険しくなった。そして先程までのゆっくりとした口調が消えてしまったかのように、恐ろしい口調で再び話し始める。

「豊本村…あんなとこ、行くもんじゃないよ!」
「あ、あの…ちなみにそれは…何でなんですか?」
「口に出すのも恐ろしいよ…!兎に角だ!考え直した方がいい!」

広瀬の部下、女性研究員の庄野が単純に不思議に思って質問を投げかけるも老婆はあまりハッキリとした答えを出さなかった。しかし老婆が本気でその豊本村を恐れているということだけは2人とも分かった。

『間もなく田園前、田園前でございます。…次止まります。』

老婆は直後に止まったバス停で足早にバスを降りていった。そしてバスは走り出す。

「…あなたたち。」
「はい。」

声をかけたのは白髪のバスの運転手。

「会話は聞いてたよ。豊本村に行くんだって?」
「ええ…まあ…。」
「悪いことは言わん、辞めておけ。このバスもある時から豊本村には止まらないことになってるんだ。」
「えっ、そんな…。」
「あの、そこの所、何とかなりませんかね…。僕ら、どうしても豊本村に行かなきゃならないんですけど…。」

困り果てた庄野に広瀬が助け舟を出す。庄野は少しばかり安堵の表情を浮かべた。しかし…

「ダメだ。1番近いところで…3つ前のバス停で降りてもらうよ。」
「3つ前!?」
「村そのものの領域はおろか、村の近くでもあまり近づくなってことだよ。察してくれお客さん。」

広瀬と庄野は仕方なく3つ前のバス停で降りるしかなかった。バスは2人が降りたことを確認してUターンする。昼間であるにも関わらず薄暗い山道に2人は取り残されてしまったのだ。

「どうやら、豊本村に近づいてはいけないっていうのは公共サービスレベルで有名な話らしいな。」
「だけど広瀬さん、どうするんですか?バスが使えないんじゃ、向こうに行きようが無いですよ。」
「そうだな…。」

2人は困り果てた。2人が行けと言われている場所に近づくのは想像以上に難しい。

「あれ?」

…とここで広瀬はある事に気がつく。庄野は広瀬の顔色でそれを察するが、あまりいいことでは無さそうだ。

「庄野くん、ここら辺店とか無いぞ…。」
「え、だって建物ならいっぱい…。」
「全部空き家になってるんだ。恐らく豊本村の都市伝説でみんな逃げ出したんだろう。」

2人の周りにはそれなりの建物があったはいいが、民家なり店なり、見える建物全てが寂れている。腐っているものもいくつもあり、この時点で2人の恐怖を煽る。

「広瀬さん帰りましょうよ…。で、で、で、建て直しましょ?」
「…すぐには無理だ。次のバスは3時間後。」
「えええーっ!」

庄野は恐怖も相まって今のこの環境に嫌気がさし、思わず大声を出す。広瀬は黙ってこそいたものの、考えは同じだった。ただ部下である庄野の感情をさらに高ぶらせないように、抑えていただけだった。そんな時…

「庄野くん…聞こえるか…。」
「ん?あっ。」

車の音が聞こえた。その音は先程2人を乗せていたバスが帰った方向とは逆、つまり豊本村の方面から鳴っていた。

「ダメ元だが、ヒッチハイクでもして帰ってみるか?」
「いや、方面的に豊本村からですよあれは!もしかしたら案内してくれるかもですよ!」

2人はまだその車が2人をどうするかも分からないのに喜んだ。そして車は2人が目視できるところまで近づいてきた。車種は軽トラだった。軽トラの運転手は2人の目の前でブレーキをかけ、窓ガラスを開けた。

「お2人さん、こんな所で何してんだ?」

軽トラの運転手は筋肉質の男。タンクトップという格好もあって、まさにトラック野郎といった雰囲気の男だった。

「いや実は僕ら豊本村に行きたいんですけど…お察しの通りで…。」
「えへへ。」
「なるほどな…。まあしゃーねーか!」

男は誰もいない助手席をいじり出した。そして…

「ちいと汚ねえけどよ、3人乗りだから乗ってくか?」
「いやでも、帰るところじゃ…。」
「ああ気にすんな気にすんな!あそこは仕事でよく行くんだよ!」
「ありがとうございます!ああほら、庄野くんも!」
「どうも!ありがとうございます!」

2人は深々とお辞儀をして軽トラに乗り込む。そして少しして軽トラは走り出した。しばらくして、気晴らしにと雑談を始める。

「あの…豊本村に行く仕事って…。」
「ああほら、危険だからって都市伝説まで立っちゃって、言っちゃえばあそこの村の人孤立してんのね。だから俺が食料とか届けてるって訳。」
「なるほど!」
「誰があんな根も葉もない噂撒いたんだかねぇ…。」

今まで山道だった所が安定しだしたところで運転手はタバコを取り出す。しかし同乗者がいることを再認識し、徐ろにそれをしまった。

「あ、そっか…。誰も教えてくれるわけがねえよな…。」
「教えてくれるんですか?その都市伝説…。」

広瀬がとりあえずという感じで訪ねてみる。

「あそこの村に行った人間が行方不明になったとか、村で恐ろしいものを見たとか、そんな感じだよ。」

広瀬はちらりと庄野の顔を見て目配せをした。村に行った人間が行方不明…恐ろしいものを見た…どれもE$CAが関わっているとすれば辻褄が合う。

「しかし事実無根ってのは怖いねぇ。現に俺は何ともないってのに。ああほら、そろそろ着くぞ。」

2人が運転手に合図をされ窓の外を見るとそこには民家が数軒建っていた。遠目に人の姿も見える。

「よし、準備しろ。あれがあんたらの目的地、豊本村だ。」