第3話

苛立ちからの事件
26
2020/02/27 04:00
唯晴は、一度も自分の好きなものを買ったことがなかった。
みんなで遊ぶとき、お金でお菓子を買いたかったのに、父は私に1円も渡してくれなかった。
入学式からの1週間は休みらしく、特にすることもなかった唯晴は、
松谷 唯晴
お腹空いたなぁ。お金があればいいのに。
と思わず口に出していた。
高校生になったら、お金くれるのかな〜なんて思ってたけど、1円もくれなかった。
唯晴はその時、悪魔のような考えが天から降ってきた。
お金がないなら、欲しいものを盗っちゃえばいいんじゃないかと。
生まれて来て16年間、ずうっと我慢して来た。
唯晴は決心すると、店の中にさっと入り、お菓子を手にして、周りを確認した。そしてバックの中にお菓子を入れて、一目散に家に帰った。
自分の部屋に入り、ふくろを開ける。
袋には、「チョコレート」と書いてあった。
松谷 唯晴
「チョコレート」って何だろう?人生で初めて食べるなぁ。
そう言って包み紙をとってみると、ダークブラウンの四角い物体がでてきた。
思い切って唯晴は口の中に放り投げた。
口の中でとろりと溶けていく。甘い味が口いっぱいに広がっていく。
唯晴はこんなに美味しいお菓子を初めて食べた。
松谷 唯晴
なんでこんなに美味しいんだろう…。
そして残りのチョコレートもパクパクと口に運んだ。
その日以来、唯晴は他のお菓子にも興味を持ち、気になる度に店から盗んでいった。
その後「呪い」をかけられる事も知らないで…。



3話 終

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