(カランコロン)
マネージャー「おぉ、こっちこっち!」
正孝「お疲れっす。」
マネージャー「おー。メガネかけて、決まってるねぇ」
正孝「ただの変装!あ、なんか食べてい?」
マネ「もち。あ、コーヒーとハンバーグは頼んであるよん」
正孝「さっすが、俺の好みわかってるー。じゃ、注文はいいや。」
マネ「どう?サラリーマンは。問題なく元気にやってる?」
正孝「俺の性格知ってるでしょ。元気だし、問題なくやってるよ。」
マネ「なら安心したわ。って言っても、まだ数日しか経ってないけどな。笑」
正孝「だねー。それで、渡したいものって?」
マネ「あ、そうそう、これ」
マネージャーはそういいながら正孝に雑誌を手渡す。
正孝「これだけ?」
マネ「引退前最後のインタビュー記事。これ渡すのは口実で、ちゃんと元気にやれてるか顔見たかったからさ。」
正孝「ふ。サンキュー。嬉しい。」
正孝は渡された雑誌をペラペラとめくる
あるページで正孝の手が止まる。
【人気急上昇中の窪田正孝は肉食系?!】
正孝「ねぇねぇ。俺が肉好きなのって、世間の人は知ってるもんなのかなぁ。」
マネ「んーまぁテレビとかでもしょっちゅう言ってたからねぇ。観てた人は知ってるんじゃない。」
正孝「だよねぇ。あなたさんが知っててもおかしくないか…」
マネ「ん?」
正孝「んーん。なんでも…」
と言いかけたところで、違和感を覚えた正孝。
正孝「あのさ、俺が肉食べ過ぎてお腹壊したって話。あれは?」
マネ「あれを知ってる人はそんないないんじゃない?深夜ラジオにゲストで出たときのトークだし。
知ってるとしたらコアなファンだろうな。」
正孝「それ、ほんと?」
マネ「ほんとも何も、これから売り出すって時に女性受けしない話題だすからヒヤヒヤしたよ!だからあの時のことはハッキリ覚えてる。」
正孝「その情報は有り難い!ほんとありがと!愛してる!じゃ!」
マネ「え、ちょ。ハンバーグは?!」
正孝「食べといてー」
そう言い残し、正孝はお店を飛び出して会社へ向かって走り出した。
正孝:俺がお腹壊した話、あなたさん知ってるってことは、、
マネージャーが言っていた言葉を思い返す。
ー「知ってるとしたらコアなファンだろうな。」ー
あなたさんが俺のファンだった可能性が高い!
でも、なんで隠してるんだ?
ファンであることくらい、言ってくれればいいのに。
そしたら俺だって、もっと積極的に…
正孝は立ち止まり、マネージャーに電話をする
マネ「もしもし?ちょ、急に飛びだしてくなよー」
正孝「ちょっと聞きたいんだけどさ、ファンの人が、俺に対してファンであることを隠すのってどういう心境?」
マネ「んー。今の状況で?」
正孝「そう!引退した俺の状況で!」
マネ「そりゃあ…好きって気持ちを表面に出し過ぎて引かれたくないとか…あわよくばお近づきになって良い関係になりたいとか…迷惑かけたくないとか…?」
正孝「それだ!」
正孝:あなたさんのことだから、会社とか俺とか周りのことを気にして迷惑かけないように隠してた可能性が高い!
正孝「ありがと!また連絡する!」
マネ「ちょっ」
(ピっ)
電話を切り、息を整えて会社へ戻る正孝。
正孝:こうなったら猪突猛進。
本人に聞くしかない!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。