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第5話



しばらくすると、女の人の腹が奇妙に膨れ上がってきました。女の人のぐったりと寝ている日が増えました。
腹が膨れ続けて、弾けて死んでしまえば良いと呪いました。


またしばらくしたある日、女の人は部屋に籠もって、いまにも死にそうな声をあげてのたうちまわっていました。
そのまま死んでしまえば良いと呪っていると、ほにゃあ、ほにゃあ、とまた妙な声が響きました。猫のような声でした。


同時に女の人の疲れたような、嬉しそうな声がしたので、まだ生きているのかと口をへの字にしました。
それにしても朝からわたしはほっぽり出されていて、おなかが空いたなあ、とぼんやりしていました。


何時間もして、ようやくあのひとが部屋から出てきました。
腕に白い布包みを抱えていて、はらぺこで機嫌を損ねたわたしにそれを見せてくれました。



「ほらローレライ、見てごらん。君の弟だ」



ああ、わたしはあの瞬間を、生涯忘れないことでしょう。


柔らかそうな細い髪、赤らんだまるい頬。
あのひとにそっくりの垂れ目を閉じて、ちいさな人間が眠っていました。

わたしは感動と歓喜にぷるぷると震えて、そのちいさな人間から目が離せませんでした。
弟という生き物だ、とあのひとは教えてくれました。

「名前はたすくだよ。--ほら祐、見てごらん。君のおねえちゃんだ」

祐と呼ばれた生き物は目をさまして、見えているのか分からない瞳で曖昧にわたしを捉えました。

その瞬間、まわりの音はすべてかき消え、まばたきは意味を成さず、時と水は粘り気をもってゆったりと流れました。



触れたい。

この金魚鉢を飛び出して、彼の柔らかい頬に触れてみたい。



……それが、生涯で二度目の、恋の始まりでした。