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第21話



気が付けば、産まれてから一世紀近く経っていました。
人間で言えばとっくにお婆さんですし、長生きしているのはやはり怪異が故、でしょうね。


出来損ないのうたわないローレライだからか、幼い頃に金魚鉢に収まったからか、わたしのからだはあまり大きくはならないままでした。

わたしはたびたび、稚魚の頃に住んでいた、あのノルウェイの涼しい海を回想します。
風景はほとんど忘れてしまいました。けれど、海流の滑らかな手触り、うすらと聞こえる漁師の舟唄だけは、鮮明に反復できるのです。
まるで魂に刻印されたように。




わたしはすっかりひとの生に慣れてしまいました。
ひとの死は、昔ほど鮮烈なものではなくなってしまいました。繰り返される生と死という密室の中で、ひとは勝手に死んでいきました。



ローレライは、海の怪異です。

人間の何倍も、何十倍も生き続けます。


長生きというのは悲しい物だと分かりました、だってみんなわたしを置いていってしまうのですから。



これまで何人もの人を看取ってきました。
憎んでいたひとも、愛したひとも。

戦争でひとが死ぬのも、新しい命が生まれるのも、恋をするのも、愛しいと思う感情も、すべては金魚鉢の分厚いガラス越し。


ひとの営みは虚しいと、……分かっていたのです。