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第11話




嫌なことというのは続く物です。






防空壕から帰ってきて数日して、あのひとは肺を悪くして、そして死んでしまいました。
垂れた眼は閉じられて、もう絶対に開くことはないのです。


たくさんの思い出が蘇っては消えていきました。
八幡さまのお祭り屋台、買い与えられた金魚鉢、若い頃よく着ていたモダンなコート、小魚をくれるあたたかな指先、慈しみに満ちた瞳……


初恋のひとが死んでしまうというのは、これまでに感じたことが無かったほど、ひどくさみしいものでした。

けれどあかねの泣き方ったら凄まじく、自分のことを棚に上げて可哀想に思うほどでした。




ローレライは決して泣きません。そういうプライドに囚われがちないきものなのです。
そもそも、水生のいきものは泣かないのですよ。金魚が泣いたらおそろしいでしょう、それと同じです。
まああれは汚らわしい淡水の下等生物で、わたしは誇り高いノルウェイの海の怪異なので、比較対象としては不適当なのですけれど。

……その頃、ローレライとしてのわたしの誇りはひどく高いものでした。
まるで、あのひととの別離の苦しみでも埋めるかのように。







戦争の間は、あまりすることがありません。
あかねの泣き言を聞いてやって、たまに新聞の戦争に関係の無い記事を読み聞かせてもらって、ラジオもつまらないし、それぐらいです。


お腹の大きくなったあかねは働きにもいけないし、一体どうやって生きているのかと思ったら、祐からお金が送られてくるのだそうです。
祐は今じゃすっかりえらい兵隊さんだそうですが、果たして奥さんを家にひとりぼっちにしておく輩が、良い上司になれましょうか。



シュウト、賢い君はどう考える?