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第22話



あの日。



学者先生の家で、はしゃぐあかねと美代を激しく憎んでしまった日から、わたしは度々、自死について想いを巡らせました。
永い生を断ち切る手段を、わたしは持っていました。厭世観のままに舌を噛み切ろうとしたことも、何度かありました。


それでも思い留まって生きているのは--

あの日、あかねと美代を憎むのをやめたのは、藻掻きながら生きるひとびとが、どうしようもなく愛おしいから。


ひどく苦しんでは死にたいなどとぼやき、他人の同情と哀れみを受け、跳び上がって喜ぶ。
愛しあい、殺しあい、それでも今際の際には、生き延びようと醜く足掻く、その姿。



愛おしかった、それに尽きます。



きっとあのままノルウェイの海に住んでいたら、こんな風に切ない愛を知ることはなかったでしょう。


ソクラテスとか、知らない国のこもりうたとか、そもそも愛や死について知ることもなく。

のうのうと生きて、のうのうと死に、死骸は魚に喰われ、骨はやがて朽ちる。




ノルウェイの海と、金魚鉢。果たして密室はどちらでしょうか。