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第19話




さて、呂久はすくすくと育ち--
と言いたいのですが、子供は得てしてそう上手くは育たないものです。


呂久はまだ幼い頃に破傷風にかかり、幸い命は助かりましたけれど、視力がひどく落ちてしまいました。

当時、眼鏡をかけた子供は(あのひとによく似ていたのですが)聡い子であるかのように見られがちでした。
加えて両親と五人の姉から過度の期待をかけられ、熱心に勉強ばかりしましたので、身長が思うように伸びませんでした。

頭ばかり良くなったちいさな彼は、むずかしい試験に受かり、立派な大学へ行き、卒業後は大きな銀行に勤めました。



かれが就職した頃、わたしはと言いますと、なんと銀行の彼のデスクに居座っておりました。
呂久の仕事ぶりは素晴らしく、見ていて惚れ惚れとする程でした。

凡庸で愚かしい祐とあかねにはもはや興味を抱けず、それよりは算盤を弾く呂久の手元を眺めるのが好きでした。

優しすぎるが故に融資を断れない事だけが玉に瑕でしたが、呂久は大変優秀な青年でした。
少女のような薔薇色の頬、華奢な骨格に似合わぬ大きな丸めがね、母譲りの丸い瞳の、純で愛らしい見目でした。



上司がみな出払った頃、呂久はよくわたしに話しかけてくれました。

「ローレライ」

わたしはぴしゃりと跳ねます。玩具のふりをして凝り固まったからだを振るわせれば、静かにね、と呂久が口元にひとさしゆびを寄せます。
そうして手ずから小魚を与えて貰うのが、至上の幸せなのです。


密室越しの甘やかなランデブーを、わたしたち以外、誰も知り得ませんでした。