「なあ、オリヴィア。」
「駄目です。」
「まだ何も...!」
「どうせ貴方様の事ですから、私にサリヴァン家に潜り込めなんて仰るのでしょう?」
清々しいほどに心中を読まれた。
「仕方ないだろ!僕は立場上おおっぴらには動けないし...!」
リズが話に混ざりたくてうずうずしているようだったが、オリヴィアは一切気にも止めなかった。
「貴方様だって分かっていらっしゃるでしょう。今回の来訪は[女王様]もご存じの公の物です。
それ故に注目もされる。こういった輩が他にもついてくる可能性も十分考えられるのです。」
オリヴィアは話ながらちらりとリズを見つめた。
「そんな外交において、いくら従者といえども余計なことをするわけにはいかないでしょう。」
当たり前。
それを言われたらおしまいではないか。
そう、僕はレウラを治める者。あまり大きな動きがとれないのは良く分かってる。
でも...
僕が一番恐れているのは、権力でも、物理的な力でも、人喰いでもない。
それは、無知 であること。
無知は幸せだと言う奴もいるが、僕にはそうとは思えない。無知であるから危険な目に遭い、無知であるから足元をすくわれるんだ。
だから僕はどんな些細な情報でも手中に納めようとする。いわば、怖がりなのかもしれない。
「なあ、さっきから小難しい話をしているようだが...」
リズが僕らの間に割って入り、背丈を僕に合わせるようにしゃがみこんだ。
...どうせ大差ない癖に。
「今回の奇病騒動についての情報、欲してるのかい?」
「僕にちょっとだけあてがあるんだが。」
悪巧みを思い付いたような、純粋かつあくどい顔で、リズはにやにやしている。
「結構だ。お前みたいな町中の人々に不審者扱いされるような奴と交遊関係を持つ者なんて、信用できるか。」
「へえ?いいのかい?」
「僕が紹介できる限りでは最も信用高い、私立探偵なんだけど。」
「はあ?」
私立探偵?
正直全く信用出来ないな。
人前には決して姿を現さず、影でこそこそと情報をかき集める探偵達を、僕はあまり好んではいなかった。
最も、手先にするにはもってこいだとは思うがな。
「なあ、騙されたと思って依頼してみなよ。大丈夫だって!依頼料なら僕から何とか言っとくからさー!いーこーうーよー!!」
こいつ...本当に僕より年上なのか?
いくら町の不届き者を捕まえているとはいえ、これでは不審がられてもしょうがないな。
「そいつの事務所はここから少し歩くんだ!案内するよ!」
まだ行くとは言っていないんだがな。
まあいいか。
有力な情報を持っているのだとすれば、買い取らせて頂こう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。