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第1話

偽りになった日常
 「よっ! こんな時間にここに居るなんて珍しいな!」

そう言って話しかけてくる彼は、落ち込んでいる私に気付いてるのか気付いてないのかペラペラと話しかけてくる

まぁ、いつも図書室の閉館時間まで居ても八時になる、なんて事はないからなぁ。

「ちょっとね、カイトは部活帰り?」

あぁ、なんて言いながら右脇に抱えてあったボロボロのサッカーボールを見せてくる。流石に使うことは無くなったみたいだけど、持ち歩かないと落ち着かないん、だったよね。

「そっか、時期部長さんも大変ね」

「案外、そうでも無いんだ。 って何だかんだあと少ししたら家じゃん」

確かに。 何だかんだ、話をしていたら、賑やかだった最寄り駅から閑静な住宅街になっている。

「なぁ、カリン。 一つ頼みがあるんだけどさ」

言いたい事は分かっている。

「あ」
「明日の課題を見せろ、でしょ?」

「な、なんでばれた!?」

なんでばれたも、何もね。

「そりゃ、人がご飯食べてる最中だろうがなんだろうが毎日家にピンポンしていれば分かるでしょう?」

「なるほど」

手をポンとさせて納得する、そんな幼馴染を横目で見て呆れつつ、少しだけ、少しだけ意地悪をしてみたくなった。

「だがしかし、私は学校に置いてきてしまったのである。 って事でたまには自分の力でやりなさいよね」

「なーんだ! カリンが忘れてるなら出さなくてもいいや」

ほんの二、三歩前を歩いてた彼が振り返り二カリと不意打ちで笑うものだからつい、頬に熱が集中してしまった。 まぁ、これだけ暗ければばれないでしょう。

「んっん、そんな事よりも急に止まらないでよね! 因みに私は課題をやってないとは言ってませんが?」

「なん……だと」

地面に膝をついて馬鹿な真似をするカイトの手を引っ張って立つことを促す。

「ちぇっ。 それじゃあ明日一緒に学校行こうぜ! そうすれば遅刻の心配も提出物の出し忘れの心配もなし! 一石三鳥だな」

「ったく。それを言うなら一石二鳥でしょ」

「まぁまぁ、気にするなって」

カイトは時折こうやって訳の分からない事を言って一人で満足をする。

「因みに、明日は六時出発だから覚えておきなさいよ」

いつもより三十分早めの時間を用意する。カイトが学校で課題を写す時間を含めたらちょうどいいだろう。

「早いなっ!? まぁそんな時間に一人で登校させるのもなんだし、俺、お前の為に早く起きるよ」

「あー! もう! ほらじゃあ早く家に帰った帰った」

何そんなに怒ってんだよって怒るに決まってるじゃん。 私がどれだけカイトの事を好きだったかも知らずに。

せっかく、最近諦めがつけそうだとすら思ったのに、こんなに話しちゃったら、だめだよ。

「まだ、傍にいたくなるじゃない」

「なんか言ったか?」

運がいいことに、たまたま通った車が言葉を遮ってくれる。

「ほら、あんたの家はこっちでしょ! 本当の本当にまたあしたね! 起きなくても起こしに行くから!」

そう言って早歩きに自身の家のドアを開ける。 まだ何か言ってるようだけど流石に時間も時間だし、強制終了って事でいいでしょう。

「ただいま」

隣の部屋の明るさとは非対称に真っ暗な、物音すらしない空間に向かってそう、声をかける。

――今日からは、日常であって日常でない何かの始まりだ、なんて言葉は胸にしまって置く事にした。