第18話

たばこ×⛄️💜
2,811
2020/06/05 18:00
ぼうっとし続けて1日が経った

いくら待ち続けても

この部屋の人数は増えることは無い


「もう7時か・・・」


はやく仕事に行かなくちゃ

あぁ、そうだ

この時計5分早いんだ

君が遅刻しないようにって早めたのにね

もう意味無いか

ふらっと立ち上がるとカーテンが揺れた

視線は窓の向こう側へ向く


辰哉『あなたは来ちゃダメ。肺に悪いから』


辰哉『あれ?まだたばこの匂いついてる?』


辰哉『あなた〜、これ臭くない?平気?』


思い出すのは君とたばこの匂い


『辰哉、ファンの子と私だったらどっちが好き?』


分かってた

こんなこと聞いちゃダメってことくらい

知ってた

アイドルと付き合うのがどういう事なのか

こうやって目を潤わせると

君は私をしっかり抱きしめて優しく背中を叩くだろう

それでそのまま寝ちゃうんだ

あなたは寝るとすぐ忘れるタイプだよねって

私より私を知ってる

私は君をどれくらい知ってる?

最近iQOSに変えてたっけ

私に銘柄はわからないけど

その前は緑色のケースのたばこ

あとは、アイドルで、私の彼氏で・・・

名前は深澤辰哉で、誕生日は5月5日

牡牛座、血液型はB型

モノマネが得意でよく笑わせてくれた

横顔が綺麗で

たばこを吸ってる時写真撮ったっけ

でも、こんなのネットにいくらでも書き込まれてる

私だけが知ってる辰哉は・・・?

もっとちゃんと彼と秘密の共有をすればよかった

今更こんなこと思って何になるんだろう

私はもう彼のものでもないんだから

ただのファンになってしまったんだから

仕事に行けずにまた床に座ると

コツンと小さな箱が手に当たった


「辰哉のたばこだ・・・。」


iQOSじゃない方

そういえばなくしたって言ってたっけ

ぼっとライターで火をつけてしまった

そのとたん。君の香りが部屋に拡がった

苦いキスの味も

香水とたばこの匂いが混ざったハグの香りも

ムキになってゲームする君の横顔も

全部もう過去のことなんだ

もう君に近づける気がしない

1口吸ったたばこも君みたいに上手にはけなくて

ゴホゴホとむせ返って涙がこぼれる

キスの味がする

これだけは

他のファンの人とは違うんだけど

でも、もっと知らないこと知っておけばよかった

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