第10話

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2019/12/05 12:19
2限目は屋上のベンチでサボった














もう、雨が降りそうな悲しい天気だった











紫耀から、


『もう帰ったの?』


とLINEの通知がピコンッと鳴ったけど、気付かないふりをして空を見上げる
















俺何やってるんやろ










てか紫耀、俺のこと大好きすぎやろ




















嫉妬、











俺はあの幼馴染とかいうやつに嫉妬してるんや








クソだせぇ、










ピロピロンと携帯の着信音が鳴る











誰やねん!もう!















廉「なんやって!もう!」










優太「何怒ってんだよ」

岸くんからだった。










廉「あ、紫耀じゃないん」










優太「紫耀?なんで?」











廉「いやさっきからLINEきてたから」










優太「いや、返事してやれよ」










廉「いや、岸くん何?」










優太「あー、廉にこの前貸した本あるじゃん」










廉「それがどうしたん?」








優太「あれさ、申し訳ないんだけど」






廉「ん?」









優太「貸出期限今日までなんだよね」











廉「おい、まじかよ〜」







優太「だから、代わりに返しといて?」








廉「ふざけんなまじ」







優太「まじさっせ」

















あの本どこやったっけ







ロッカーじゃん








ロッカーから図書室とか結構あるし

まじめんど
















高校と違って大学の図書室はやけにでかい

本を一つ返すだけだけど、

本の世界に入るとなぜか見入ってしまう















廉「うっわ埃だらけ」








奥の棚の方に行くと人影がない
なぜか落ち着いた














その時



フワっと香りがした

甘くて、ミルクティーみたいな優しい香り、











あぁ、思い出した


彼女の香りだ











そして棚の隙間に彼女の色素の薄い茶色の髪が見えた















「あっ」と声が出た












「あっ、勇太」







勇太「おまえこんなとこにいたの?」







「借りたい本があったの」









勇太「どれ?」









彼女の視界には俺じゃなくて








あいつがいたんだ









「あ、!あれ、上のやつ」











勇太「お願いされるまでとらねーよ?」









「国民的彼氏のけち!」










勇太「おまえの彼氏には一生なりたくない」










「もういい!自分で取る!」










段を使って彼女が取ろうとした時、段がぐらついた









「きゃっ」










「あぶない、」と俺が行こうとした時にはもう遅くて











勇太「バカ、あぶねーよ」










あいつに先を越されていた










「ありがとう、勇太」










あいつの前であんな顔をするんだ
俺の前では見せてくれなかったあんな顔を











勇太「これ?」









「そう!ありがとう!」












俺は気付かれないように、そっと図書室を出て行った









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