車の助手席に彼女を乗せて、雨の雫がフロントガラスに落ちていくのを見ながら俺は車を走らせた
沈黙が雨の音に変わってなぜか落ち着かない
車に2人きりで乗るのは初めてではないのに緊張してしまう。
彼女は今どんな顔をしているんだろう。
「あの、」と彼女が口を開いた
「ん?」
「永瀬くんってタバコ吸ってる?」
「あぁ、吸ってるけど、どしたん?」
「知ってるたばこの匂いだったからつい、」
「ごめん、臭ったよな、」
「違うの、落ち着くの、」と言った後
「たばこの匂いが落ち着くって変だよね、」っと彼女は、少し悲しそうに笑った
「俺も落ち着くねん」
「だから吸ってる」
「永瀬くんも変わってる人なんだね」
「そうかもしれん、」
雨音が煩くてまるで一緒に会話してるように鳴り響いていた
彼女の家の前で車を止めると
「ねぇ」と彼女が囁いた
「どしたん?」
「明日、お休み?」
「そうやけど、」
「だったら、」
彼女はちょいちょいと手招きした
俺は耳を傾ける
「今からドキドキすることしませんか?」
「そんなん反則やろ」
俺は保たない理性を制御しながら、止めた車をもう一度走らせた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。