9時45分頃、駅前に着いた。
さすがにまだいないだろうと思い駅のシンボル、噴水の前で
スマホをいじっていると
先輩からLINEが来てることに気づいた。
" 今日、俺誕生日なんだ。 "
" だから好きな子と過ごしたくて。 "
……やばいプレゼント用意してないどうしよう。
そんなことを思いながら先輩から来たそのメッセージを
見つめる。
そして、そのトーク画面に写真が送られてきた。
その写真は噴水の前でスマホを見つめる私の写真。
びっくりして周りをキョロキョロ見渡すと
その辺の人がザワザワと騒いでいるのが聞こえた。
先輩だ、
一般人とは思えないほどのスタイルと顔。
そして性格。
私めがけて先輩は歩いてくる。
『ごめん、待った?』
「いや、先輩私より先に来てましたよね?」
『うん。9時にはついてた。笑』
「本当ごめんなさい……」
『いいよ、俺が勝手にやってるだけだから。』
「お誕生日。おめでとうございます。」
『ふふっ、なんか照れるね。ありがと。』
「……ちょっと周りがザワついてますね。先輩カッコイイから。」
『…待って、もっかい言って。』
「ちょっと周りがザワついてますね。」
『そっちじゃない!!』
「先輩カッコイイから。」
『………やば…/////』
『あれ彼女かな…?』
『照れてる可愛い……』
『モデルさんとかなんかかな?』
『惚れた……』
『…あのっ!すいません!!お名前なんて言うんですか?!』
『あ…えっと……』
『写真撮ってください!!』
『私も!!』
『私も撮りたい!!』
そう至る所から次々と私も私もと
声がまう。
このままじゃヤバい、どうしよう。
「……すいませんっ!彼、私のなんで辞めていただけませんか?」
『…何誰。』
「だからっ……その……せんぱ…健人は私と今日出掛けるので
邪魔するの辞めてください…」
徐々に声がちっちゃくなってしまう自分が情けなくて
先輩を助けれない無力な自分にイラついて
俯いて泣きそうになってるとき
『ごめんね、今日久しぶりのデートなんだ。
また今度会えたら名前教えてあげるし写真も撮ろうね。』
そう先輩が言うとあちらこちらから黄色い歓声が
聞こえて耳が痛くなる。
私はこういう人混みが苦手でつい、先輩の手をとって
行き先も決まってないのに走り出していた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!