第8話

坂田優と月崎志麻
381
2020/08/07 23:34
坂田side
坂田 優
坂田 優
ん〜?
目が覚めてベットから起きると、まだ夜中。
横にはスウスウ寝息をたてる志麻くんがいた。
坂田 優
坂田 優
(受け入れてくれたんやから、可愛がらんとな。)
志麻くんの顔にかかる髪をそっと手でずらす。
長いまつ毛が小刻みに震え、大きな目から泪がこぼれた。
坂田 優
坂田 優
志…志麻くん?
月崎 志麻
月崎 志麻
…ンラ…センラ…
涙を拭おうとした俺の手がピタリと止まる。
坂田 優
坂田 優
(またセンラ。)
志麻くんは未だに「センラ」について教えてくれない。
でも、俺は知ってる。時々志麻くん、部屋で泣いてるもの。
それに、志麻くんがいっつもつけてるネックレスがあるんやけど、その中の写真見ながら泣いてるから、あの写真の男がセンラなんやと思う。
坂田 優
坂田 優
(なんでセンラなのさ。俺がいるじゃん。)
本当は志麻くん、俺を受け入れてないと思う。
俺との行為中、全然笑わんの。
話してる時も、微笑むって感じでニコッと笑ってはくれない。
志麻side
月崎 志麻
月崎 志麻
んっ…あ、坂田さん…。
もう朝ですか?
坂田 優
坂田 優
志麻くん…俺が聞くこと全てに、正直に答えて。
なんだなんだ。
なんか怖いな。
月崎 志麻
月崎 志麻
はい。
坂田 優
坂田 優
センラって、誰?
月崎 志麻
月崎 志麻
黙り込む俺。
そっと起き上がった俺は、俯いて黙っていた
月崎 志麻
月崎 志麻
言わなきゃ…ダメですか?
坂田 優
坂田 優
正直に答えてって言ったらはいって志麻くん言った。
仕方なく俺は語り出した。
月崎 志麻
月崎 志麻
…センラは、俺が昔付き合ってた人です。
当時彼は20歳、俺は15歳でした。
センラは学生の俺にも、とても優しくしてくれました。
でも早かったんです。体の関係を持つのは。
坂田 優
坂田 優
体の…関係…?
月崎 志麻
月崎 志麻
当時の俺はまだ、警戒心というものを持っていませんでした。
それに、性に対して興味を持ち始めていたから、センラに頼み込みました「抱いてみて」と。
坂田 優
坂田 優
志麻くん…
月崎 志麻
月崎 志麻
でもダメだった…!!!!
坂田 優
坂田 優
ダメ…だった?
俺は顔をおおって泣き出した。
月崎 志麻
月崎 志麻
ダメだった…軽すぎた…関係を持つというのはどういうことかわかってなかった…
坂田 優
坂田 優
志麻くん、落ち着いて。
月崎 志麻
月崎 志麻
俺のせいでセンラは死んだ。
坂田 優
坂田 優
死…んだ?
月崎 志麻
月崎 志麻
俺がセンラと関係を持てたのが嬉しくて、Twitterに投稿したんです。
「彼氏がかっこいい💜」とか「はじめての夜!!!!」とか、今思うと気持ち悪い投稿をしてたんです。

これが…ダメだった…!!!!
坂田 優
坂田 優
志麻くん…
月崎 志麻
月崎 志麻
この投稿を見てた人が、たまたまセンラと同じ大学の人だった。
そして投稿を見た翌日、センラと俺の関係を校内中に広めた。
白い目で見られ、大学に行けばいじめられる毎日。
彼はきっと泣いてたんです。辛かったんです。もう俺とはいたくなかったはずなんです。でも彼は俺の願いを聞いてくれた。
俺が「抱いて」といえば抱いてくれ、「お風呂入ろ」と言うと一緒に入ってくれた。
その時はいつも笑顔だった。
だから…気づけなかった…彼の苦しみ、彼の気持ちを…!!!!
俺が辛い時はすぐにわかってくれたのに!!!!
狂ったように喚き散らす俺を、坂田さんは優しく見ていてくれた。
月崎 志麻
月崎 志麻
それで、彼の家にいった時でした。
ピンポン押しても出なかったんです。
だから合鍵を使って入ったら…センラが死んでました。
坂田 優
坂田 優
…っ
月崎 志麻
月崎 志麻
最初は殺されたんだと思いました。
だって目の前にまるでさっきまで誰かがいたような濡れたコップが置いてあったから。

でも、自殺だった。遺書があったんです。

「辛い。苦しい。助けて。」
その3単語の後、しばらく間があいて最後の行に、
「志麻…」と書いてありました。
その瞬間、俺は自分自身を呪いました。
彼が命を絶ったのは、いじめのせいでも、他人の視線でもない。
他ならぬ、俺のせいだと。
坂田 優
坂田 優
志麻くん…そんなに責めないで…
月崎 志麻
月崎 志麻
俺が愛した人はみんな死んじゃう!!!!
両親も死んだ。友達も死んだ。センラも死んだ。
俺は誰も愛しちゃいけない!!!!
坂田 優
坂田 優
だから…主と召使の関係を使って俺を拒否してたの?
月崎 志麻
月崎 志麻
…坂田さんを死なせたくなかった。


坂田さんにはじめて抱かれたあの日から、俺は坂田さんをお慕いしています。
坂田 優
坂田 優
…志麻くん。
月崎 志麻
月崎 志麻
でもダメ。
坂田 優
坂田 優
いいよ。
月崎 志麻
月崎 志麻
…どうして?死んじゃうよ?ダメ。そんなの…
坂田 優
坂田 優
チュッ
俺の額に坂田さんの唇があたる。
月崎 志麻
月崎 志麻
ッッッ…
坂田 優
坂田 優
それでもいい。君と共にいたい。
坂田さんの大きな腕に俺の体が収納された。

暖かい。久しぶりだ。こんなに暖かいのは。センラ以来だ。
月崎 志麻
月崎 志麻
ありが…とう
彼の背中に手をまわして体を密着させた。

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