日が暮れて同窓会が終わると、みんなで二次会へ向かうことになった。
返事をしようとしたその時、校舎の窓に明かりがついているのが見えた。
もしかしたら……そう思った瞬間、体が勝手に動いていた。
軽く手を振って、駆け出す。
先生のことになると、心があの頃に戻ってしまう。
高校の時、先生を追いかけていた時とまるで変わらない。
でも、それだけじゃない。
――『お前がまだその気なら、相手にしてやる』
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ふっと小さく笑った先生が、肩をすくめて歩き出す。
そういえば、教員室と屋上だけじゃなくて、研究室にもよく押しかけてたっけ。
先生の後ろ姿を懐かしく思いながら、私もは後に続いた。
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数学課教員の研究室の中を見回していると、
先生がコーヒーを置いてくれた。
なんだか不思議だ。
私の中で市之瀬先生は今でも先生だけど、
先生にとって、私はもう生徒じゃないんだ。
何もかも、見透かしたような目。
先生はニヤリと唇の右端を上げた。
たまらず気持ちをぶつける。
ふいに市之瀬先生の眼差しが、すっと冷ややかになった。
先生が何を言ってるのか分からない。
そんなことは……、そう言いかけた唇を噛みしめる。
先生のことが大好きだった。
でも、卒業してからは?
先生が、窓から校庭を見下ろす。
視線を追うと、そこには桜の木があった。
そして、薄紅色の花の下には……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。