だけど当時は、あの笑顔にすら胸が甘くときめいてしまった。
突然の質問に、ドキっとした。
それはみんなも同じだったみたいで、
教室からいっせいに、質問する声が飛びかう。
みんなが詰め寄る。
先生は、あきらめた様にため息を漏らした。
ホッとした、そんな自分に戸惑った。
先生を好きだったのはずいぶん前で、ただの思い出になっているのに……。
先生の視線が、私の方へ向けられた……そんな気がした。
時間が、まるであの時に戻ってしまったみたいだ。
先生が私を見ていたのも、勘違いだったのかもしれない。
もし、そうなら自惚れもいいとこだ。
恥ずかしさに火照った頬に手をあてた、その時……
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!