第5話

お前がまだその気なら…
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2020/03/31 20:00
――7年前――
相楽大和
相楽大和
ずっと、お前が好きだった…!
相楽大和
相楽大和
卒業しても離れたくない。
彼女になって、これから先も俺のそばにいろ!
大和が私のことを想ってくれてるなんて、全然気づかなかった。
突然の告白はとても驚いたけれど、決して嫌だとは思わなかった。
でも……
西山結衣
西山結衣
……ごめん、大和
頭を下げると、一拍おいて大和がため息をもらした。
相楽大和
相楽大和
……そっか
  ・
  ・
  ・
あの時、いつも自信に満ちた大和の瞳は、わずかに揺れていた。
思い出すと、胸が痛くなる。
だけど、えりちーが帰り道で告白することを知っていた私は、

大和の気持ちを受けるわけにはいかなかった。
いたたまれずに俯いていると……、

見覚えのあるペンが床に転がっていた。
西山結衣
西山結衣
(これ…市之瀬先生が大切にしてるペンだ)
教室を見回しても、先生の姿はどこにもない。
菊池絵里
菊池絵里
結衣、どうしたの?
西山結衣
西山結衣
あ…ううん。
ちょっとお手洗い行ってくるね
冷やかされた居心地の悪さもあって、私は先生を捜すために教室を出た。
相楽大和
相楽大和
…………
  ・
  ・
  ・
西山結衣
西山結衣
(市之瀬先生が行きそうなところは…)
教員室に戻ったのかもしれないけど……、

でも、私の頭に浮かんだのは『あの場所』だった。
  ・
  ・
  ・
重い扉を開けて、外に出る。
ここは、市之瀬先生が煙草を吸う時に使っていた屋上。
先生のことが大好きで、

私は、よく数学の質問をしにここまで追いかけてきた。
奥へ行くと思った通り、煙草を手に市之瀬先生がフェンスにもたれていた。
西山結衣
西山結衣
先生!
市之瀬航太
市之瀬航太
……西山
先生のそばへ駆け寄り、ペンを渡す。
西山結衣
西山結衣
これ、教室に落ちてました
市之瀬航太
市之瀬航太
ああ、悪いな
西山結衣
西山結衣
先生がここだって、よく分かったでしょ?
得意げに言うと、先生が胸元にペンを入れながら薄笑みを浮かべる。
市之瀬航太
市之瀬航太
分かって当然だろ
西山結衣
西山結衣
え…?
意味が分からなくて、きょとんとしてしまう。
先生が一歩、距離を詰めた。
市之瀬航太
市之瀬航太
お前がまだその気なら、相手にしてやる
唇の右端を吊り上げたその笑顔に、鼓動が大きく跳ねる。
そのまま、先生は私の横を通り過ぎていった。
西山結衣
西山結衣
(「その気なら」って…?)
西山結衣
西山結衣
(私がまだ先生のことを好きなら…ってこと!?)
鼓動が速くなって、その場から動けない。
まだ煙草の香りが残る屋上でぼんやりしていると、足音が近づいてきた。
西山結衣
西山結衣
せんせ…
振り返るより先に、手首をつかまれる。
相楽大和
相楽大和
おい!
西山結衣
西山結衣
え…大和?

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