第28話

『 instinct 』J×💧 ②
343
2019/06/14 21:31
『君僕〜instinct〜』

*11*


私の説教を、口をとがらせて聞く彼は、子供の様だった。



裕「分かりました…頑張ります。。。」



拗ねてるし…

もう、なんなの?





〇「じゃあ、ひとつだけアドバイス。、、」







〇「女の人の名前を聞いたら、褒めること。、、あなたに足りないのは、そういう…ジェントルマンな大人の余裕。」






〇「名前を褒めてから、3秒間 微笑みかける。、、大抵の女子は、好印象を持つはずだから!」






裕「はぁ、、ぃ。、、、どうせ子供だよ…」




また、ぶつぶつと愚痴り出した。


ホント、お子ちゃまッ!!!






タクシーを降りて、立派な料亭の前でもう一度 念を押す。



〇「解ってる?、今日は仕事なんだからね?」

裕「…はぁぁ、」



軽くため息を吐かれたかと思ったら…



*12*


軽くため息を吐かれたかと思ったら…



裕「っ!分かりました!」



と、意を決した様に言う彼は、

「そのかわりぃ?」と可愛い上目遣いでカバンを抱え、ぴとっ!っと私にくっ付くと、



裕「ちゃんとやるんで、、、ご褒美くださいね?」



あぁ、、、無いシッポをブンブン振ってるのが分かる…

まぁ、この雰囲気なら、社長令嬢だって彼を嫌がらないはず!



〇「はいはい、ご褒美ね?考えときますw」



彼は「よっしゃ!やったぁ〜」と小さくガッツポーズをしながら進み、店の扉を開けると、

「どうぞ」と、まるでホテルマンの様な振る舞いで、私を先に中へ入れてくてた。





私達は、入った事もないほどの豪華な個室へと案内され、緊張が高まった。




裕「ここって…総理とかが利用する様なお店ですよね?」




誰も居ないのに、なぜか小声で言う彼。




*13*



〇「そういう、お里がバレる発言はしないこと!」

裕「まだ誰も居ないじゃん…」



ったく、、、

小声だったくせに…







その時、「こちらでございます」と案内され、社長令嬢が入ってきた。


彼女は「ありがとうございます」とお店の人へ一言言うと、こちらに目線を移した。




百「うわぁ〜っ! 本当に来てくださったんですね〜!」




一瞬で、パァ!と華やぐ笑顔になる彼女は…




可愛い…





裕「あ、、お招き ありがとうございます。中島裕翔と申します。」



彼は、スッと名刺を差し出した。



百「ごめんなさい、私、名刺を持ってなくて…、、あのっ//、、百合と申します……///」



名刺を受け取るだけの距離が、彼女には近かったのか、、

慌ててる様子も、照れて顔も真っ赤な様子も…






可愛い…




*14*



裕「いえ、大丈夫です。、、百合、さん…、キレイな お名前ですね?」



彼は、視線を合わせ微笑んだ。


見つめ合うその姿は、時が止まったかのようで…












胸が…





痛んだ。。。












その後は、和やかに進んだ。


彼が、終始 大人な対応をしていたからだ。


仕事が出来る男は、ハッキリ言って怖い。


裏の顔が必ずあるからだ。


まぁ、そんなところが、魅力的でもあるんだけど…


でも、彼の裏の顔が、甘えん坊のお子ちゃまだと知られたら、大変だな…






百「えっ?、おふたりは大学の同級生だったんですか?」

〇「そうなんです。仕事で再会した時は、ビックリしましたよ〜」

百「もしかしてぇ??」



百合さんはニヤりと怪しんでますの顔で、私と元彼を交互に見てきた。



*15*


元「いやぁ〜〜、、ま、まぁ、そんな時期もありましたよ〜、、若かったですからw」



は、はぁ??
ここで言うかぁ??


空気が読めず、あっさり認めた元彼。




百「っ!やっぱり!怪しいと思ってたんですよ〜!」



怪しい事なんてしてないのに…


今日、、、キスされたけど…




百「お仕事で再会なんて憧れるなぁ〜!、、おふたり今はお相手がいないみたいだし……ウフフ♡」



純粋女子か。



私には無いところが盛り沢山なお嬢様。



中島には、、、ピッタリかもな…





♪〜着信〜♪ 『経理』

っ!ヤバッ!!!け、経理からだッ!!!

滅多に掛かってこない部署からの電話。
トラブルが あったとしか、考えられなかった!

私は彼に耳打ちしてから、「すみません、電話に出てきますので失礼します」と、個室を出た。



*16*


幸い、トラブルと言うほどの事じゃなくて…


電話が終わり振り返ると、



〇「ぅわぁッ!、、もう、ビックリさせないでよ!」



元彼が居た。



〇「何してんの?」

元「若いもん同士にしてやるのは、歳上の役目だろ?」

〇「、、お見合いかよ…」

元「違うのか?」

〇「中島に選ぶ権利は無い。」

元「なにフテクサレてるんだよ?、、あの お嬢様ならイイんじゃないか?」

〇「そうね。可愛いからね。」

元「だから、何でお前がフテクサレてんだよぉ〜?」

〇「これが私のデフォルト!」




どうせ、可愛くなんてないわよ!

そんなの自分が一番 解ってるしッ!!!












裕「何でした?」



個室へ戻ると、経理からの電話を心配された。



〇「ぜ〜んぜん。大したことなかった。」

裕「それは、良かったですねw」



*17*



裕「それは、良かったですねw」



お酒で ちょっとだけ赤くなってる彼が、ニコッ!っとした。


ただそれだけだったのに…


完璧だ…



ビジュアル、、、最強…






百「中島さん、お酒 変えません?」







私が彼に、吸い込まれそうに見惚れているところへ、割って入ってきた。


明らかに割り込み狙ってきた、話題を変える言葉。


その素人っぷりが、男子の弱いところを突くんだろうな。










気に入ったんだ…





良かった…











______



百「では、本日は失礼 致します〜」



百合さんは、門限の時間ギリギリまで楽しんで、専用車で優雅に帰って行った。


車が見えなくなるまで お辞儀していた元彼。



元「まだ…21時半か。、、久々だから、もう一件どうだ?」



久々だからか…

って、下心は丸見えだ。




*18*



なのに…




〇「まぁ、、、イイけど…」




そんな返事をしてしまった。



こんな所でも、お里が垣間見られる。

門限付きのお嬢様と、深夜までフラつくアラサー御局。



そんな事なんてどうでも良くなって、もう何年も経つからさ、

女子力の高め方とか興味も無ければ、男も寄って来ない。



なんだか私の人生 全てが、どうでもいい。




〇「アンタは帰んなさい…はいコレ!、、タクってイイから。」




強引に万札を握らせ、元彼と消えようとした。




裕「ちょ、ちょっとチョットちょっとチョットっ、、、!」




背を向けた私の二の腕を掴んで、ずりずり引きずるように、元彼から少し遠ざかった。




裕「だ、ダメですっ!、、だって、、あ、明日!早いでしょっ?!!!」




何を慌ててるのか…

自分の置かれている立場も把握 出来てないくせに。



*19*


〇「まだ今は、アンタが指図できる立場じゃない。」

裕「指図じゃないですよ、、、俺はただ…もっと、自分を大切にして欲しいんです…」




酔った勢いで、私を抱いたくせに、よくもそんな事が言えたものだ。




〇「大丈夫、、、私にとって、あの夜ほど最低な事は無いから。」

裕「ッ!、最低って…」

〇「ふふっw ご褒美は明日ね!、、じゃぁね…」



私は元彼の場所まで駆け寄って振り返り、手をヒラヒラと振って…




笑顔を向け…




「サヨナラ…」と、呟いた。













私は最低だ。






だから…
早く上司離れしてくれればイイ…






そんな風に、、、彼への想いを、貫く事しかできない私なんて…











早く忘れちゃいなよ……?





*20*




元「俺らって、、どうして別れたんだっけ?」

〇「、、しらん…」

元「なんだよ 知らんって〜」

〇「知らないってこと。そのままの意味。」




庶民の味方、居酒屋チェーン店。

私と元彼は、並んでカウンターに座った。

大学の時はよく、こうして飲んでたな…






考えてみたら、、、何で別れたんだろう?










______




大学のゼミ。


〇「疲れたから…先帰るね?」

元「え〜!、俺ももう終わるから、待っててよ?」

〇「だから、疲れてるから…」

元「な・お・さ・ら!」



彼は近寄り、耳元で囁く…



元「俺んち 来いよ?、癒してやるからさ?」



そんな言葉、普通なら嬉しいはず。

なのに…私はウンザリしていた。



癒されるのは いつも、、、彼だけ。



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