『君僕〜instinct〜』
*11*
私の説教を、口をとがらせて聞く彼は、子供の様だった。
裕「分かりました…頑張ります。。。」
拗ねてるし…
もう、なんなの?
〇「じゃあ、ひとつだけアドバイス。、、」
〇「女の人の名前を聞いたら、褒めること。、、あなたに足りないのは、そういう…ジェントルマンな大人の余裕。」
〇「名前を褒めてから、3秒間 微笑みかける。、、大抵の女子は、好印象を持つはずだから!」
裕「はぁ、、ぃ。、、、どうせ子供だよ…」
また、ぶつぶつと愚痴り出した。
ホント、お子ちゃまッ!!!
タクシーを降りて、立派な料亭の前でもう一度 念を押す。
〇「解ってる?、今日は仕事なんだからね?」
裕「…はぁぁ、」
軽くため息を吐かれたかと思ったら…
*12*
軽くため息を吐かれたかと思ったら…
裕「っ!分かりました!」
と、意を決した様に言う彼は、
「そのかわりぃ?」と可愛い上目遣いでカバンを抱え、ぴとっ!っと私にくっ付くと、
裕「ちゃんとやるんで、、、ご褒美くださいね?」
あぁ、、、無いシッポをブンブン振ってるのが分かる…
まぁ、この雰囲気なら、社長令嬢だって彼を嫌がらないはず!
〇「はいはい、ご褒美ね?考えときますw」
彼は「よっしゃ!やったぁ〜」と小さくガッツポーズをしながら進み、店の扉を開けると、
「どうぞ」と、まるでホテルマンの様な振る舞いで、私を先に中へ入れてくてた。
私達は、入った事もないほどの豪華な個室へと案内され、緊張が高まった。
裕「ここって…総理とかが利用する様なお店ですよね?」
誰も居ないのに、なぜか小声で言う彼。
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〇「そういう、お里がバレる発言はしないこと!」
裕「まだ誰も居ないじゃん…」
ったく、、、
小声だったくせに…
その時、「こちらでございます」と案内され、社長令嬢が入ってきた。
彼女は「ありがとうございます」とお店の人へ一言言うと、こちらに目線を移した。
百「うわぁ〜っ! 本当に来てくださったんですね〜!」
一瞬で、パァ!と華やぐ笑顔になる彼女は…
可愛い…
裕「あ、、お招き ありがとうございます。中島裕翔と申します。」
彼は、スッと名刺を差し出した。
百「ごめんなさい、私、名刺を持ってなくて…、、あのっ//、、百合と申します……///」
名刺を受け取るだけの距離が、彼女には近かったのか、、
慌ててる様子も、照れて顔も真っ赤な様子も…
可愛い…
*14*
裕「いえ、大丈夫です。、、百合、さん…、キレイな お名前ですね?」
彼は、視線を合わせ微笑んだ。
見つめ合うその姿は、時が止まったかのようで…
胸が…
痛んだ。。。
その後は、和やかに進んだ。
彼が、終始 大人な対応をしていたからだ。
仕事が出来る男は、ハッキリ言って怖い。
裏の顔が必ずあるからだ。
まぁ、そんなところが、魅力的でもあるんだけど…
でも、彼の裏の顔が、甘えん坊のお子ちゃまだと知られたら、大変だな…
百「えっ?、おふたりは大学の同級生だったんですか?」
〇「そうなんです。仕事で再会した時は、ビックリしましたよ〜」
百「もしかしてぇ??」
百合さんはニヤりと怪しんでますの顔で、私と元彼を交互に見てきた。
*15*
元「いやぁ〜〜、、ま、まぁ、そんな時期もありましたよ〜、、若かったですからw」
は、はぁ??
ここで言うかぁ??
空気が読めず、あっさり認めた元彼。
百「っ!やっぱり!怪しいと思ってたんですよ〜!」
怪しい事なんてしてないのに…
今日、、、キスされたけど…
百「お仕事で再会なんて憧れるなぁ〜!、、おふたり今はお相手がいないみたいだし……ウフフ♡」
純粋女子か。
私には無いところが盛り沢山なお嬢様。
中島には、、、ピッタリかもな…
♪〜着信〜♪ 『経理』
っ!ヤバッ!!!け、経理からだッ!!!
滅多に掛かってこない部署からの電話。
トラブルが あったとしか、考えられなかった!
私は彼に耳打ちしてから、「すみません、電話に出てきますので失礼します」と、個室を出た。
*16*
幸い、トラブルと言うほどの事じゃなくて…
電話が終わり振り返ると、
〇「ぅわぁッ!、、もう、ビックリさせないでよ!」
元彼が居た。
〇「何してんの?」
元「若いもん同士にしてやるのは、歳上の役目だろ?」
〇「、、お見合いかよ…」
元「違うのか?」
〇「中島に選ぶ権利は無い。」
元「なにフテクサレてるんだよ?、、あの お嬢様ならイイんじゃないか?」
〇「そうね。可愛いからね。」
元「だから、何でお前がフテクサレてんだよぉ〜?」
〇「これが私のデフォルト!」
どうせ、可愛くなんてないわよ!
そんなの自分が一番 解ってるしッ!!!
裕「何でした?」
個室へ戻ると、経理からの電話を心配された。
〇「ぜ〜んぜん。大したことなかった。」
裕「それは、良かったですねw」
*17*
裕「それは、良かったですねw」
お酒で ちょっとだけ赤くなってる彼が、ニコッ!っとした。
ただそれだけだったのに…
完璧だ…
ビジュアル、、、最強…
百「中島さん、お酒 変えません?」
私が彼に、吸い込まれそうに見惚れているところへ、割って入ってきた。
明らかに割り込み狙ってきた、話題を変える言葉。
その素人っぷりが、男子の弱いところを突くんだろうな。
気に入ったんだ…
良かった…
______
百「では、本日は失礼 致します〜」
百合さんは、門限の時間ギリギリまで楽しんで、専用車で優雅に帰って行った。
車が見えなくなるまで お辞儀していた元彼。
元「まだ…21時半か。、、久々だから、もう一件どうだ?」
久々だからか…
って、下心は丸見えだ。
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なのに…
〇「まぁ、、、イイけど…」
そんな返事をしてしまった。
こんな所でも、お里が垣間見られる。
門限付きのお嬢様と、深夜までフラつくアラサー御局。
そんな事なんてどうでも良くなって、もう何年も経つからさ、
女子力の高め方とか興味も無ければ、男も寄って来ない。
なんだか私の人生 全てが、どうでもいい。
〇「アンタは帰んなさい…はいコレ!、、タクってイイから。」
強引に万札を握らせ、元彼と消えようとした。
裕「ちょ、ちょっとチョットちょっとチョットっ、、、!」
背を向けた私の二の腕を掴んで、ずりずり引きずるように、元彼から少し遠ざかった。
裕「だ、ダメですっ!、、だって、、あ、明日!早いでしょっ?!!!」
何を慌ててるのか…
自分の置かれている立場も把握 出来てないくせに。
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〇「まだ今は、アンタが指図できる立場じゃない。」
裕「指図じゃないですよ、、、俺はただ…もっと、自分を大切にして欲しいんです…」
酔った勢いで、私を抱いたくせに、よくもそんな事が言えたものだ。
〇「大丈夫、、、私にとって、あの夜ほど最低な事は無いから。」
裕「ッ!、最低って…」
〇「ふふっw ご褒美は明日ね!、、じゃぁね…」
私は元彼の場所まで駆け寄って振り返り、手をヒラヒラと振って…
笑顔を向け…
「サヨナラ…」と、呟いた。
私は最低だ。
だから…
早く上司離れしてくれればイイ…
そんな風に、、、彼への想いを、貫く事しかできない私なんて…
早く忘れちゃいなよ……?
*20*
元「俺らって、、どうして別れたんだっけ?」
〇「、、しらん…」
元「なんだよ 知らんって〜」
〇「知らないってこと。そのままの意味。」
庶民の味方、居酒屋チェーン店。
私と元彼は、並んでカウンターに座った。
大学の時はよく、こうして飲んでたな…
考えてみたら、、、何で別れたんだろう?
______
大学のゼミ。
〇「疲れたから…先帰るね?」
元「え〜!、俺ももう終わるから、待っててよ?」
〇「だから、疲れてるから…」
元「な・お・さ・ら!」
彼は近寄り、耳元で囁く…
元「俺んち 来いよ?、癒してやるからさ?」
そんな言葉、普通なら嬉しいはず。
なのに…私はウンザリしていた。
癒されるのは いつも、、、彼だけ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。