第27話

『 instinct 』J×💧①
563
2019/06/13 20:19
『君僕〜instinct〜』

*1*





「えっ?、ウチの中島、、、ですか?」






アポ無しでやってきた、取引先の方。

急に来たくせに内緒の話しだって言うから、音漏れなしの会議室に通した。





てっきり、トチ狂って私に告白でもしに来たのかと思ったんだけど…





違ったか。






〇「で?、なによ?」






取引先の方と言っても、、、

この人は、大学時代の元彼。







「こないだの、国際フォーラムでの展示会の時にさぁ…」






〇「あ〜、ウチの中島にマネキンさせた、あのイベント、、か…」







*2*





あの日。
大盛況となった私達のブースは、整理券さえも完売してしまうほど。

大きな手応えを残して終わった展示会で…




終わった後のビールが、最高だった!












______



……ん??…だれ??



カーテンの隙間からの朝日が眩しくて、目を細め手をかざした。



隣で、寝息を立てて眠る男の顔を、寝ぼけ眼で確認した。



腕枕の至近距離だったせいか、
頭はまだ起きていなかったのか、

はたまた、、、二日酔いなのか…



ゆっくりと意識が確立していくと、
だんだん…霞んだ視界がハッキリしていき…





私は息を呑んだ!





〇「エッ///、、どうしてっ!」





慌てて声にしてしまい、彼を起こしてしまった。




裕「……ん、、あぁ、、おはようござい…ます…」




そう呟きながら、
目をこすり、ふぁ〜〜っと あくびをする彼。



*3*



っ///!!!
やだっ!自分を隠したい!!!




シーツを握りしめ起き上がると、彼も起き上がった。




肌に触れる彼の温度。



こういうの、久々すぎて、、、
私、バレそう…





彼の綺麗な指先が、私のアゴを撫でると、





裕「、、おはようのキス…しません?」





あぁ、、、もう無理ッ///!!!





ボムっっっ!!!





私は、側にあったフワッフワの枕を彼の顔に押し当てた!





〇「一回 ヤったくらいで、チョーシにの・ん・な!」




私はベッドから飛び出た!



どんだけ酔ってたのか、どんな脱がされ方をしたのか…

散々に脱ぎ散らかされた服を、あちこちと探しながら集める。




裕「記憶ないんですか?、、1回や2回じゃないですよ??」

〇「ッ///、、うっさい!!!」




着替えを抱え、バタンッ!と洗面所の扉を閉めた。





*4*



鏡に映る、自分の姿…

情けなかった。





扉の向こうから「〇〇さん?」と呼びかける声がセツナくて…

やるせない想いが、胸を刺した。




裕「ダメですか?、俺じゃぁ?」



良いとか悪い、、それ以前の問題だ。



〇「ダメ。」



着替えながら、答えた。



裕「どうしてですかぁ!?、、カラダの相性は、めっちゃんこ良かったですよ?」

〇「そ、それはっ//」




確かに良かったのだろう。

じゃなきゃ、二日目まで残るほど酔っていたのに、何度もなんて…





イヤイヤイヤイヤッ!
なに考えちゃってるの、私??

あり得ないから!!!




ガチャッ!!!




勢いよく扉を開けると、まだ何も着ていない彼。




〇「、//、、良かったかどうかは、男が決める事じゃないっ!!!」






私は荷物を持ち、ホテルを出た。





______



*5*





あの日の事は、無かった様に過ごしていた。




突然の取引先からの提案に、
やっぱりこれが正解だったんだと、安堵した。








「お嬢様は、今夜にでもお会いしたいと…」


〇「そう。分かった。」


「〇〇さぁ??、、男できた?」


〇「はぁ?ケンカ売ってるの?」


「や、キレイになったなと思ってな//」


〇「奥さんと別れて、人肌恋しいせいでしょ?、、元カノに揺れてるようじゃぁ、成長してない証拠ww」


「お前、変わんねぇなぁ?」


〇「どっちよ?キレイになったって、ウソなの?w」


「〇〇の、そういうとこ、、、好きだったな…」


〇「やめてよ〜昔話ししに来たんじゃないでしょ〜?w」


「そうだな……今でも好きだからな…」


〇「、、えっ…」



*6*


「そうだな……今でも好きだからな…」


〇「、、えっ…」




彼は、、、肩を抱き寄せ…





キスをした。





彼のキス、、、





好きだったな…






思い出していた。
あの頃を…







ガチャッ!!!


裕「失礼しますっ!」







はっ//!!!







私達は、咄嗟に離れたけど…







恐らく、、、見られていただろう。






お互いの引きつった顔が、それを語っていた。








______





〇「では今夜、、18時に。」




取引先の人、つまり元彼をエレベーターホールまでお見送りした。

エレベーターが閉まり、元彼が居なくなると、一気に問い詰められた。




裕「なんなんですか?さっきの?」

〇「中島には関係ない。」

裕「…関係、ない……?」




*7*



裕「そ、それにっ、どうして俺が接待??、、社長令嬢だかなんだか知らないけど、俺そーゆーの、興味ないですからっ!」

〇「何が不満なのよ?!、、社長令嬢?最高じゃないの〜、、綺麗な人らしいわよ〜」




そう、小馬鹿にした様に言い残し、部署へ戻ろうとすると、




ドンッッッ!!!



二の腕を掴まれ、壁に追いやられた!



ッ///!!!
か、壁ドンってやつだ…//




裕「俺の気持ち知ってて、どうして…」




壁にヤツ当たった勢いなんて、一瞬で抜けたように話す。


そうやって、弱さを見せれば、私の気持ちが揺れるとでも思ったの?




〇「バカなの?、、ゴージャスな未来が待ってるのよ?逆玉よ?、、、掴まないなんて、バカ以下だわ!」





*8*




ずっと思ってた。


この若者の、輝かしい未来を、私なんかが摘み取ってしまってはイケない



ビジュアルだけでも素敵なのに、仕事も出来て…


こんな優しくて、
こんな お茶目で、
こんな大らかで、
こんな甘えんぼうで…



人懐っこくて、
幼い頃 飼っていた、ラブラドールみたい。




こんなにも可愛くてしょうがない後輩くんを…




どうにかして、ワンランク上の人間にしてあげたいんだ。





〇「今後、私の事を考えるのは辞めなさい、!、、、あなたは、、そんな人間じゃないの。」





勝ち組っていうやつよね。



私には、なれない。



だからこそ…








______



*9*


〇「中島?時間だから、それ終わらせて!」

裕「嫌です。」

〇「却下。行くわよ!」





私が歩き出すと「あぁ もぉッ!!!」とキレながらも、足元のカバンと上着を持って、軽快な小走りで追いついてきた。





私は意地悪だ。

絶対 来ると分かっていて、ワザと冷たくする。



歩いている後ろから、ぶつぶつ愚痴ってるのが聞こえる。

けど、それも全部却下。



私は、使命を持って、今夜の接待に挑むんだ。


今は嫌でも、後になって分かるはずだから。









指定場所までのタクシーの中。

彼の小言が続く。

全部 聞いてるけど、全部受け流してる私。




*10*



裕「何で、時間無かったのに化粧直し してきたんすか?」

〇「相手に失礼の無いように、身だしなみ。」

裕「どうせ、あの人に会えるからでしょうけど、、」




被害妄想が過ぎる…

こういう所が、お子ちゃまで困るんだよね…




〇「元彼。あの人、奥さんと別れたばかりで、気が動転してるの。、、今日のは事故よ、事故。」

裕「元彼…って、、、そういのがイチバン怖いんだよな……あっさり元サヤに戻ったりすんだよ…」





フテクサレがひどい。


私は今夜の接待の場が不安になってきた。





〇「いい??、今夜は会社と会社の接待なんだからね?、アンタの態度で、今後の売り上げが変わってくる。」





〇「私は、アンタを見越して連れてきたの。やる気 無いなら、私に辞表出して?!、、出さないなら、いつまでも愚痴って無いで、大人になりなさい!」


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