『君僕〜shackles〜』
*1*
伊:それ、かなりの束縛じゃな〜い?
酒も入って、、、
よく言えば『いつもよりも大らか』になった、猫型友達の伊野ちゃんに、ニヤつかれながら言われ…
俺は初めて気付いた。
伊:俺だったら、そんな彼氏、窮屈でイヤだなぁ〜
八:お前みたいな、無干渉なネコみたいなヤツの彼氏になんて、ぜってぇーなりたくないわ〜〜w
なんて、冗談まじりで返してるけど…
内心は…
〇〇も…
俺の彼氏なんてイヤなのかなぁ……
不安が台風並みに強い勢力で渦巻いて、、、
俺の中身を掻き乱していた。
*2*
八:あ〜…あのさ?
〇:…??……どした?
モジモジしちゃって、言い出せないなぁ…
〇:あ〜分かった!、クリスマスプレゼントが決まらないんでしょぉ?ww
そんなもの…
もう二ヶ月も前から予約してる。
はぁぁぁ〜〜っ…
こんな事も言い出せないなんて……俺って、度胸ないな…
〇:…違うの?……じゃぁ…何??
言葉に出来ないせいで、自分への苛立ちが募る。
八:まぁ、いいや……何でもない…
〇:えぇ〜、なぁによぉ〜?、きぃ〜にぃ〜なぁ〜るぅ〜〜ww
おチャラけた言い方。
まるで、不安を覆い隠すかのようだった。
八:ホント、何でもないよ。
いつもなら…
〇〇を安心させようと、体が勝手に笑顔を作るのに…
できない。
*3*
〇:…何かあったんでしょ?、、話してよ?
本気で心配してくれる〇〇。
こんな彼女が、俺を窮屈がってるハズがない!!!
八:ごめん…ホント…何でもないんだ。
俺は、〇〇を抱きしめた。
心から、ホッと声が漏れたのが分かった。
彼女の香り…
柔らかな髪…
触れ合う頬の感触…
脇に回る彼女の手も全て、俺には癒ししかなかった。
*4*
〇:今夜、忘年会だから…遅くなる…
いつもなら、ヤキモチを前面に出して、
「えーーーッ!ヤダっ!」なんて、ワザと〇〇に抱きつくんだけど…
だって そう言うと、照れて可愛い〇〇になるから!
でも…
昨日、〇〇を抱きしめて、安心して、、、
俺たちは、上手くいってる。
そんな確信が芽生えたから…
八:うん分かった!、、じゃあ〜俺も、晩飯外で済ませるよ!
あっさり受け入れ、素直に笑顔を見せた。
仕事終わりに、
今日、達成したノルマのお祝いも兼ねて、同じ部署の仲間と居酒屋。
課長:今夜は俺の奢りだからな!遠慮なんかして呑まない奴は、、、クビだぁ!!!
気を良くした課長からのブラックジョークもあり、いつもよりジャンジャン呑んだのは、言うまでもないww
☆5☆
後輩:あのっ//、、先輩!、、、悩み事があって…相談があるんですけど、この後 空いてますか?
3年後輩の女の子。
真面目で頑張り屋で、、、
社内でも評判がいい子だから、狙ってるヤカラも数多いんだけど…
それ系の話しは、聞いたことがない。
八:おん!空いてるよ!
俺は、気前よく答えた。
相談の内容は…
告白を断ったのに、しつこくしてくる同僚に困ってると言う話しだった。
八:彼氏とか居たら、諦め付くんだろうけどな?
後輩:…か、彼氏//、、ですか…?
八:居ないの?誰か、好きな人?
後輩:えっ//、、、います…よ//
八:じゃぁ、もう告っちゃえば?…まぁ、告白なんて、軽くないかもだけど。
恋して照れてる後輩を、俺は微笑ましく感じていた。
八:頑張れよ!
と、エールを送り、背中を押した。
☆6☆
家に着くと、〇〇の方が先に帰っているらしくて、外から部屋の灯りが見えた。
なんだか、それが嬉しくて…
ガチャッ!!!
勢いよく玄関を開け「たっだいまぁ〜っ!」と〇〇が居るであろうリビングへ向かった。
が、、、アレ??
隣の寝室を見ると…
帰ってきた服のまま、ベッドに伏せて、眠っている〇〇が居た。
〇〇を見つけた俺は、自分の居場所を見つけたようで、また安心した。
八:こんなところで、風邪ひくよ?
っ!!!、、えっ…泣いてる……の??
〇〇の頬には、涙のすじが残っていて、伏せていたシーツは濡れていた。
どうしたんだろう??
〇:…ん……光くん…?、、おかえりなさい。
八:う、うん…た、ただいま。…こんなところで…か、風邪ひくよ?!
〇:…うん…酔ってたから……私、シャワー浴びてくるね…
俺は「うん」と返事をしただけだった。
☆7☆
聞けなかったんだ…
どうして、泣いていたのか…
酔うと必ず、俺に絡んでくるのに…
首に腕を回して、潤んだ上目遣いで、、、
「ねぇ…キスしていい?」な〜んて可愛く///
今のは、それどころか、、、
俺と、目も合わせてくれずに…
まるで…この場から、逃げるように…
どうしてなんだよ……?
心はもう、不安の台風に掻き乱されていた!
態度が変わった彼女。
真っ先に思い出したのは、、、
「俺だったら、そんな彼氏、窮屈でイヤだなぁ〜」
そんな事……あるはず…………
その日から…
〇〇が遠い存在だと感じる様になった。
☆8☆
後輩:先輩?…今夜の忘年会は参加ですよね?
あ、そっか。
ウチの忘年会、今日だったか。
〇〇に言ってないな。
まぁでも…大丈夫だろう。
一応、メールしとけば。
最近の〇〇の様子から、俺は そう思った。
八:あ〜うん!参加で!…幹事頑張って!
後輩:は、はい//!!!
以前なら、こんな事は思わなかった。
ひとり淋しく待たせるなんて、
俺の方がどうにかなりそうだったし!
事前に知らせておいて、淋しくならない様に友達と一緒に過ごしてもらったりしてたのに…
どこで誰と、何をしているのか。
いつも教え合っていた。
これが束縛だったのか?
だとしても…
お互いの居場所を把握しておきたかったんだ。
大切だから。
なのに…
何がいけなかったんだろう……?
ふたりの歯車が噛み合わなくなってしまったんだ。
〇〇は今…どこで何をしているんだろう?
☆9☆
後輩:あの〜〜??、、、先輩??
八:…えっ?……何??
後輩:サラダ取り分けますから、先輩のお皿ください、、って言ったんですけど…
八:えっ!あ!ごめん!…ありがとう。
後輩:・・・・・
〇〇の事ばかり考えてしまう。
あぁぁぁ、、、
早く帰って〇〇に会いたい。
〇〇は、俺に会いたいなんて、、、
思ってないかも知れないけど。。。
〇〇の変化を思い返しては、ため息をついていた。
噛み合わなくなった歯車。。。
もう、、、
戻らないかも知れない…
気づけばまた、、、
そんな事ばかり考えていた…
*10*
後輩「_____んぱいっ!……もぉ!先輩ってばっ!!!」
八「ッ//!!!、、ぅへぇッッッ?!!」
店を出てもボーっとしていたらしい。
酔っ払った後輩に腕を激しく揺さぶられ、ビクンッ!とした。
後輩「次、カラオケ!、モチロン行きますよねっ?!!!」
両手で俺の腕に捕まって、顔を覗き込む…
お酒でピンクに染まる頬と、トロけたような目…
「平成最後ですよ〜」と、行かなきゃ損だとでも言っているのか…
〜♪ピロンッ♪〜
{〇:光くん遅くなるなら、友達のところに泊まろうかなぁ〜}
ナイスなタイミングで来たメール。
八「……それも そうだな!ww」
明るく返事をする俺は…
〇〇に会いたくて「帰りたい」と思っていたのが嘘のようだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。