『君僕〜dragonfly〜』
*1*
ふと立ち止まり…何かを見つめてる君。
その淋しげな表情を見ているだけで…
胸が熱くなるんだ。
______
お喋りな僕が話し掛けてるのに、気付くと隣には居なくて…
はっ!っと振り返ると…
10mくらい後ろに、君は立っていた。
*2*
彼女は不思議な子だ。
今に始まった事じゃない。
ずっとだ。
こ〜んな幼い頃から…ずっと変わらない。
だから、僕は気にならない。
けど…
周りのヤツらは影で「不思議ちゃん」なんて呼んでは、彼女を避けている。
不思議な子。
それだけでオモロイのにな。
僕は…
ヤツらの事が理解できなかった。
重:何見とるん?
僕は少し戻って、彼女に話し掛けた。
建っていたビルが取り壊され、全てが無くなり、
まだ整備されてない、ゴツゴツの石混じりの土。
立ち入り禁止の黄色いロープの向こう…
昨夜の土砂降りで出来た、大きな水溜りが、
蒸し暑い10月の太陽に、無残に さらされていた。
*3*
彼女が指差した先には、無数のトンボ。
ツガイになり飛び…
その大きな水溜りに、チョン!と触れては、水面に輪を作る。
何羽も…
何度も…
その行為は繰り返されている。
〇:…世界があるんだね……あそこにも…
淋しげに…
今にも泣き出しそうに言う。
そんな僕らの隣を「午後も頑張るかぁ!」などと言いながら、
数人の大人が通り過ぎ、ロープの内側へと踏み込んだ。
ガクンッ!ガガガーーーッ!!!
片隅に置かれていた重機は大きな音を立て…
我が物顔で動き出した。
はっ!!!
僕が気付いた時には、もう遅かった。
彼女を見ると…
頬を伝う涙が…
美しかった。
*4*
純粋な〇〇には、見せたくなかった。
なのに僕は…
重:ウチ来いよ。
押さえられない衝動に駆られた。
〇:ふふっw 行くわけないじゃんw
涙 流しながら、笑うなよ…
〇:今まで誘われて行ったこと……ないでしょ?w
そう言われ、跳ね返された衝動は…
重:うっさい。
君の気持ちなんて聞いてないんだ。
重:俺らにも、世界があんだよ…
俺の衝動が、止まらないだけだ。
めちゃくちゃに……したい…
🐛fin.🐛
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。