『君僕〜commonplace〜』
*1*
「時間、ないけど…」と、呼び出された。
会うのは照れ臭い。
昨日の今日だから、、、かな…?
アイドルの彼と、プライベートの彼。
どっちも好きだから。。。
*2*
昨日。
私は、彼氏ができて初めて、JUMPのライブに参戦した。
地元での開催に、、、
チケットが取れた時には、心がはち切れそうなくらい嬉しかった!
______
待ち合わせ場所には、帽子にメガネで変装した彼。
遠目で見たら…
背が高くてスタイルも良い…モデルさんみたい。
モデルさんが、身分を隠してる感じで…逆に変装が目立ってるww
〇「お待たせ。」
薮「お!…待ってないよw」
いつも通りに ニコッ!としてくれる彼は、舞台上のアイドルスマイルでは無くて…
どこか抜けている雰囲気を かもし出していて…
合コンでも売れ残りそうな…イイ人止まりのお兄さん的なww
薮「1時間くらいしかないから…カフェでも行こうか?」
〇「うん。いいよ!」
*3*
「こっちかなぁ〜」なんて言いながら、一歩 踏み出そうとする彼の、行く方向へ着いて行こうとすると、、、
私の冷たい左手は、ふわっ…と暖かい右手に包まれた。
薮「いっつも冷たい。」
まるで…
“ これだから〇〇は放って置けないんだよ”
“俺が暖めてあげないとダメなんだから!” なんて言わんばかりの一言だ。
〇「ふふっw 宏太くんが居ると暖かい!」
なんて、持ち上げてみたww
薮「だろぉ?//」
〇「っ!///」
乗せられて照れた彼の、赤くなった顔を見たら…
私まで、照れちゃった//
〇「……う、うん…ありが…と//」
こうして会うのも久しぶりで…
本当に久しぶりに手を繋いだせいか、、、
そんな新鮮さが、ふたりを盛り上げた。
いつまでも…
こんな ふたりで、いられないかなぁ。。。
*4*
海辺が見渡せる窓際の席。
ゆったりと、時間が流れる感覚で、並んで座った。
彼の手が離れ、また冷たくなった指先を、カップで温める。
ふぅ〜、ふぅ〜、、、
まだ熱いカフェオレを冷ましながら…
猫舌を覚悟して、
そぉ〜〜っと、、、ひとくち、
〇「っ、アチ!!!」
やっぱりかぁ、、、
なんて、ヒリヒリしてる舌に後悔してる私に…
薮「ふふっw いっつもそうww」
あ、、、また言われた、、、
会話もなく、、、
ただ…冬の太陽が優しく届く水面を、見ているだけ。。。
心地いい沈黙だった…
*5*
薮「クリスマスは?」
彼の言葉は…
流れる時を止めるかの様だった。
〇「…だって……ライブでしょ?」
仕事の邪魔はしたくない。
彼女だということだけでも…ファンの子たちには後ろめたい気持ちで、いっぱいなのに…
ひとりのクリスマスなんて、、、当たり前。
薮「招待するって言ったら……来てくれる……?」
〇「えっ…」
アイドルとの恋は…
たったの 一歩だけ、、、
それだけ進むのでさえ、難しい。
彼の表情は…どことなく不安そうだった。
〇「…それって、、、」
薮「マネージャーに言ったんだ。」
薮「……まぁ、やっと、って感じで…ゴメンな?」
いつもこうやって…
すまなそうに、自信なさそうに言う彼が、、、
私には宝物の様に思える。
*6*
この2年間。
私達は、出来るだけ ひっそりとしていて、
彼の家にも私の実家にも、来たことはない。
できるだけ、ひと気のない場所で、
ドライブとか…
誰とも会わない、離れの宿とか…
少しの時間とは言え、待ち合わせてカフェなんて…2回目くらいだし。
薮「俺…最年長だからさ…」
彼がポケットから出したもの…
一瞬、何が起こったのか、分からなかった!
薮「メンバーに、紹介したいんだ。…俺の奥さんって……//」
照れながらそう言うと…
パカッと小箱を開き私に向け、、、
冷えた、私の左手を、そっと握った。
薮「この冷えた手を…ずっと暖めていきたいんだ……」
薮「俺だけの…お嫁さんになってください。」
すぅッ!っと少しだけ息をのむと…
時が、、、止まった、、、
*7*
こんな時に彼が見せる、笑顔は…
アイドルとはまた、別で…
私にだけ。
そう思ったら…泣いちゃって、、、
薮「……やだった…かな…??」
その問いに、頭をブンブンッ!横に振った!!!
〇「…ッ……は、、、ぁい。…ッ……」
鼻をすすりながらの私の返事は…
決して美しいものではなかった、、、
けど…
薮「ふふっw そうなると思ったw」
と、私の頭を、、、
しばらくポンポンとしていてくれた。
そんな彼の行動に、、、
私の胸は、、、ときめいた♡
こんな…ありふれた、、、
ありのままのふたりで、、、
ずっと、、、
いられますように…♡
💍 fin. 💍
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。