第22話

第一章、完結
153
2020/03/19 03:15
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
あら、どうしたの?響。こんな夜更けに珍しい…って、えぇぇ!?どうして泣いてるの!?何があったの?!
長門響
長門響
ふえぇぇ、音夢姉さん~
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
ほ、ほら、中に入って?何があったか言ってごらん。



次の日
長門暁
長門暁
っ紅丸君!
新門紅丸
新門紅丸
…何しに来た
長門暁
長門暁
響がどっか行ったの!どこか知らない?
新門紅丸
新門紅丸
…知るか、あんな奴…
長門暁
長門暁
…え?
新門紅丸
新門紅丸
知らねぇっつってんだ、帰りやがれ
長門暁
長門暁
ちょ、ちょっと待って!?なんで、そんな事…。
新門紅丸
新門紅丸
お前には関係ねぇ、とっとと帰れ
長門暁
長門暁
…変わりないのね、そのところ
長門暁
長門暁
響、貴方の事好きなのよ?
新門紅丸
新門紅丸
変な嘘つくんじゃねぇよ
長門暁
長門暁
誰よりも好きだったのに…どうしてまたこうなってしまうの…。
そう言って、暁は外へ向かって走っていってしまった
紅丸は何故自分がこんなに苛ついているのかも、響に対してこんな酷く当たっているのも。
新門紅丸
新門紅丸
ックソッ、なんなんだよ…。
その頃響
長門響
長門響
嫌よ、もう、もう紅くんに近づけない…そんなのいや、嫌なのに…。
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
そっかそっか、その男の子の名前、なんて言うの?
長門響
長門響
雅潤
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
…今、なん、て…?
長門響
長門響
雅、潤…だけど?
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
…お姉さんに電話するね、居場所が分かっちゃうけど、絶対に会わせないようにするから
長門響
長門響
う、うん…?
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
長門暁
長門暁
は!?あの男の子が!?
珍しく大きな声を出した。
当然だ、なんせ『あの男』が犯人なのだから。
昔、響に異常に執着していた男の子がいた。
自分のものにしたがり、迷惑ばかりかけられた為距離を置いていたし、なんせ響の兄が毎度カバーをしてくれていたのだ。
長門暁
長門暁
そんな…
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
響に会わせる事は出来ないけど、来る?
長門暁
長門暁
えぇ、今すぐ行くわ
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
あの二人も連れてきてね
長門暁
長門暁
分かった。
長門暁
長門暁
さっき、あんなこと言ってから会うの苦しいわ…。










小薔薇川宅
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
集まった、ね…。
新門紅丸
新門紅丸
なんの用だ、さっさと済ませろ
陸奥吹雪
陸奥吹雪
ちょっ、そんな言い方ないだろ!
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
ほんと君は相変わらずだねぇ
新門紅丸
新門紅丸
あ?どういう意味だ
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
まんまの意味だよ、短気で、すぐ手が出そうになる。情報通の私を舐めて貰っては困るからね。
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
その様子じゃあ本当に響の言ってる事が当たってるのか…、これは早く対策が必要だな
パリンッ、奥で音がする。
何かが割れた音、というより、割った音だった
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
…まさか!
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
響!
長門響
長門響
…割れた
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
いや割ったんでしょうが
長門響
長門響
また、割れた…。
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
トラウマ思い出さなくていいから…。
長門響
長門響
…。
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
はぁ、ほら、部屋行っときな
長門響
長門響
分かった…。
長門暁
長門暁
…昔、みたい
長門暁
長門暁
あの子とっても弱虫なのよ、まるで昔に戻ったみたいな言動…。
新門紅丸
新門紅丸
…早く言え、俺らに一体なんの用があるってンだ
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
君らにちょっとお話があってね、端的には説明できないんだ。どうぞ中へ。


















好きだった

嫌われたくない

叶うなら

手を繋いで欲しい

抱き締めて欲しい

キスもして欲しい

だけどもう叶わない

突き放された

彼奴の性で

これ以上する事が見つからない

愛されたかった

側に、いて欲しかった

もう少しだけでいいから

また、私と一緒に話して欲しかった
長門響
長門響
…彼奴の、性で
下で話し声がする。
長門響
長門響
(紅くん、来てるんだ)
長門響
長門響
(会いたい) 
長門響
長門響
(…会っちゃ、だめだ) 
声に耳を傾ける事しか出来ない。
寂しく毛布に体を巻きながら、涙を流す事しかできない。
そんな自分が惨めで、仕方なかった。
このまま、会えないままなのだろうか
そんなのは嫌だ
心底そう思った。
ドアノブはすぐそこにあるというのに
触れることが出来なかった
ガチャリという音で、また分かりあえるかも知れないのに
彼には届かないだろうこの思い、伝えきれていない思いを火に変えて、燃やし尽くせたらどれだけ楽だろう
どうにも止められない涙が
彼女の目を赤く腫らす。
ただ一冊の本をめくり、本に涙の跡を残した。
長門響
長門響
…。
その頃…。
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
雅潤…。
過去に、響に凄く執着してた男の子がいたの、その子とは特別仲が良かったわけではなかったんだけどね
んで、響にいつしか危害加わった。
だから響のお兄さんがずーっとガードしてたの
だけどお兄さんが死んでから、ガードがとれたって知ったんでしょ。
響からは潤の記憶すっぽり抜けてたから、チャンスでもあったんだろうね。
で、君らはどうするわけ。
特に新門大隊長の方は重要人物じゃないかなぁ
長門暁
長門暁
あの子どうしてるの?
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
部屋で寛いでる…、と、いうより、泣いてる…?方かな
新門紅丸
新門紅丸
なんで彼奴が泣いてんだよ…。
陸奥吹雪
陸奥吹雪
……鈍感にもほどがあるぞ?
長門暁
長門暁
こういう事には昔から鈍いものね…。
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
ぐ、ぅうぅ……、一発やりたい
長門暁
長門暁
やめてちょうだいね?!
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
ねぇいつになったら気づくワケ!?
長門暁
長門暁
あぁぁぁ…。
新門紅丸
新門紅丸
なんの事だ
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
響昔っからあんたの事好きなのに!!
新門紅丸
新門紅丸
テメェらふざけてンのか
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
ふざけてないわ!!
小薔薇川音夢
小薔薇川音夢
ていうか自分の気持ちにも気づけよ馬鹿!?
陸奥吹雪
陸奥吹雪
落ち着け!!落ち着け音夢!!!!
ガチャ
長門響
長門響
…本当にいたんだ
新門紅丸
新門紅丸
…。
フイと、顔を背ける紅丸
長門響
長門響
…紅くん
新門紅丸
新門紅丸
俺の名前を呼ぶンじゃねぇ
長門響
長門響
どうして
新門紅丸
新門紅丸
お前なんか幼馴染みでもなんでもねェ
長門響
長門響
…そう
陸奥吹雪
陸奥吹雪
紅!そんな言い方ないだろって!
長門響
長門響
なら…もう、いい…
長門暁
長門暁
待ちなさい響!
長門響
長門響
離してっ、離してよっ!!
長門響
長門響
伝わらないならもうこんな感情意味ないじゃない!!
長門響
長門響
どうして私ばかりこんな思いしなきゃなんないのよ、こんな人生送りたかった訳じゃないのに!!
長門暁
長門暁
響…。
長門響
長門響
自分なんか、大嫌い、私なんて消えてしまえたら、本当に楽だったのに…!
そう言って、彼女は駆け出す。
皆の静止を拒んで走った。
気づけば、また浅草に戻っていた
慣れ親しんだこの街で、さよならを告げてしまいたい
そう思って走っていたからだ
雅 潤
雅 潤
ひーびきっ!
長門響
長門響
…じゅ、ん
長門暁
長門暁
響!
長門響
長門響
お姉ちゃん達も…。
皆の視線がこちらに集まる
雅 潤
雅 潤
…ねぇ、響。俺と一緒に帰ろう?
俺はお前を嫌ったりしない。見捨てたりもしない。
だから、俺と生きよう?
長門響
長門響
…潤…。
長門暁
長門暁
貴方…!!
雅 潤
雅 潤
決めるのは響だ、お前らが決める事じゃない
雅 潤
雅 潤
どうする?響。
長門響
長門響
…。
『必要とされるなら、それでもいいかもしれない』
彼女はそう感じた。
ここでは、私は必要とされてない
嫌われてばかりなら、嫌わないと誓ってくれた潤についていったら、嫌われない。
そして、差し出された手に、響は手を伸ばしたその時──。
新門紅丸
新門紅丸
待て
紅丸がその手を遮った。
その次に、こう告げた
新門紅丸
新門紅丸
こいつは俺の女だ、手ェ出すんじゃねェ。
長門響
長門響
…紅、くん、?
雅 潤
雅 潤
何邪魔してくれてんの?お前が決める事じゃねぇつっただろ
新門紅丸
新門紅丸
お前はどうすンだ。
新門紅丸
新門紅丸
こいつと生きてぇなら止めねェ、だけどここに残るなら
新門紅丸
新門紅丸
俺の女として生きろ。
長門響
長門響
…………あ、はは…、紅くんは、格好いいなぁ…。
長門響
長門響
はぁ…ごめんね、潤。
私やっぱり、ここに残る…。
紅くんの傍で、生きていたい…!
雅 潤
雅 潤
…はぁ、何してくれてんだか…。
また迎えに来るからね、響!待っててくれよ…?
そう言って潤は何処かに消えてしまった
長門響
長門響
…凄く大きな嘘ね
新門紅丸
新門紅丸
嘘じゃねぇ
長門響
長門響
はは、ご冗談を…。
先程の告白を受け入れようとしない響。
そんな彼女に痺れを切らした紅丸は大胆な行動に打って出た。
チュッ…。
長門響
長門響
…え…?
町全体が揺らぎそうな声で皆が騒ぐ。
長門暁
長門暁
あらあらまあまあ…!
陸奥吹雪
陸奥吹雪
紅大胆!ヤバ!
新門紅丸
新門紅丸
うるせぇ
長門響
長門響
べ、紅く、…え?え?
凄い戸惑いようだ
新門紅丸
新門紅丸
分かったか
長門響
長門響
え…?本当に…?本当に好きなの…?
新門紅丸
新門紅丸
好きでもねェやつにこんなことしねぇよ…。
長門響
長門響
…ごめ、涙が、ごめん、顔、見れないや
新門紅丸
新門紅丸
お前の返事は
長門響
長門響
私も言わされるのね…。
新門紅丸
新門紅丸
当たり前ェだろ
長門響
長門響
…ずっと、好きでいてね
そう言って、彼の頬に唇を当てた。

この町で一番の幸せ者だろう、彼女は。

辛い過去を乗り越え、幾度と壁にぶつかってもなお生きた。

死してなお生きる者は一つの愛を手にいれたのであった。



































第一章─思い出編─
完結

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