第21話

雅潤
125
2020/03/18 07:15
新門紅丸
新門紅丸
…。
二日前─。
響と一緒にいたあの雅潤の事が、未だに引っ掛かっている。
本当に彼氏なんだろうか(響が否定しているのをすっかり忘れている)と、頭のなかで疑問がぐるぐる回っていた。
自分では理解していないこの『恋情』を、誰に伝えれば良いのやら…。
それも分からず、また激戦区に足を運ぶことになってしまうのであった
雅 潤
雅 潤
なあなあ響ー、無視しないでくれよー
長門響
長門響
うざったい…、貴方の彼女になった気はないのよ…。
雅 潤
雅 潤
…良いじゃねぇかよー!
そう言って響を抱き締める。
長門響
長門響
!!?っ馬鹿っ!!!何してるの!?
それを引き剥がす。
動揺する響、笑う潤。
そして、壁に隠れている、紅丸。
長門響
長門響
もういい、私気分悪いから…。
襖をスパンと閉めた。
目元から涙が出そうになる。
喉元で何かがもぞもぞと気持ち悪く動く。
彼女は知っていた。
自分の事全て。
紅丸に抱いている感情も、今自分が感じている感情も全て理解している。
紅丸と響の関係にヒビが入ったらどうしよう。
誰かを失う恐怖を一番良く知っているだろう彼女は、今また、誰かを失いかけている。
潤の目論見は一体なんなのだろう…、首を傾げて考える。
しかし今はそれどころではなかった。
長門響
長門響
うぇ…
長門響
長門響
(薬じゃ収まらない、誰か助けて…) 












目が覚めた時には、夕暮れの時間だった
長門響
長門響
…気絶、してたの…?
長門響
長門響
どうしよう、今日、紅くんと約束あったのに
衣笠那智
衣笠那智
?紅丸なら帰ったよ
長門響
長門響
え?
龍驤夕張
龍驤夕張
なんか、暗かったよねー
長門響
長門響
…どう、しよう
龍驤夕張
龍驤夕張
長門響
長門響
紅くんに、潤にハグされた所、見られたかもしれない……。
雅 潤
雅 潤
はぁ、兄貴が死んだってきいて、ようやく手がつけれるようになった…。
雅 潤
雅 潤
響…、俺の彼女に早くしたいなぁ。紅丸さんも見てたらしいし、これなら邪魔は入らない!
雅 潤
雅 潤
きっと…、ね












次の日
長門響
長門響
…詰所にも、いなかった…。
長門暁
長門暁
完璧に避けてるわね、私さっきあっちで見たわ。
長門響
長門響
いく、行ってくる
長門暁
長門暁
…後ろからついていくわ
長門響
長門響
何故…?
長門暁
長門暁
慰め役?
長門響
長門響
あの辛いからやめてよお姉ちゃん




ひょこっ
長門響
長門響
いるね…。
長門暁
長門暁
えぇ、いるわね
長門響
長門響
話しかけてきてよ
長門暁
長門暁
え、えぇ…。
長門暁
長門暁
…紅丸君?
新門紅丸
新門紅丸
!…響の姉貴か
長門暁
長門暁
何かあったの?昨日。
新門紅丸
新門紅丸
…別になんもねぇよ
長門暁
長門暁
ならんで響を避けてるのかしら?
新門紅丸
新門紅丸
避けてねぇ
長門暁
長門暁
そっかそっか…。
長門暁
長門暁
あまり避けてたら響倒れちゃうわよ?
新門紅丸
新門紅丸
…。
新門紅丸
新門紅丸
…めんどくせぇ…。
長門暁
長門暁
本当は心配してるんでしょ、響なんでも知ってるんだから…。
長門暁
長門暁
嫉妬か何か?昨日先に帰っちゃったから響心配してたのよ
新門紅丸
新門紅丸
なんで知ってンだ
長門暁
長門暁
さあ?でも、会いに行ってあげた方が念の為かもね。
長門暁
長門暁
じゃあ、私はお墓参りに行かなきゃだから。
新門紅丸
新門紅丸
…。
゚*.。.*゚*.。.*゚*.。.*゚*.。.*゚゚*.。.*゚*.。.*゚
長門響
長門響
っ潤っ…。
雅 潤
雅 潤
今日も来たぞー
長門響
長門響
もう二度と来ないで、私の前から消えて!!
雅 潤
雅 潤
どうして、そんな事言うんだ?あぁそうか、紅丸さんに何か吹き込まれたのか!大丈夫だぞー響、俺が全てなんだから、俺以外の事は信じなくていい!
長門響
長門響
…何を、言ってるの?
雅 潤
雅 潤
俺ずっと響好きだったんだ。だから、俺だけ見ろよ?な。
長門響
長門響
嫌、あんたなんか大嫌いよ
雅 潤
雅 潤
えー、ひどっ!
チュッ……。




響の唇に、柔らかい感覚がする。
長門響
長門響
…やめて、やめてよ、あんたは潤なんかじゃない
そう言って、逃げようと後ずさる。


ドンッ
誰かにぶつかった。
響は背筋が凍った、何故かというと
長門響
長門響
紅、くん…?
後ろにいたのは、紅丸だったからだ
新門紅丸
新門紅丸
…。
無言でその場から立ち去る後ろ姿に、手を伸ばす。
しかしその手が届く事はなく、ただ、涙をこぼすばかりだ
その日

響は激戦区を出た。
行く宛てはあった。
彼女の知り合い、「小薔薇川音夢」だ。
年がら年中薔薇の咲いているその家は、響の安らぎにもなる。
そうして、キャリーバッグを引っ張って、激戦区を後にした。

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