二日前─。
響と一緒にいたあの雅潤の事が、未だに引っ掛かっている。
本当に彼氏なんだろうか(響が否定しているのをすっかり忘れている)と、頭のなかで疑問がぐるぐる回っていた。
自分では理解していないこの『恋情』を、誰に伝えれば良いのやら…。
それも分からず、また激戦区に足を運ぶことになってしまうのであった
そう言って響を抱き締める。
それを引き剥がす。
動揺する響、笑う潤。
そして、壁に隠れている、紅丸。
襖をスパンと閉めた。
目元から涙が出そうになる。
喉元で何かがもぞもぞと気持ち悪く動く。
彼女は知っていた。
自分の事全て。
紅丸に抱いている感情も、今自分が感じている感情も全て理解している。
紅丸と響の関係にヒビが入ったらどうしよう。
誰かを失う恐怖を一番良く知っているだろう彼女は、今また、誰かを失いかけている。
潤の目論見は一体なんなのだろう…、首を傾げて考える。
しかし今はそれどころではなかった。
目が覚めた時には、夕暮れの時間だった
次の日
ひょこっ
゚*.。.*゚*.。.*゚*.。.*゚*.。.*゚゚*.。.*゚*.。.*゚
チュッ……。
響の唇に、柔らかい感覚がする。
そう言って、逃げようと後ずさる。
ドンッ
誰かにぶつかった。
響は背筋が凍った、何故かというと
後ろにいたのは、紅丸だったからだ
無言でその場から立ち去る後ろ姿に、手を伸ばす。
しかしその手が届く事はなく、ただ、涙をこぼすばかりだ
その日
響は激戦区を出た。
行く宛てはあった。
彼女の知り合い、「小薔薇川音夢」だ。
年がら年中薔薇の咲いているその家は、響の安らぎにもなる。
そうして、キャリーバッグを引っ張って、激戦区を後にした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。