サポート……かぁ。
なかなか面白いことを言うバケモノだ。
一緒に住むとなったら、聞きたいことは沢山ある。
もうそんな経験…二度とないだろうから。
興味津々な目でじっと見つめる。
名前…ないのか、思い出せないのか知らないけどバケモノは、それを聞かれると困ったような顔をして手を顎に当てた。
そう尋ねると、バケモノは横に振る。
忘れた……かぁ。
ならば…名前は、あったというわけで記憶喪失みたいな状態になっているということ?今は。
そう言うと、バケモノは目を開いた。
『君も、なんか思い出せられるかもしれないし!』
そう言うと、バケモノは眉毛を下げながら笑った。変な笑顔だ。素直にそう思った。
バケモノはそんな顔をしながら、紙にペンを握った。
可愛いGoodの絵がある文章を目に映る。
早速、棚から前買って…そのまま使わなかった新品のメモ帳を取り出す。
そして、早速分かっていることを文字に表す。
ーーメモ帳ーーー
・バケモノは、私しか見えないし、話せない。その上、そのバケモノは物など通り抜けることが出来る。
・キューとか、キュッしか鳴けないが日本語は、分かるし書ける。
そして……、
・謎のバケモノには名前が思い出せない。
そう尋ねるとバケモノは、頷きながらGoodポーズを作る。
・……だから、バケモノが本来の名前を思い出せるまで私が《キューさん》と名づけることにした。
バケモノは、いやキューさんはメモ帳を覗くと…「キュー!」と鳴いた。
ガラクタが集まっている押し入れの中から探り…取り出す。
キューさんは、それを受け取るとそっと胸に抱き詰めた。
そして、早速何かを書き出した。
もうそんな事まで掴んでいるんだ…。
凄い観察力に圧倒された。もう…合ってます。100点です。
分かってる。でも……《生きる》のが当たり前すぎて素晴らしいのかも分からなくなる。
1回死んでみたら、その素晴らしさが分かるんだろうけど。
バケモノは、その文章をまた消してまた文章を書く。
キューさんは、目を輝かせてそんなことを文字で話す。
そんな姿を見たら私まで《笑顔》になる。
だからこそ…『出会いは大切に。』って言うんだろうか。
その意味が…ようやく分かったよ。
キューさん、君との出会いも大切にしていこうっか。
ドヤァとした顔で言うと、バケモノはそれが面白かったのか笑い出した。
笑い声も可愛くて…声も意外と綺麗で……
…ってあれ?声出してた?
キューさん自身も驚いているのか口をベタベタと触っていた。
ニシシッ!と、笑うとキューさんは手を頭に乗せて恥ずかしそうに微笑んだ。
その1日には、日が暮れて真っ暗になるまでずっと色々な…話をした。
最近、地球温暖化がやばいとか…私が通っている大学には怖い先生が居るとか、
令和に変わったね。とか…ごく普通の話だ。
それだけど…心がスゥッと楽になってその日の夜は久しぶりに深く眠ることが出来たような気がした。
さぁ〜て、明日は大学に行く日だ。
ーー【ちょい足し】ーーーー
久しぶりに見た人間の手で…
目の前にいる机に顔を載せながら眠っている女の人に…そっと薄い布団をかける。
昨日出会った時の顔とは違って優しい顔になっていた。
ちょっと楽になったのかな?それなら良かった。
さぁ〜て、今夜は満月だ。
ー【ちょい足し】終わり。ーーー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!