第7話

繋がる握手
29
2019/08/17 08:47
私は、目を真ん丸にした。

キューさんが見えるのは私だけだと思っていた。私以外にも見える人がいたの……??
相羽 望結 (アイバ ミユ )
あなたこそ…見えるんですか?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
僕が先に聞いてるんだけど。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
あ、あの…はい、見えてます。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
そうか……
別に驚きもせずに思った通りという顔をしながら、その男は俯く。
話はそれだけだった。
私は、再び前を向いた。先生の話が頭に入らなかった。
何故?何故??……何故??
授業も終わり、後ろの男は何もなかったように立ち上がり…友達だろう?所へ向かう。
聞くなら、今だ。聞くなら今しかない。

なんて言おうか?何故見えるのですか?って言おうか…。



そうやっていつも通り…おどおどしていたら、その人との距離は離れていく。



あーあ、またか。



心のどこかでそんな私を憎たらしく見ている自分がいた。


『私は、変わられない。』


ポンッ…!

相羽 望結 (アイバ ミユ )
……えっ?
背中に何かが触れる音がした。それでバランスが崩れ、自然と体が前へ。

気がつけば、男の服の裾を掴んでいた。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
……??
相羽 望結 (アイバ ミユ )
あっ!すみません…!!
バッと、すぐに手を離す。
言うなら今だ!!頑張れよ、私。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
あ、あのっ、!
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
……?
相羽 望結 (アイバ ミユ )
な、なんで見えるんですか!?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
ちょっと…声がでかいって…!!
私の声が少し大きかったらしく、周りの人が私を見る。

顔がだんだん赤くなっていくのが分かった。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
…ったく、ちょっと来い。
右手を掴まれたかと思うと、グイグイとどこかに連れていかれる。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
ち、ちょっ…!!
振り返ると、キューさんは何故か拍手している。
キューさん(バケモノ)
『頑張ってね。(●︎´▽︎`●︎)』
拍手してるんじゃない!!!…と心の中で叫んだ。
【階段の踊り場】
誰にもいなくなる所まで来るとやっと手を離してくれた。

この雰囲気どうしようか。と困惑している私に早速語り出す目の前の人。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
僕はな、妖怪などが見えるんだよ。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
えっ?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
おじいさんが陰陽師だったからなのかな。生まれつき、見えるんだよ。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
は、はぁ…
そういう人本当にいるんだ……。

テレビとかの中だけの話だと思っていた…。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
じゃあ!ここにもいるの?妖怪?って言う奴。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
…!?
……あぁ、いるよ。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
えっ?どこら辺…!?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
上り階段の端っこに、小豆洗い
相羽 望結 (アイバ ミユ )
ぇえ、
そう言われても私の目には何にも映らない。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
ま、危機には加えないから大丈夫。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
てか、お前普通にコミユニケーション取れるんだな。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
んえっ?
ど、どー言う意味?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
さぁ、話戻して…お前こそなんで…
相羽 望結 (アイバ ミユ )
ちょっ、ちょっと!どういう意味ですか?
彼は、ちょっとため息をついてから口を開いた。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
お前、誰にも話さないからさ、コミュ障かと思ってたわ。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
あ、あぁ…コミュ障ですが…
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
そう、お前のことはどーでもいい。
グサッ。胸を刺す音がした。

言っといて、なんでもその言い方はないんじゃ……。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
お前こそ、なんで見えるんだよ。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
あ、えっと……あの…
何を言おうかと迷っていると、目の前に居る人はだんだん顔が怖くなっていく。

こりゃ、早く言え。と思っている顔だ。

これは、早く言わないとやばい。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
知りません!!私にも!
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
……は?
相羽 望結 (アイバ ミユ )
目が覚めたら…見えていたんです…!
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
……へぇ…。
男の人は、俯く。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
で、話は終わりか?
相羽 望結 (アイバ ミユ )
んえっ?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
何故見えるのか知りたかったんだろ?その理由を教えてあげた。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
他に何か話でもあるのか?
うわぁ、嫌な奴だ。

じゃ、終わりです。と言って戻るのか?
それだったら、今までのままだ。

キューさんの謎も1人で解くのか?目の前の人も、キューさんが見える。
それだったら、協力してくれたら、もっと早く色んなことが分かるんじゃないか?



私は、知っている。キューさんが時々悲しそうな顔をすることを…。なんも思い出せなくて…苦しんでるのかな。


ならば、助けてあげたい。でも、私だけでは物凄く時間がかかるだろう。

だったら、今やることは1つ。






《そこで終わらせるな。》





相羽 望結 (アイバ ミユ )
あの、キューさんが見えるのなら…協力して頂きたいことがあるんです!
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
何の協力?
相羽 望結 (アイバ ミユ )
キューさんは、自分のことが思い出せません。
色々と謎ばかりなんです。
それを解くのを手伝ってもらいたいんです!
彼は、じっと、私だけを見つめる。
太陽の光でピアスが反応し、光る。


そして、出た答えはー。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
いいよ。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
え?いいんですか!?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
あぁ、正直に言って…キューさんは妖怪じゃない。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
…え?それなら何者だと…。
私、てっきり妖怪の何かと思っていた。

違うんだ。だったら何の種類の生き物?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
いや、そこまでは分からない。だからこそ、気になっていた。
手を出してきた。握手をしろ。という意味だろうか。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
僕は、近藤 樹。よろしくな。
私も手を差し出し…、元気よく握った。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
こちらこそ!
私の名前は…相羽 望結です!
近藤さんは、ふっと優しくわらった。初めて見た彼の笑顔だった。

こんな風に優しく笑えるんだ……。


【ちょい足し】
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
ずっと言いたかったんだけどさ、
相羽 望結 (アイバ ミユ )
はい?
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
お前…僕を含めてのメンバーを見ると、そう思っていたんだろ。
相羽 望結 (アイバ ミユ )
え、えっと…(作り笑顔)
さっきとはまた違う、鳥肌が立つような笑顔で近藤さんは言った。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
『あー、無理だわ。パチンコとか、悪い奴らと絡んでいそう。あー、怖い怖い。』ってな。
完璧に思っていたことをすらりと当てて行ったことが何よりも鳥肌が立った。

私…そんな顔してた…?
相羽 望結 (アイバ ミユ )
あっ、ははは…(苦笑)
苦笑いで誤魔化すしかない。なんだってこれからも関わる人だから。
近藤 樹 (コンドウ イツキ)
そんな人じゃねぇよ。怖くねぇってば…。(小声)
なんて言おうか。考えていた私は、この言葉が耳に入らなかった。



【ちょい足し終わり】

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