第3話

(3)
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2020/10/30 15:41
北くんを気になり始めてから
隣の席で授業を受けるのが本当に楽しかった。

ああ、私この人のこと大好きなんだ
と思うようにもなった。

東野 麻弥
東野 麻弥
……き…。愛生!
西山 愛生
西山 愛生
っ!?ど、どうしたん?
麻弥に声をかけられてびっくりした。
ぼーっとしてしまった。
東野 麻弥
東野 麻弥
何ボーッとしとんねん
西山 愛生
西山 愛生
ごめん
東野 麻弥
東野 麻弥
あのさ、愛生に相談したいことあるねんけど…
西山 愛生
西山 愛生
ん?
麻弥は私の手を引いて
屋上のドアの前に行った
西山 愛生
西山 愛生
何?どうしてん?
東野 麻弥
東野 麻弥
あのさ、愛生は好きな人とか…おる?
西山 愛生
西山 愛生
え?
(なんでそんなこと聞くんや?)
東野 麻弥
東野 麻弥
いや、あのさ…私…
彼女が言った、さっきの言葉の続きに
私は何も言えなかった
東野 麻弥
東野 麻弥
…北くんのことが好きやねん……
彼女は恥ずかしそうに俯いて話した。
(麻弥が、北くんのこと…)

何を言えばいいか分からなかった。
ただ、彼女の背中を押してあげないといけない…と思った。
西山 愛生
西山 愛生
麻弥と北くんお似合いやと思うで!
東野 麻弥
東野 麻弥
…え?ほんまに?
西山 愛生
西山 愛生
うん!だから自信持ち!
東野 麻弥
東野 麻弥
ありがとう!
私、頑張ってみるわ!
彼女のために諦めよう…。
親友のためなら、諦められる。

そう思って
私は無意識に北くんを避けるようになった。

_____________________

麻弥が私にあのことを打ち明けてから
1週間が経った。

北くんとの会話も少なくなった。

私は、推薦入試の時期が迫ってきていて
少し焦っていた。
夜の3時ごろまで毎日勉強をしていた。

__________________

入試1ヶ月前______

東野 麻弥
東野 麻弥
愛生?顔色悪ない?
西山 愛生
西山 愛生
…ん?大丈夫やで
笑って誤魔化した。

実は少しだけ体が重く感じる。
私はあまり風邪をひかない方だが
今日は体に力が入らない。
東野 麻弥
東野 麻弥
そう?あんま無理せんときや?
西山 愛生
西山 愛生
ありがとう
うん、と言って麻弥は自分の席に戻った。
(北くんとどうなってんやろ…)
ずっと気になっている。
北 信介
北 信介
なんや、顔色悪ないか?
私の横顔を見て北くんは気づいたようだ。
西山 愛生
西山 愛生
え?大丈夫やで?
北 信介
北 信介
目の下のクマもひどいで
西山 愛生
西山 愛生
気のせいやで、私は大丈夫
なるべく話をしないでおこうと思っていた。
そんな私にも話しかけてくれる北くん。
心配してくれる北くん。

無理矢理笑って誤魔化した。
北 信介
北 信介
そっか、しんどかったら言うてな
西山 愛生
西山 愛生
ありがとう
チャイムが鳴り、挨拶をするために立った。
少しだけフラついた。
立ちくらみだろうか…
(あぶな…)

頭が痛い。視界がぼやける。
(倒れたら体調悪いんバレる…)

私は机にもたれて立った。
挨拶をしてすぐに座り頭をおさえる。

(ガンガンする、最悪やわ…)
北 信介
北 信介
なあ、ほんまに大丈夫なんか?
西山 愛生
西山 愛生
大丈夫やで
彼の優しさを感じる
心が温かくなる優しさだ。

でもな、北くん。
私は麻弥を応援するために諦めなあかんねん。

そんなんされたら、もっと好きになってまうやろ

だから、避けてんねんで。

______________________

授業が終わった。
なんとか1日乗り切った。

麻弥は用事があるから先に帰った。

教室には私ひとり。
少しだけ勉強をして帰ろうと思って残った。

______________________

幸せな夢を見た。
北くんと手を繋いで一緒に歩く夢だ。

このまま夢が覚めなければいいのに…
北 信介
北 信介
……西山さん…?
西山 愛生
西山 愛生
……ん…
誰かが私を呼んでいる…
でも、誰か分からない…
北 信介
北 信介
……っ…、あ、愛生…
西山 愛生
西山 愛生
…!はいっ…
目が覚めた。
麻弥に呼ばれたのかと思った。

でも、麻弥は先に帰ってるはず…
そう思って左を向くと
北 信介
北 信介
…大丈夫か……?
北くんが心配そうな顔で私を見ていた
西山 愛生
西山 愛生
え、北くん?
北 信介
北 信介
ん?
西山 愛生
西山 愛生
なんでおるん…
北 信介
北 信介
いや、忘れ物して取りに来たら
西山さんが寝てたから…
(私…そっか…寝ててんや…)
時計を見ると17時を過ぎていた。

そろそろ帰らないとママが心配する。
西山 愛生
西山 愛生
起こしてくれてんや…
ありがとう…
北 信介
北 信介
うん
彼は忘れ物を机の中から取り出し鞄に入れた。
私も机の上に出していた教科書やノートを片付けて、立つ。

フラッ…
北 信介
北 信介
…!西山さん!
フラついてしまった。
立ちくらみがひどい…
西山 愛生
西山 愛生
ごめん、ありがとう…
北 信介
北 信介
やっぱり体調悪いんやん
西山 愛生
西山 愛生
大丈夫やで
北 信介
北 信介
笑って誤魔化さんでや…
心配やねん…
西山 愛生
西山 愛生
ほんまに大丈夫やで?
北 信介
北 信介
大丈夫って言われても…心配やねん。
やから、家まで送るで…
西山 愛生
西山 愛生
え?
北 信介
北 信介
もう冬やしこの時間でも少し暗くなってるし
(今日くらいええやんな…。好きな人と帰らして…。今日だけでええねん…)
西山 愛生
西山 愛生
…分かった…
私も北くんも自転車で通学している。
一緒に帰るのは初めてだ。

(なんかドキドキする…)

初めて好きな人と帰る。
それだけで特別な日になった。

北くんは私の漕ぐスピードに合わせて走ってくれた。
最近話せていなかったので
他愛もない話ができて嬉しかった。
西山 愛生
西山 愛生
北くん
北 信介
北 信介
ん?
西山 愛生
西山 愛生
ここら辺で大丈夫やで
幸せな時間ももう終わり。
家の近くまで来てしまった。
北 信介
北 信介
あ、ここら辺なん?家
西山 愛生
西山 愛生
うん
少し寂しかった。
もっと続けばいいのにって思った。
北 信介
北 信介
…西山さん?
西山 愛生
西山 愛生
ん?
北 信介
北 信介
いや、ちょっと悲しそうな顔してたから…
(うそ、顔に出てた…ん…?)
西山 愛生
西山 愛生
いや、何でもないよ!
笑って誤魔化す。
まだ一緒に居たいとは言えなかった。
北 信介
北 信介
そっか。じゃあ気をつけてな
西山 愛生
西山 愛生
ありがとう
彼は手を振って、行ってしまった。

後ろでドサッという音が聞こえた。
振り向くとそこには…
東野 麻弥
東野 麻弥
……え…
西山 愛生
西山 愛生
ま、麻弥…
麻弥がいた。
私と麻弥の家は近所なのだ。
用事を済ませて家に帰ってきたみたいだ。
東野 麻弥
東野 麻弥
どういうこと?
西山 愛生
西山 愛生
え、いや…
東野 麻弥
東野 麻弥
私が北くんのこと好きなん知ってんのにさ!
これはどういうことなん!?
西山 愛生
西山 愛生
麻弥、落ち着いて…
東野 麻弥
東野 麻弥
は?私の気持ち知ってるくせに
北くんと一緒に帰ってるやん
なんなん?
西山 愛生
西山 愛生
私が誘ったわけじゃない!
麻弥が北くん好きなの知ってるから
あんまり話さんようにしてた
東野 麻弥
東野 麻弥
でも帰ってるやんか!
西山 愛生
西山 愛生
ここ最近ずっと寝不足で
放課後勉強するために教室いてんけど寝てしもて…
麻弥はとても怒っていた
西山 愛生
西山 愛生
起きたら北くんがいてん。
そしたらもう暗いし送るでって言うてくれて
それで帰っただけやから
東野 麻弥
東野 麻弥
そうやってんか…ごめん…
麻弥は怒鳴ってしまったことを謝ってくれた
誤解をさせてしまった私もちゃんと説明して
誤解が解けたので良かった。

これからは気をつけよう。

北くんが好きということも
麻弥には言わないでおこう。

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