第19話

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2020/11/15 15:46
もう1日目が終わろうとしている。
今日1日北くんと話せていない。

(北くんどこおんねやろ…)
北 信介
北 信介
西山さん?
西山 愛生
西山 愛生
北くん!!!
階段を上っていたら、上に北くんがいた。
北 信介
北 信介
どうしたん?
西山 愛生
西山 愛生
あ、いや……
北 信介
北 信介
ん?
西山 愛生
西山 愛生
なんも…ないで…
私がそういうと彼は私の手を引いて
外に向かっていた。
西山 愛生
西山 愛生
え、ちょっと北くん
北 信介
北 信介
あとちょっとで1日目が終わる
その"あとちょっと"の時間
俺と一緒にまわろ
彼はそう言って笑った。
いつもは無表情な彼が珍しく笑った。

綺麗だった、胸が高鳴った。

ああ、私はやっぱり…北くんが好きなんだ

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北くんと一緒に回る時間がとても楽しかった。
少しの時間でも一緒にいることができてよかった。

西山 愛生
西山 愛生
ありがとう北くん
北 信介
北 信介
ええんやで。
明日の劇、頑張ろな
西山 愛生
西山 愛生
うん!
1日目が終了し、私は兄と帰る。
西山 愛生
西山 愛生
彩美ちゃんと帰らんでええの?
西山 春馬
西山 春馬
うん。彩美は忙しいからな
西山 愛生
西山 愛生
そっか…
西山 春馬
西山 春馬
悠真とは、どうなん?
西山 愛生
西山 愛生
え?
西山 春馬
西山 春馬
悠真、今もずっと愛生のこと
気に掛けてんねんで
それは私が一番よく分かっている。
悠真が今も私のことを好きなのも
近くにいれば、よく分かる。
西山 春馬
西山 春馬
…信介に、ちゃんと自分の気持ち伝えたんか?
西山 愛生
西山 愛生
え?
西山 春馬
西山 春馬
信介が好きなんやろ?
西山 愛生
西山 愛生
そうやけど…
私は自分の口から告白したことがない。
悠真の時だって、そう。
悠真から告白してきたのだ。

(…私も言わなあかんよな……)

兄と話して、自分の弱さに気づかされた。
臆病なことにも。

振られるのが怖いのはみんな一緒なはずなのに。
自分ひとりだけが怖いと思い込んでしまっていた。
伝えよう、北くんに。
言いたいこと、自分の気持ち、全て。

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2日目。
今日は一般公開なので
昨日よりも賑わっている。

他校の生徒や自分の親が来るからだ。

私たちはもうすぐで劇の開幕時間。
私は衣装に着替え
千佳にメイクをしてもらっていた。
櫻井 千佳
櫻井 千佳
緊張してる?
西山 愛生
西山 愛生
そりゃもちろん!
櫻井 千佳
櫻井 千佳
でも、愛生なら大丈夫や!頑張り!
西山 愛生
西山 愛生
ありがとう!
演目は「シンデレラ」
誰もが知っているこの話を
私たちなりに演じる。

私はシンデレラ。相手の王子様役は北くんだ。

舞台袖に北くんがいた。
(うわ!めっちゃ似合っとる!)

一瞬でも目が合えば
セリフを忘れそうになる程、かっこよかった。

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劇は成功した。
セリフを噛むこともなく、
みんなミスなく幕を閉じた。
西山 愛生
西山 愛生
はぁ…
櫻井 千佳
櫻井 千佳
お疲れ!めっちゃよかったで!
西山 愛生
西山 愛生
ありがと!
片岡 悠真
片岡 悠真
……愛生
西山 愛生
西山 愛生
悠真
片岡 悠真
片岡 悠真
…可愛かった。
彼は照れ臭そうにそう言って
舞台の片付けをしに行った。

不器用なとこも昔と変わらない。
そこも可愛いなと思った。
櫻井 千佳
櫻井 千佳
ずるい!私も可愛いって言われたい!
西山 愛生
西山 愛生
ハハ、悠真なら言ってくれるよ
櫻井 千佳
櫻井 千佳
幼馴染はええなあ
羨ましいわほんま!
そう言って千佳も舞台裏の片付けを手伝いに行った。

私は制服に着替えようと思い、教室に向かう。
北 信介
北 信介
…西山、さん
西山 愛生
西山 愛生
あ、北くん
北 信介
北 信介
劇…ありがとう。
彼は顔を赤くしてそう言った。
西山 愛生
西山 愛生
こちらこそ!楽しかった!
北 信介
北 信介
あのさ
西山 愛生
西山 愛生
ん?
北 信介
北 信介
…後夜祭、一緒におりたいねんけど…
西山 愛生
西山 愛生
え…
私から誘おうとしていたのに
北くんが誘ってくれた。

後夜祭。

私は、気持ちを伝えようと思った。

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2日目も終わり、校内や体育館
全ての場所の片付けを終え
後夜祭がスタートする。

北くんと教室で会ってから
グラウンドに降りた。
北 信介
北 信介
2日間楽しかったな〜
西山 愛生
西山 愛生
北くんのおかげやで
北 信介
北 信介
え?
西山 愛生
西山 愛生
ううん!なんもない!
私は恥ずかしくなって俯いた。

グラウンドの真ん中には
人が大勢集まっていた。

私たちは花壇の近くのベンチに座ることにした。
北 信介
北 信介
西山さん、これ
そう言って渡されたのは
私の好物のアイスココアだった
西山 愛生
西山 愛生
ありがとう!お金…
北 信介
北 信介
ええよ
西山 愛生
西山 愛生
ありがとう…
やっぱり北くんは優しいなと感じた。

北 信介
北 信介
昨日の片岡の告白…
かっこよかったな
西山 愛生
西山 愛生
え?あ…うん
少し気まずくなってしまった。
北くんは私と悠真が付き合っていたことを
知っていたから。
北 信介
北 信介
…西山さん
西山 愛生
西山 愛生
北くん!あの…
私が「北くんが好き」という言葉を
口に出す前に
ドーンっと大きな音が響いた。

花火が打ち上がったのだ。
西山 愛生
西山 愛生
わあ…綺麗…
好きな人と2人で見る
花火はとても美しく綺麗だった。
北 信介
北 信介
西山さん
北くんに呼ばれ、彼の方を見ると
真剣な眼差しで私を見ていた。
そして、急に視界から消え
体が温かくなった。

北くんに抱きしめられたのだ。
北 信介
北 信介
花火で聞こえんくなるん嫌やから
ごめんやけど、このまま聞いて
西山 愛生
西山 愛生
う、うん…
北 信介
北 信介
俺、西山さんが好き
彼から言われた「好き」という言葉。
ずっと聞きたかった言葉。
嬉しくて視界がぼやける。
北 信介
北 信介
東野と付き合ってる時、
片岡が西山さんの側にいるんが嫌やった。
北 信介
北 信介
西山さんの隣が
ずっと俺やったらいいのにって
西山 愛生
西山 愛生
…北くん
北 信介
北 信介
西山さんが背中押してくれたから
稲荷崎行こうと思えてん
西山 愛生
西山 愛生
私何もしてないのに
北 信介
北 信介
いっぱいしてくれたで。
ほんまにありがとう
彼は少しだけ強く抱きしめてきた。
北くんの鼓動が早いのが分かる。

(緊張してんや…)
西山 愛生
西山 愛生
ねえ、北くん
北 信介
北 信介
ん?
西山 愛生
西山 愛生
…私もずーっと北くんが好きやってん。
転校した時から、ずっと。
北 信介
北 信介
うん。
西山 愛生
西山 愛生
北くんにだけは心配かけたくない
迷惑かけたくないっておもててん。
北 信介
北 信介
そんな、ええのに…
西山 愛生
西山 愛生
北くん。
私は勇気を出して言おうと思った。
今、言うしかない。と。
西山 愛生
西山 愛生
こんな私でよかったら
付き合ってくれませんか?
北 信介
北 信介
断る理由なんかないねんけど
西山 愛生
西山 愛生
…ええの?
北 信介
北 信介
俺は愛生がええの
北くんが"愛生"と呼んでくれた。
とても嬉しかった。

その日から私たちは付き合うことになった。

この幸せが長く続くと、この時は思っていた。
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