あの日から時が経ち、1ヶ月後。
推薦入試の当日が来た。
今までたくさん勉強をしてきたから
多分大丈夫だと思う。
今日は北くんも一緒だ。
北くんは私が稲荷崎を受けることを
知らなかったようだ。
彼はそう言って笑った。
久しぶりにちゃんと話せた気がする。
2人で話していると
あの… と、声を掛けられた。
声が聞こえる方を向くと…そこには、
京都の中学校にいたときに付き合っていた
片岡 悠真(かたおか ゆうま)がいた。
彼はその中学の男子バレー部キャプテンで
府選抜にも選ばれるほどバレーが上手だ。
引っ越しをする前に別れたのだ。
喧嘩別れではなく円満な別れ方をしたので
今でも仲が良く、連絡も毎日とっている。
皆上とは、私に推薦が来ていた
京都府の強豪校だ。
彼はそう言って校舎に入っていった。
彼は立ち止まったまま、私に聞いた
詳しい事情を彼に話すことは
まだ出来ないが、理解はしてくれた。
切り替えて頑張ろうと言って
私と彼は校舎に入る。
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無事に試験が終わり帰ろうとした。
すると…
悠真が来たのだ
北くんが居なかった。
忘れ物をしたのかなと思い少し待とうと思っていたら、連絡が来た。
" 東野さんのところ、行くから先帰るね。
西山さん、今日はお疲れ様 "
(え…麻弥のところって…)
胸がザワザワする。
(なんか…嫌や…)
私は悠真と駅に向かった。
彼は今から京都に帰る。
私は迎えを呼んでいるので駅で
別れることにした。
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駅に着くと、中高生の帰宅時間と被っていて人が多かった。
悠真と話していると聞き覚えのある声で名前を呼ばれた
(ついてくんなよ…)
私が車に乗ろうとしたら
ママに悠真も乗せてと言われた
彼はありがとうと言って車に乗った。
私も乗ろうとした、その時
嫌な光景を見てしまった。
前から歩いてくる制服を着た中学生。
2人で笑いながら歩いていた。
(麻弥…と、北くんや…)
2人を見ていると麻弥と目が合った。
私は北くんにバレないように車に乗り込んだ。
(やばい、バレてもたかな…)
北くんにだけはバレたくなかった。
悠真と一緒にいることとか。
麻弥にもバレたくなかった。
(上手くいったんやろか…。
あんなんもう付き合ってるよな、絶対…)
麻弥が幸せなからそれでいいと思っていた。
でも私は、やっぱり北くんが好きだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!