秋______
私が大好きな季節。
そんな季節に貴方に出逢いました。
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中学3年の秋
父の転勤が決まり
京都から兵庫に引っ越すことになった。
この時期に転校するのは少し嫌だった。
仲の良い友達と一緒に卒業できると思っていたのに。
京都まではそんなに遠いとは感じない。
友達に会おうと思えば会えるが
私は受験生。
遊びに行っている場合ではなかった。
転校するのは嫌だったが
受験後のことを思えば都合が
よかったのかもしれない。
私の志望校、稲荷崎高校は兵庫の高校なのだ。
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私の名前は 西山 愛生(にしやま あき)。
好きな季節と同じ名前。
なんの取り柄もない私が
唯一出来ることはバレーボール。
でも怪我をして高校では続けないと決めた。
だから、わざわざ志望校を変更した。
最初は府内の強豪から推薦が来ていたのだが
怪我をしてバレーがもう出来ない状況になったから推薦をけった。
私が稲荷崎を目指している理由は
兄が稲荷崎でバレーをしているからだ。
兄の名前は西山 春馬(にしやま はるま)。
今の稲荷崎のキャプテンだ。
稲荷崎は最近力をつけていて去年のインターハイではかなり良い結果を残したと聞いている。
兄の影響でバレーボールを始めた私。
もう出来ないならせめて兄の力になりたかった。
だから、稲荷崎を目指している。
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慣れない制服を着て、中学校に向かう。
風が吹いて香る、金木犀の匂い。
とても良い匂いだ。
学校について職員室に寄る。
担任の先生と一緒に教室に向かった。
(緊張する…。どんな人らがおるんやろ…)
ガラッと扉が開き、先生と一緒に教室に入る。
先生が黒板に名前を書いてから
私は自己紹介をした。
自己紹介を終えると
みんながよろしくと言いながら拍手してくれた
席は北くんという子の隣だった。
北くんはとても優しく親しみやすそうな人だった。
これが私が貴方に出会った、ある秋の日。
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転校して約1ヶ月が経った。
クラスの子とも話すようになり
新しい生活に慣れてきた。
クラスに仲の良い友達も出来た。
東野 麻弥(ひがしの まや)という子だ。
麻弥は転校初日から話しかけてきてくれて
それからだんだん仲良くなった。
先が近いということもあり毎日話したり
登下校も一緒にしている。
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まだ1ヶ月しか経ってないが
少し気になる人がいる。
そう、隣の北くんだ。
普段はクールであまり話すイメージのない男子だが、たくさんの人に信頼されていて、みんなをまとめることができる人だ。
真面目で優しくてなんでも出来る。
非の打ち所がない人。
普段はクールなのに友達と話してる時に
無邪気に笑っている北くんを見てときめいた。
勉強でわからないところがあれば
気づいて教えてくれるし
たまに一緒に帰ったりもする。
少しずつ彼に惹かれているのだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!