第22話

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2020/11/20 16:00
私は、北くんは変わってしまったのだと感じた。
あの優しい北くんが。変わったのだ。と。

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インハイ、春高予選の結果は全部
悠真から聞いた。
たまにお見舞いに来てくれる
部員の皆にも話を聞かせてもらった。

ただ、北くんだけは来なかったのだ。

1月の春高。
正セッターに侑くん、オポジットに治くんが起用され、1.2年生主体のチームとなった稲荷崎。

赤城くんも大耳くんもアランも悠真も全員メンバー入りしていたのに、北くんはベンチでマネージャーをしていた。

(…え?)
もしかして
選手からマネージャーに転向したとか?
それならみんなそういうはずだった。
でも誰一人、転向したとは言っていない。

北くんの実力は他のみんなに比べたら"普通"かもしれない
でもやるべきことはちゃんとやっている。

そんな彼なのに、何故、メンバーに選ばれないのだろう。

わたしには分からなかった。


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1年伸びると言われた入院。
わたしは一生懸命治療して
半年早く退院することができた。

高卒認定試験を受けるために
わたしは勉強し始めた。

実家に戻ると兄がいた
西山 春馬
西山 春馬
愛生!
西山 愛生
西山 愛生
お兄ちゃん!
西山 春馬
西山 春馬
おかえり!
そう言ってわたしをぎゅーっと強く抱きしめる
西山 愛生
西山 愛生
痛い。痛いよ、お兄ちゃん…
西山 春馬
西山 春馬
あ、ごめん…
1年前、春高でベスト8になった時のお礼を伝えると、「愛生のおかげやからな」と笑って答えてくれた。

そんな兄は、体育教師になるために
今大学に通っている。
もちろん、大学でもバレーボールを続けている。
それがとても嬉しかった。

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まだ冬の匂いが残る3月のはじめ。
私は久しぶりに練習を見に行くことにした。
もちろん、一人では行きづらいので
兄と一緒にだ。

入り口に行くと、制服を着た学生が近づいてきた
片岡 悠真
片岡 悠真
愛生…?と春馬さん…?
なんで!?
西山 春馬
西山 春馬
練習見にきた!
愛生も退院したから連れてきた!
片岡 悠真
片岡 悠真
た、いいん……ってことは!
西山 愛生
西山 愛生
西山愛生、完治いたしました!
片岡 悠真
片岡 悠真
おめでとう〜!よかった
悠真はとても嬉しそうに話していた。
その後ろから宮兄弟が近づいてくる。
宮 侑
宮 侑
愛生さんや!!
西山 愛生
西山 愛生
侑くん!!
宮 侑
宮 侑
…治ったん、ですか…?
西山 愛生
西山 愛生
うん!お見舞い、来てくれてありがとう!
宮 治
宮 治
悠真さんが連れてってくれただけです。
でも治ったよかった…
宮 侑
宮 侑
おいサム!それ俺が言おうとした!
宮 治
宮 治
知らんわ!
ケンカをする宮兄弟を止める悠真
とても賑やかになって嬉しかった。
西山 愛生
西山 愛生
そういや、キャプテン誰になったん?
春高後、新チームになって
キャプテンが変わった。

私の予想では
常にコートに立ってる悠真やアランが
キャプテンだと思っていたが
悠真はあの人の名前を言った。
片岡 悠真
片岡 悠真
北やで。
俺らは北しかおらんって思ってん。
西山 愛生
西山 愛生
え…北くん?
西山 春馬
西山 春馬
信介か。
確かにあいつの言うことは的確やし
実力はみんなより劣ってるかもしれんけど
稲荷崎に入るだけの実力はある
片岡 悠真
片岡 悠真
それに、俺らの空気変えられるんは
北しかおらんもんな。
侑と治も北の言うことなら聞くし
西山 愛生
西山 愛生
そう、なんや。
彼らと話しながら体育館に向かった。
顧問の先生にも久しぶりに会い
楽しく話した。
赤城くんや大耳くん、アランも話しにきてくれた。

そんなみんなに差し入れを渡そうと思った。
今日は手作りのマドレーヌ。
(みんな喜んでくれるとええなあ…)
北 信介
北 信介
春馬さん…!
西山 春馬
西山 春馬
おう!信介!
北 信介
北 信介
お久しぶりです。
北くんとお兄ちゃんが話している声が聞こえた。
北 信介
北 信介
あの、愛生は…
西山 春馬
西山 春馬
完治して、今日来てんで
北 信介
北 信介
完治…よかった…っ
少しだけ北くんの声が震えていた。
西山 春馬
西山 春馬
泣くなや〜!
キャプテンなんやからしっかりしろ!
北 信介
北 信介
そんなん…、好きな人が
治ったって聞いたら
誰でも安心しますよ!
(え、好きな人…?)
西山 春馬
西山 春馬
誕生日もありがとな
北 信介
北 信介
俺があげたのはプリザーブドフラワーだけですよ
西山 春馬
西山 春馬
その、花言葉?みたいなやつ
北 信介
北 信介
あ…「貴方に見惚れています」…でしたね
俺にぴったりやなって思って
西山 春馬
西山 春馬
綺麗な花やったわ
お前らの誕生日の誕生花やってんな
北 信介
北 信介
そうです。
恋愛禁止になって別れなあかんかった時
言えへんかったから、俺の気持ち
だからあの花を _______

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北くんが誕生日の時にくれた
プリザーブドフラワー。
その中に入っていた"ペンステモン"の花言葉は
「貴方に見惚れています」だった。

別れてからも、北くんは私のことを想ってくれていたことを知り、涙が出た。
西山 愛生
西山 愛生
…そんなん……っ…!ずるいやん…!
北くんにその言葉をそのまま返したかった。
"私も貴方に見惚れていますよ"と言いたかった。

北くんにちゃんと、伝えよう。
私の想いを。私の気持ちを。
全て __________________

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