俺が西山さんに出会ったのは
中学3年の秋。
彼女の名前と、同じ季節。
稲荷崎からスカウトが来た時
なんで俺が?って思ったけど
これも「反復・継続・丁寧」をしてきた
結果なんやって思った。
俺は中学3年間、スタメンになったことはない。それどころか、ユニフォームだって貰えなかった。それでも、こんな俺を見つけてくれた稲荷崎の監督には心から感謝している。
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俺は実は西山さんのことが気になっていた。
春馬さんの妹だと知った時はとても驚いたけど。
彼女の隣の席で
毎日一緒に授業を受け
放課後に勉強をする。
たまに稲荷崎に行って
一緒にバレーをしたこともある。
そんなある日。
彼女の親友である東野麻弥から告白された。
でも、俺は断れなかった。
彼女のことが本当に好きかと聞かれたら
実は少し曖昧だったりする。
西山愛生のことがまだ気になっているから。
でも、西山さんは俺のことを避けているようだった。
高校に入ってから、部活に参加すると
彼女は片岡悠真という男と一緒にいた。
仲睦まじい彼らを見ていると
胸が痛くなった。
(今までこんなことなかったのに)
気付いたらいつも西山さんのことを想っていた。
合宿前
俺は東野麻弥を呼び出し、話をした。
彼女は「別れたくない」と泣きついてきたが、
俺は自分の気持ちを彼女に伝えた。
そしたら彼女は、「本当は気付いてた」と言った。申し訳なかった。
中途半端な気持ちで彼女と付き合っていたこと。
今もまだ西山さんを忘れられないこと。
彼女はこれからも友達でいてほしいと言ってきた。
友達としてなら俺はずっと付き合っていけると思った。
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合宿の時、西山さんが体育館で倒れた。
俺はコーチと一緒に病院に行った。
コーチには病室にいるようにと言われ
西山さんのそばにいた。
(何があったんやろ…)
思えば彼女はいつも無理をしていた気がする。
俺が「大丈夫?」と聞いても
笑って誤魔化していた。
大丈夫だと嘘をついていた。
それが少し悲しかった。
頼られていないのだと思った。
彼女のことを"愛生"と呼びたかった。
気付いたら…彼女の名前を呼んでいた。
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目を覚ました彼女は
とても驚いていた。
西山さんの母が病室に入ってきた。
俺はコーチと病室の外で待つことに。
少しだけふたりの会話が聞こえた。
そこで気になる言葉が…
(再発…って…なんや…)
もしかして
西山さんは病気を患っているのでは?
でもそんな素振り見せていなかった。
中学の時も。これまでも。
色々考えていると、西山さんの母に呼ばれた。
「愛生が話したいことがあるって…」と言われ、病室に入る。
彼女はいつもより少し小さく見えた。
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今にも泣きそうな声で
彼女は俺に「好きだ」と言ってくれた。
嬉しかった。
でも、東野麻弥はまだ別れたことを言っていないようだ。
俺からも言えなかった。
ただ、「ありがとう」とそう伝えた。
彼女は涙を流して笑っていた。
とても儚い表情をしていて、苦しくなった。
コーチにそろそろ行こうかと言われ、
高校に戻った。
そこで告げられた、西山さんの真実…
_________白血病の再発…
俺以外のみんなが知っていた。
片岡もアランも赤城も大耳も。
俺だけが知らなかった。
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部活が終わり
俺は春馬さん、片岡と共に病院に向かった。
その時、彼女が全て話してくれた。
(俺が西山さんを支えてあげたい…)
心の中で「彼女を支える」と誓い、
「また来るわ」と伝えた。
彼女はとても嬉しそうな顔で笑っていた。
俺はそれがとても嬉しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。