僕達の話は、主に一学期後半から始まる。一学期ももう終わりに近づいた頃、君に雑談をしに行った。君は可愛い声で、「兎野渚です。よろしくお願いします! 」って言っていた。その後15分くらい雑談をした。先生の白髪、友達がわざと折ったチョーク、話のネタはいくらでもあった。君は僕の話を頷きながら聞いてくれた。笑った顔が、可愛かった。でも、さっきから引っかかることがあった。初めて話すのに、会話がスムーズすぎる。なんでか君にも聞いた。そしたら君はこう答えた。「さっきから、私を好きになってくれているという気持ちが、貴方から読み取れるの。」って。
僕は焦った。そうだった。忘れていた。多分あの時の僕の顔は真っ赤だったろう。でも、君はこういってくれた。「私も好きだったから、気にしないで。」って。少し安心した。片想いじゃなかった。「放課後校舎裏に来て。またね!」って君が言った途端、チャイムが鳴った。聞きたいことまだあったのに。そう思いながらも、僕は席に着いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!