…任務に出る為、自分の屋敷から出ようとした時。
第六感が何かの気配を感じ取り、即座に避ける。
その瞬間。
バッシャァァァン
もう少しで、水浸しになる所だった。
同じ柱だが、名前で呼ばれたくはないだろうと思い…水柱様と呼ぶ。
そう言い残し、ズキリと痛む心臓に泣きそうになりながら、私は任務へと赴いた。
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鬼共を片付けて、踵を返そうとした時。
……見覚えのある、「殺」の文字が目に入った。
…風柱……不死川実弥。
あまり話したことは無いけれど…きっと、あの人も私の事なんか信じちゃくれない。
鬼殺隊に、私の居場所なんてないんだ…。
今度こそ、踵を返す。
……すると誰かに腕を掴まれた。
バッと距離を置き、日輪刀に手を掛ける。
……そこで目に入る、銀髪。
殺の文字が刺繍された、白い羽織。
…そして、綺麗な顔に付けられた古傷。
腕を掴んだのは、さっき見かけた風柱様だった。
ハッキリ言って、この人には良いイメージが無い。
ある柱合会議では鬼をブッ刺し、実の弟すらも拒絶する。
1番、私に酷い仕打ちをしてきそうな人だと思うと……声が、震えた。
殴られるのか? それとも、蹴られる?
締め上げて、痣だらけになるまで…暴力を振るってきたりするのかなぁ。
ガタガタと震えていると、風柱様が口を開いた。
想像の斜め上を行く問いに、一瞬言葉が詰まる。
…また、想像の斜め上を行く言葉。
この人は、殴ったり蹴ったり罵倒したりもしない…
こんな悪人面ぶら下げて、本当は……1番、優しい人なのか?
その言葉に。
……一瞬、胸が高鳴った気がしたけれど…きっと、気の所為だ。
私は自分にそう言い聞かせ、今度こそ……自分の屋敷へと戻ったのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。