第5話

味方
6,600
2020/04/02 05:26
…任務に出る為、自分の屋敷から出ようとした時。

第六感が何かの気配を感じ取り、即座に避ける。
その瞬間。
バッシャァァァン
盈仙えいせんあなた
……危な
もう少しで、水浸しになる所だった。
盈仙えいせんあなた
……変な趣味してますね? …水柱様。
同じ柱だが、名前で呼ばれたくはないだろうと思い…水柱様と呼ぶ。
冨岡義勇
冨岡義勇
……チッ。お前のしたことは……誰にも許されない
盈仙えいせんあなた
……それは、此方の台詞です。では。
そう言い残し、ズキリと痛む心臓に泣きそうになりながら、私は任務へと赴いた。
****
盈仙えいせんあなた
……ふぅ。これで、任務は終わったか…
鬼共を片付けて、踵を返そうとした時。

……見覚えのある、「殺」の文字が目に入った。
…風柱……不死川実弥。
あまり話したことは無いけれど…きっと、あの人も私の事なんか信じちゃくれない。

鬼殺隊に、私の居場所なんてないんだ…。
盈仙えいせんあなた
……帰るか
今度こそ、踵を返す。

……すると誰かに腕を掴まれた。
盈仙えいせんあなた
っ!? 誰っ……
バッと距離を置き、日輪刀に手を掛ける。


……そこで目に入る、銀髪。

殺の文字が刺繍された、白い羽織。

…そして、綺麗な顔に付けられた古傷。
盈仙えいせんあなた
あっ…え……っと…風柱様…
不死川実弥
不死川実弥
…流石、柱だなァ。反射神経がそこらの隊士と比じゃねぇ
腕を掴んだのは、さっき見かけた風柱様だった。
盈仙えいせんあなた
な、なんの御用でしょうか……
ハッキリ言って、この人には良いイメージが無い。

ある柱合会議では鬼をブッ刺し、実の弟すらも拒絶する。
1番、私に酷い仕打ちをしてきそうな人だと思うと……声が、震えた。

殴られるのか? それとも、蹴られる?
締め上げて、痣だらけになるまで…暴力を振るってきたりするのかなぁ。

ガタガタと震えていると、風柱様が口を開いた。
不死川実弥
不死川実弥
……お前、本当にアイツのこと斬ったのかァ?
盈仙えいせんあなた
えっ……
想像の斜め上を行く問いに、一瞬言葉が詰まる。
不死川実弥
不死川実弥
……どうなんだァ
盈仙えいせんあなた
……私は…愛柱様のことを斬ってなどいません。あの人の自作自演です。
盈仙えいせんあなた
……不意を突いて私の日輪刀を奪い、自らの腕を切った後、私に投げつけ思わず私は手に持ってしまいました。
盈仙えいせんあなた
……でも、信じて頂かなくて結構です。私には、もう──
不死川実弥
不死川実弥
…何だ、やっぱテメェは何も悪くねぇじゃねぇか
盈仙えいせんあなた
え…
…また、想像の斜め上を行く言葉。

この人は、殴ったり蹴ったり罵倒したりもしない…
こんな悪人面ぶら下げて、本当は……1番、優しい人なのか?
盈仙えいせんあなた
信じて、くださるんですか…?
不死川実弥
不死川実弥
あァ。つーか、あの柱共おかしいだろォ。嘘かどうかくらい、何でわかんねぇんだァ
不死川実弥
不死川実弥
…あー、それと。同じ柱なんだから、その「風柱様」っつうのやめろォ。不死川でいい
盈仙えいせんあなた
…不死川さん
不死川実弥
不死川実弥
……盈仙。俺ァテメェの味方だ。忘れんじゃねぇぞ
不死川実弥
不死川実弥
…俺が、テメェを守ってやらァ
その言葉に。

……一瞬、胸が高鳴った気がしたけれど…きっと、気の所為だ。
私は自分にそう言い聞かせ、今度こそ……自分の屋敷へと戻ったのだった。

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