『café』
☆61☆
その行動に戸惑いながらも…
嬉しかった。
私になんて、触れてもくれないだろうと、思ってたから。
濡れてる帯締めを解くのは、難しく…
手間取る。
私は、溢れる涙を気にもせず、藤井さんの手を退けた。
藤「…イヤ??」
泣いてる私の顔を見て、不安そうな目をする。
〇「ううん//そうじゃなくて…私が外しますから//…」
立ち上がり、後ろを向いて、帯締めを外し…
帯揚げを外し…
枕を外し…
お太鼓を崩すと…
ストンッ!と、床に落ちていった帯。
伊達締めを外すと…
っ!!!
後ろから抱きしめられ、
藤「やらせて…」
と、耳もとで囁くと、腰紐を解き始めた。
その声に、ゾクッ!っとした私の反応を、楽しんでるかの様に…
ゆっくりと腰紐を引いて…
私を回した。
ハラリ…と前の重なりがはだける…
☆62☆
再び唇を奪いながら…
着物を落とし、濡れて透けている襦袢越しに、私を抱きしめた。
藤「はぁ…〇〇 やばい…//…」
〇「え…どうした……の?」
そう、不安げに聞く私に、思いもしない言葉が……
藤「……めっちゃ、色っぽいで?…//」
えっ!!!
私が……??
信じられなくて、動きが止まる。
藤「〇〇?……大丈夫?」
私は藤井さんの背中に、初めて腕を廻した。
藤「〇〇?…嫌なら言うてな?……俺なら大丈夫やから」
優しく包まれながら…
私は、その暖かさに…
夢じゃないんだと、気付かされた。
〇「…あの//…藤井さん?」
藤「ん??」
〇「す、好きです//」
藤「ふはぁっ//…俺も……好きやで//」
照れてる顔が見たくて…
ゆっくりと、顔を上げると…
☆63☆
愛おしそうに見つめられ…
その澄んだ瞳に映る私。
〇「…あの…でも私…//…分からないんです//…」
藤「??何が分からんのや?」
〇「や// あ、あの……」
どうしよう!
言い出すのが恥ずかしい!
このままじゃ、拒んでるって思われちゃうかな……?
藤「不安があるんやったら言うて?…俺もう、〇〇の彼氏なんやから。」
っ!!!
か、彼氏…か!
そうだよね!
思ってるなら、隠さない方がイイよね?
〇「わ、私…初めてだから…//…キスから先が…どうしていいのか……///」
そんな私を見て、藤井さんはホッとしたように微笑んで、そっと抱きしめた。
それはとても…
優しく…
強く…
ただそれだけで、心が暖かく安心した。
藤「…大丈夫…身体が、教えてくれるから…」
〇「で、でも…//」
藤「シィっ!」
☆64☆
藤「シィっ!」
藤井さんは、人差し指で私の口の動きを封じると…
ゆっくりと その輪郭をなぞる…
ゾクッ!!!
その指先に誘われるがまま、
私の身体は捕らわれてしまった。
塞がれた唇は、さっきとはまるで別のキスで濡れていき…
っ//………んはぁっ///……
藤「俺が全部……教えてやるから……」
合間に降りそそぐ、挑発的な言葉と、漏れる息づかいに、
その夜だけで…
私の中に藤井さんが…
甘く…甘く…
満たされていった。
☆65☆
♪〜着信音〜♪
……ピッ!
神「おい、今どこや?」
藤「ぅ〜ん……ホテル?」
神「っ!!!お前 誰や!!!」
着信音と話し声で、眠りから解放されつつあった私は…
電話の向こうから怒鳴る、聞き慣れた声に反応した!
っ!!!智くん じゃんっ!!!
〇「えッ、チョット藤井さん!」
藤「…んん〜??」
完全に寝ぼけてるし…
ふふっw 可愛い♡
神「〇〇は どこやぁーーーッ!!!」
スマホから漏れてくる智くんの声よりも、藤井さんの寝ぼけ顔が勝り…
ニヤついちゃうなぁ〜ww
藤「あ〜……俺と〇〇は…」
まだほとんど開いてない目で、チラッと私を見ると、
藤「大人な関係やから……そゆこと…」
っ!!!おとなぁ〜〜???
神「っ!おい!お前!!!どういう意味やぁーーーッ!!!」
☆66☆
神「っ!おい!お前!!!どういう意味やぁーーーッ!!!」
電話の向こうの声から、対面では恐ろしいくらいの怒りを感じる。
やばいよぉ〜!!!
〇「ふ、藤井さん!!!」
藤「ん??…ちゃうん??」
〇「っ!//…ち、違うくないですけど//……」
私は「ほい!」と渡されたスマホに恐る恐る耳を当てた。
〇「…も、もしも…し…?」
神「〇〇!大人なって!どういうこっちゃぁーーーッ!!!」
〇「ははぁ〜w 智くんには、まだ分からないかなぁw」
私はワザとケシ掛けた。
神「っ!わ、分かるわぁッ!!!」
〇「…じゃぁ…喜んでくれるよね?」
神「…はぁ?」
〇「あ〜//…彼氏が…出来ました///」
神「え……あ〜……ぅん〜〜?…そっか…そっか…」
怒りが治ったのか、私の言葉を理解するのに時間が掛かってるのか…
智くんは、大人しくなった。
☆67☆
神「聖羅に代わるわ…」
明らかに、さっきまでの元気は無い。
聖「無事で良かった!…神ちゃんは無事じゃないかも知れんけどw」
〇「智くん…喜んでくれないのかな…?」
智くん…
藤井さんに「もうコイツに構わないでください」って、言ってたもんな…
智くんに反対されたら…私…
辛いよぉ〜〜(泣)
聖「ふふっw 大丈夫!娘を嫁に出す心境なんでしょ?」
〇「…う、うん。聖羅ごめんね?」
聖「聖羅様に任せなさい!」
〇「ありがとう聖羅♡」
聖「早めに彼氏に会わせなさいよぉ〜ww」
〇「ふふっw うん//」
「彼氏」という言葉が、なんだか くすぐったかった。
〇「ひゃっ!!!」
電話を切るのとほぼ同時に、藤井さんの指先は、私のラインをイタズラに なぞった。
藤「遅い〜」
〇「っ!ご、ごめんなさい!//」
藤「ふふっw そない本気で謝らんといてやぁ〜w」
☆68☆
〇「え…あの…ごめんなさい…分からなくて…」
どうしてだろう…
藤井さんは、私の彼氏なのに…
そこには まだ、壁がある様に感じた。
藤「〇〇…ごめんな……」
〇「や、藤井さんは何も悪くないです!…ただまだ……実感が無いと言うか…」
藤「この状況でもか?」
藤井さんは、バサッ!っと掛け布団をはいだ!
昨夜は 暗かったし、もう夢中で、ほとんどの事を覚えてないからか…
私は、朝日で露わになった全裸の藤井さんを目の前に、意識が遠のく一歩手前だった!
藤「俺の全てが、〇〇のものだよ?」
そう言いながら、掌がフンワリと頬に触れると、それとは似つかない勢いで、襲い掛かる唇。
一瞬で、今にも砕けそうな身体へと昇っていく。
〇「…ッ//……ふじぃ…さん//……」
藤「もっと教えてやる……〇〇の心に届くまでな……」
☆69☆
それは…
私が今まで 覗いたコトすらない世界だった。
ッ……ぁッ//………はぁっ//……
藤井さんに触れられるほど…
色づく息が漏れるほど…
愛されている感覚を…
心までもが…覚えていく…
藤「〇〇?」
〇「はい?」
藤「もう…俺から離れんといてな?」
〇「…は、はい//」
そんな事 言われなくても、今の私には当たり前なのに…
藤井さんは、至ってマジメに言う。
藤「〇〇も辛かったやろうけど…俺も…〇〇が遠のいてくの…めっちゃ辛かってんで?」
〇「…ごめんなさい。私…まさか藤井さんがそんな風に想っていてくれてるなんて…」
藤「俺が悪いんやけどな?…〇〇が可愛くて、ついからかって しもうてww」
〇「藤井さんって…Sですねw」
藤「ふふっw 〇〇が、そうさせるんやん!」
☆70☆
キスや身体だけではない。
その、藤井さんから投げかけられる、言葉のひとつひとつが、
「愛してる」であり、
「愛されてる」と心に響いていった。
______________
〇「あのぉ〜〜??//」
望「ん?なぁに?w」
〇「ニヤつき過ぎですよ?」
望「や、まさかだからぁ〜!流星、そんな男らしい奴やったとはなぁ〜ww」
〇「だからって、どうして…」
ブラックコーヒーに挑戦する私を、望さんまでもが、ニヤついて見ている。
藤「せや!望はどっか行き?」
カランコロン♪と、ドアが閉まる音がすると、藤井さんが戻ってきた。
望「また〜? close にしてきたやろ?」
藤「当たり前や!こんな かわええ〇〇を誰かに見られてたまるかっ!!!」
望「はいはい。ほな、おれらも休憩しようや?」
藤「せやな!」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。