角名 side
- あなたが怪我して来た
本人は階段から落ちたって言ってるけど
階段から落ちてそんな傷出来るのか……?
けど俺はあれからあなたと話してないし
聞けなかった
美結:なぁ,あなた知らん?
- 昼休み,西村が俺達にそう言った
治:さっきツムも同じ事言っとったなぁ
美結:侑くんとは会ったで。あなたの場所聞かれて答えたんやけど……
- 『 二人とも何処にもいなかったんよ 』
西村はそう言っていた
治:一緒におるんかな?
美結:LINEしても通じなくてさぁ
角名:………ちょっとトイレ行ってくる
- 俺はそう言って教室を抜け出すと走り出した
あの二人が一緒にいるとか____危険すぎる
角名:ッ………
- 校内を探し回ってみても二人は何処にもいない
どこ行ったんだよと思った矢先
保健室の扉が少し開いていて
中から声が聞こえてきた
『 あなたのこと守りたいねん 』
- 紛れもない,侑の声だった
俺は扉を少し開けて中を覗いた
侑が____あなたを抱き締めていた
『 俺にしぃや 』
- そう言って侑はあなたに唇を重ねた
俺は見ていられなくて静かに扉を閉じた
" 俺にしぃや "ってことは____
まだ付き合ってはいない………よね?
俺は不安に駆られて胸が痛くなった
治:あ,ツムいたん?
侑:?おん,いたで?
治:あれから戻ってこんかったから帰ったんかと思ったわ
侑:まさか。あなたと保健室におったわ
- 『 今日あなたの事送ってから帰るから 』
侑は治にそう言っていた
ていうことは____まだ保健室にいる?
角名:………ねぇ侑
侑:?なんや
角名:侑とあなたは付き合ってないんだよね?
侑:…………
- 多分付き合ってはいないと思う
でも侑は付き合っていないとは言いたがらなかった
侑:それがなんや
角名:付き合ってないならあなたに無理やりキスとかするの止めなよ
治:え?
- 治も銀島も驚いた顔をしていた
侑:角名に関係ないやろ
- 侑はそう言った
関係ない……?巫山戯るな
角名:関係無いはずないよね?俺があなたの事好きなの知ってるよね?
侑:あ,まだ好きだったん?
角名:は………?
- 『 最近違う女と仲良くしとるから
そっち行ったんかと思ったわ 』と笑う侑
きっと楓花の事を言っているんだろう
角名:楓花とは別にそんなんじゃないから
侑:へぇ?でも
角名:?
侑:角名はそう思っててもあの女はそうは思っとらんのやない?
- 侑が何の話をしているのかわからなかった
侑:あなたの事が好きなら彼奴の事どうにかせんといけないんやない?
角名:は………?
- 『 あなたの傷を作ってんの
間違いなくお前やで 』と言う侑
傷を作ったのは俺……?
そんな酷い事する訳ないだろ……?
………てことは………
やっぱりあれは____人工的に作られた傷
俺は部室を飛び出した
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!