- 『 話があるから来て欲しい 』
侑くんがそう言った
怖かった。行きたくなかった……でも
侑くんは凄く悲しそうな顔をしていた
角名:行かせる訳ないでしょ?
侑:お前には関係ないやろ
角名:関係ある
- 『 お前さっきあなたに何言ったか覚えてんの? 』
そう言う角名くんは____すごく怒っていた
侑:ッ………
- 流石の侑くんも言い返すことが出来なくて
顔を顰めてしまった
角名:言いたい事あるならここで言って
- 『 あなたは絶対に行かせない 』
と角名くんはあたしの手を握ってくれた
侑:………わかった
- 多分角名くんが行かせたくない以前に
あたしが行かないと思ったのかもしれない
侑:ここで言うから……話を聞いて欲しい
- 侑くんは悲しそうな顔のままあたしにそう言った
侑:……まず……さっきはあんなこと言うてほんまにごめん
あなた:え……?
- 侑くんは勢いよく頭を下げた
あたしはすごく驚いた
侑:それから……あん時もほんまにすまんかった
-『 あん時 』
きっと8年前のことを言っているのだろう
でも………どうして?
侑:俺………あなたの事ブスだなんて思った事あらへん
あなた:え………?
- あたしは耳を疑った
『 ブスだなんて思った事ない 』
侑くんは確かにそう言ったのだ
あんなにぶすって言われてきて
ぶすに好かれるのは相手が可哀想って言って
ぶすが人を好きになるなと言った____張本人が
侑:俺………ほんまに餓鬼ん時……いや,今もか……全然素直になれんくて…思っとる事と真逆のこと言うてまうねん
- 侑くんは頭を下げたまま話を続ける
侑:あなたが俺の事を好きやって知って…ほんまはすごい嬉しかった。でも__周りから茶化されて思わず俺は『 こんなぶす好きな訳ない 』って言うてしもうた
- 侑くんの声は震えていた
侑:全然素直になれんくて……俺はひたすら思ってもないような事を言い続けた。構って欲しくて意地悪もした。……それがあなたを苦しめとるなんて餓鬼の俺は全然知らんかった
- 『 餓鬼の頃の自分を死ぬほど恨んどる 』
侑くんはそう言った
侑:……あなたが転校したって聞いた時……初めて気付いたんや……俺が今まで何をしてきたかって……どんだけあなたを傷付けてきたかって…やっと気付いたんや
- 侑くんは顔を上げた
上げた顔……侑くんの目からは
____涙が流れていた
侑:俺……あなたにもう一度会えたら絶対に伝えようって決めてたことがあんねん
あなた:え………?
- 侑くんは涙を拭って真剣な顔をする
侑:……俺は…8年前から…あなたが転校してきてからずっと
あなたの事が好きやった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。