第34話

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2020/03/28 17:06
藤原樹
藤原樹
いるよ
次の日の朝、あたしの張り切った
湯浅愛羅
湯浅愛羅
樹って彼女いるの!?
という質問に、サラッと樹はそう言った。
期待外れの答えを。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
いるの!?
藤原樹
藤原樹
嘘〜いない
湯浅愛羅
湯浅愛羅
なんだいないの?
藤原樹
藤原樹
嘘。いる
樹が真面目に答えてなんてくれないだろうと思ってた……こともなくて。
彼女の話くらい教えてくれると期待していたあたしがバカだった。。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ちゃんと教えてよ!
藤原樹
藤原樹
なんでだよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
なんでも
藤原樹
藤原樹
意味わかんね
樹は本気で教えてくれないらしい。必死で聞くあたしに首を傾げるだけで、一向に真面目に言わない。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ねぇ壱馬、どうなの?
川村壱馬
川村壱馬
あ?  なんでお前そんなこと気にしてんだ
墓穴だったらしい。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
だって…知りたいし
川村壱馬
川村壱馬
だから何でだって聞いてんだよ
お怒りな壱馬からゆっくり視線を外し、そっとしといてやっぱり本人に聞くことにした。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
お願い、樹。教えてよ
藤原樹
藤原樹
壱馬、機嫌悪くなってんのにいいのか
湯浅愛羅
湯浅愛羅
はぐらかさないで!
もうあたしも意地になってきた。
あたしから言い出した以上『分からなかった』『教えてくれなかった』じゃ、許されない。
藤原樹
藤原樹
なんで知りたいのか、お前が言ったら教える
湯浅愛羅
湯浅愛羅
は?
藤原樹
藤原樹
は?  じゃねぇよ。人生目には目を、歯には歯をだろうが
……。
意味を分かって使っているのか。いや、確実に分かってない。だって間違ってる。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ただ気になるだけ!  それだけ!
藤原樹
藤原樹
…いなかったらどうなんだよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
嬉しい!
その言葉と同時にダンッ!と激しく椅子から立つ音がした。

もしかして、もしかしなくても、確実に壱馬だ。
川村壱馬
川村壱馬
なんなんだお前は
湯浅愛羅
湯浅愛羅
だ、だって……
川村壱馬
川村壱馬
だってなんだぁ?あ?
必死になりすぎたっっ!!

あたしは、完全にキレそうな壱馬の腕をつかんで、近づいた。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ちょっと来て
川村壱馬
川村壱馬
あ?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
来て!!
そうだった。別に壱馬に言っても大丈夫なんだった。

朗報かアクシデントか。あたしは美優が樹のことを好きになっちゃったことを、教室から出た廊下の隅で壱馬に伝えた。






川村壱馬
川村壱馬
完全にアクシデントだ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え、
なんとも言えない微妙な顔をした壱馬が、困ったように頭をガシガシかいて言った。
朗報かアクシデントか───────全てを知る灰高のヘッドが答えたのは、アクシデントの方だった。
美優が樹を好きになるのはまずいらしい。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
な、なんで??
川村壱馬
川村壱馬
あいつだけはやめた方がいい。樹は誰も好きになんねぇよ
壱馬に聞いた話によると、女遊びが激しいらしい樹は、決して遊んだ女の子を''彼女’’にしたことはないらしい。

どんなに冷たい態度でも女の子たちはすぐに樹の虜になるから寝るだけの関係でもいいという女の子が、たくさんいる───────。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
そんな感じには見えないのに……
ぶっきらぼうで愛想もない。女の子をたぶらかしたりしそうなチャラチャラした風には見えない。
川村壱馬
川村壱馬
あいつから女を落としに行ったことなんてねぇよ。女が勝手に寄ってくる、その相手をしてやってるだけだ
確かにかっこいいし、綺麗な顔をしている。笑ったらなんとなく可愛らしいような感じもある。たしかにモテ顔だ。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
どうして彼女つくらないんだろう?
川村壱馬
川村壱馬
…それは俺から言う話じゃねぇ。もう行くぞ
壱馬はスタスタと教室に戻って行く。あたしも慌てて後を追うけど、壱馬が急に立ち止まったのでぶつかってしまった。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
痛い…なに!?
川村壱馬
川村壱馬
お前、教室戻っても樹に聞けよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ?
川村壱馬
川村壱馬
彼女いんのか、聞け
もういないってわかったのに?
そう思って首を傾げてたら、壱馬はちょっと笑ってため息をつき、説明してくれた。
川村壱馬
川村壱馬
俺が教えたのバレんだろうが
湯浅愛羅
湯浅愛羅
あ、そっか
多分あたしは、壱馬に、浮気されても、確実に気づけないなぁと思った。

壱馬の助言通りにしたら、とくに怪しまれずにその日を終えた。
結局何回聞いても樹は、彼女がいるともいないとも言おうとはしなかった。




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