校舎の外見通り、中もグチャグチャだった。紙とか缶とかお菓子の袋とかとにかく散乱してた。
壁ヒビ入ってるし、暗いし。
聞きたいことは実はいっぱいあるけど、とりあえず気になったことを聞いてみる。
もしかしてとは思ったけどさ…この学校が共学なんて考えられない。
ってことは転校早々退学じゃん。。
聞いてるよ!聞いてるけど、全然理解出来てない。男子校なのに女子が入っていいなんて誰が決めれんの?
はぁ〜っ!? 壱馬! あんたなにもの!?
戸惑うあたしをよそに、歩き続ける壱馬。階段を1番上まで昇って、すぐにある教室。
ガラッ
壱馬がちょっと乱暴に扉を開けると、そこには30人程度の男たちが。さっきの奴等に比べ、無駄に殺気振り回してないし、見た目はそりゃただのヤンキーだけど、話せばわかる気がした。壱馬を出迎えるように現れた男たちが、今まで壱馬にペコペコしてた人たちとは違って、友達のように挨拶をしてきた。
壱馬はそう返事して、グイッてあたしの腕を掴んで前に押した。
押し出されたあたしは、一斉に注目されてしまった。
壱馬に話かけてた人は、薄い茶髪の優しそうな男の人。混乱するあたしにものすごく優しく笑ってくれた。
次にちょっとぶっきらぼうに返事をしてくれたのは短髪のboy。ニッと笑ってる。一番静かにポツリと返事をしたのが帽子をかぶっている目つきの悪いやつ。
どうやらこの4人は仲良しさんらしい。
挨拶を終え、とりあえずあたしは壱馬に連れられて教室の一番後ろの席まで行った。
後ろのど真ん中にある机。何となく予感はしてたけど、壱馬は当たり前のようにそこに座った。
あたしはどうすれば、と悩んでたら壱馬がちょっと前の右端にあった椅子を指さす。あたしはそこに座る。
3人の名前を聞こうとした時、あたしより先に壱馬が言ってくれた。
最初に教えてくれたのはやっぱり優しそうな彼。
優しい北人。ぶっきらぼうの翔平。目つきが悪い樹。
この学校来て初のまともな人っぽい。
北人の言葉も謎だった。
バッと壱馬を見たら、当たり前だろみたいな顔してる。そんなの全く聞いてないよ!
確かに言ってたけど。ヘッドなんて聞いてないし!ヘッドってあれでしょ、族の頭ってことでしょ!?
確かに…。校舎で会った奴らはみんな敬語だったし、壱馬さんって呼んでた。
つまり…。ヘッドがいて、トップがいて、リードがいて、リーダーがいて…。
なるほど…。凄い話でちょっと混乱してるけど、何となくわかった気がする。
凄い、のかわかんないけど、なんかちょっとだけ誇らしい気な3人を見ると、凄いことなんだなぁって思う。
だけど、そばにいる壱馬はすごく恥ずかしそう。
そんな壱馬をからかう翔平とのやり取りを見て、あたしはケラケラ笑う。もちろん樹も北人も笑いながらやっぱり壱馬をからかったりして。この4人のその仲の良さがちょっとだけ羨ましかった。そんなあたしをやっぱり壱馬は気づいてくれて、パッとあたしを見て言う。
クラスの一員―――。羨ましいとちょうど思ってた時にタイミング良く壱馬は言ってくれた言葉があまりに嬉しかった。
一人ぼっちでは無いんだと、何度も教えてくれる。
そんな気待ちが溢れてきて、逆に照れてしまったあたしが小さくそう言うと、北人がにっこり笑ってくれた
トップの他の2人はあたしを見て少しだけ笑ってけれた。
学校来て早々歓迎されなかったから、やっと歓迎モードを受け凄く嬉しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。