第10話

組織1
297
2020/06/05 16:19
校舎の外見通り、中もグチャグチャだった。紙とか缶とかお菓子の袋とかとにかく散乱してた。

壁ヒビ入ってるし、暗いし。

聞きたいことは実はいっぱいあるけど、とりあえず気になったことを聞いてみる。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
……ここって男子校なの?
川村壱馬
川村壱馬
あぁ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
あたし、…ダメじゃないの?
もしかしてとは思ったけどさ…この学校が共学なんて考えられない。
ってことは転校早々退学じゃん。。
川村壱馬
川村壱馬
…俺が許したからいいんだよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え!?でも先生とか、PTAさんとかさ!
色々言ってくるんじゃないの!?
川村壱馬
川村壱馬
うるせぇ騒ぐな。灰高の先公に決定権はねぇよ。もちろんPTAにも校長にも
湯浅愛羅
湯浅愛羅
じゃあ誰に決定権があんの!?
川村壱馬
川村壱馬
てめぇ人の話聞いてねぇのか
聞いてるよ!聞いてるけど、全然理解出来てない。男子校なのに女子が入っていいなんて誰が決めれんの?
川村壱馬
川村壱馬
俺が許したんだからいいっつったろ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
は?  え…もしかして決定権って
川村壱馬
川村壱馬
灰高は俺のもんだ
はぁ〜っ!?  壱馬!  あんたなにもの!?
川村壱馬
川村壱馬
とにかく気にしなくていい
湯浅愛羅
湯浅愛羅
う、うん…
戸惑うあたしをよそに、歩き続ける壱馬。階段を1番上まで昇って、すぐにある教室。

ガラッ

壱馬がちょっと乱暴に扉を開けると、そこには30人程度の男たちが。さっきの奴等に比べ、無駄に殺気振り回してないし、見た目はそりゃただのヤンキーだけど、話せばわかる気がした。壱馬を出迎えるように現れた男たちが、今まで壱馬にペコペコしてた人たちとは違って、友達のように挨拶をしてきた。
吉野北人
吉野北人
おはよ、壱馬
川村壱馬
川村壱馬
おぅ
吉野北人
吉野北人
その子? 昨日言ってた愛羅ちゃんって
川村壱馬
川村壱馬
あぁ
壱馬はそう返事して、グイッてあたしの腕を掴んで前に押した。
押し出されたあたしは、一斉に注目されてしまった。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
えっと! お、おおはようございます
吉野北人
吉野北人
ははっ! うん、おはよー
壱馬に話かけてた人は、薄い茶髪の優しそうな男の人。混乱するあたしにものすごく優しく笑ってくれた。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
おはよう、ございます
浦川翔平
浦川翔平
よぉー
藤原樹
藤原樹
あぁ
次にちょっとぶっきらぼうに返事をしてくれたのは短髪のboy。ニッと笑ってる。一番静かにポツリと返事をしたのが帽子をかぶっている目つきの悪いやつ。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ゆ、湯浅愛羅です! よろしくお願いします!
藤原樹
藤原樹
知ってる。昨日壱馬に聞いた
浦川翔平
浦川翔平
普通じゃありえねぇよ、女いれるなんて
吉野北人
吉野北人
そうそう。でも、壱馬の頼みじゃあね。珍しく真剣に頼んでたし
川村壱馬
川村壱馬
余計なこと言うなよ
どうやらこの4人は仲良しさんらしい。
挨拶を終え、とりあえずあたしは壱馬に連れられて教室の一番後ろの席まで行った。
後ろのど真ん中にある机。何となく予感はしてたけど、壱馬は当たり前のようにそこに座った。
あたしはどうすれば、と悩んでたら壱馬がちょっと前の右端にあった椅子を指さす。あたしはそこに座る。
川村壱馬
川村壱馬
……お前ら、名前
3人の名前を聞こうとした時、あたしより先に壱馬が言ってくれた。
吉野北人
吉野北人
愛羅ちゃん、オレは北人。よろしくね
藤原樹
藤原樹
いつき
浦川翔平
浦川翔平
翔平!よろしく
最初に教えてくれたのはやっぱり優しそうな彼。
優しい北人。ぶっきらぼうの翔平。目つきが悪い樹。
この学校来て初のまともな人っぽい。
藤原樹
藤原樹
俺ら3人はトップだ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ?
吉野北人
吉野北人
ヘッドにつく、次に偉いランク
北人の言葉も謎だった。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ヘッド!?
藤原樹
藤原樹
…お前の兄貴だろうが
湯浅愛羅
湯浅愛羅
そうなの!?
バッと壱馬を見たら、当たり前だろみたいな顔してる。そんなの全く聞いてないよ!
川村壱馬
川村壱馬
だから言っただろ。俺が許せばいいんだって
湯浅愛羅
湯浅愛羅
い、言ってた、ね
確かに言ってたけど。ヘッドなんて聞いてないし!ヘッドってあれでしょ、族の頭ってことでしょ!?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
…てことは、トップも凄いんだね
吉野北人
吉野北人
俺たちだけだからね、壱馬って呼べるの
藤原樹
藤原樹
みんなさん付けだ
確かに…。校舎で会った奴らはみんな敬語だったし、壱馬さんって呼んでた。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
じゃあ、このクラスは?
藤原樹
藤原樹
このクラスの奴らはリード
湯浅愛羅
湯浅愛羅
リード?
浦川翔平
浦川翔平
学年まとめたりできるランク
吉野北人
吉野北人
1クラスに1人リーダーがいるから、そいつに指示したり、まとめたり
つまり…。ヘッドがいて、トップがいて、リードがいて、リーダーがいて…。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
じゃあリーダーの下は?
藤原樹
藤原樹
普通。ランクなし
なるほど…。凄い話でちょっと混乱してるけど、何となくわかった気がする。
吉野北人
吉野北人
壱馬は初めて灰高をまとめた
藤原樹
藤原樹
今まで誰も出来なかったのにな
吉野北人
吉野北人
1代目ヘッドなんだよ
凄い、のかわかんないけど、なんかちょっとだけ誇らしい気な3人を見ると、凄いことなんだなぁって思う。
だけど、そばにいる壱馬はすごく恥ずかしそう。
川村壱馬
川村壱馬
だから余計なこと言うなって
吉野北人
吉野北人
照れんなよ
川村壱馬
川村壱馬
照れてねぇよ
浦川翔平
浦川翔平
お兄ちゃんっ
川村壱馬
川村壱馬
ぶっ飛ばすぞ
そんな壱馬をからかう翔平とのやり取りを見て、あたしはケラケラ笑う。もちろん樹も北人も笑いながらやっぱり壱馬をからかったりして。この4人のその仲の良さがちょっとだけ羨ましかった。そんなあたしをやっぱり壱馬は気づいてくれて、パッとあたしを見て言う。
川村壱馬
川村壱馬
お前はこのクラスの一員になったんだぜ
クラスの一員―――。羨ましいとちょうど思ってた時にタイミング良く壱馬は言ってくれた言葉があまりに嬉しかった。
一人ぼっちでは無いんだと、何度も教えてくれる。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
あ、ありがとう
そんな気待ちが溢れてきて、逆に照れてしまったあたしが小さくそう言うと、北人がにっこり笑ってくれた
吉野北人
吉野北人
これからよろしくね
トップの他の2人はあたしを見て少しだけ笑ってけれた。
学校来て早々歓迎されなかったから、やっと歓迎モードを受け凄く嬉しかった。

プリ小説オーディオドラマ