第14話

特別2
262
2020/02/20 10:33
放課後になって、なにやら集会がたまに開かれることを知った。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
今日は?
川村壱馬
川村壱馬
あ?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
帰んの?
川村壱馬
川村壱馬
まだ帰んねぇよ。俺たちは全員が校舎出るまで帰んねぇ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ〜大変なんだね
ていうか学校が1つの組織みたいになってんのは灰高ならではなのかな。学校同士で争ったりしてるんだろうか。

もちろん知りたがりの愛羅さん。聞いてみた。

すると、
川村壱馬
川村壱馬
アホな質問だな
バッサリ。みごとバッサリ切られた。
川村壱馬
川村壱馬
当たり前だ。じゃなきゃこんなに必死に守ったりしねぇ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
守る?
川村壱馬
川村壱馬
下の奴ら
つまり学校の生徒たちね。
川村壱馬
川村壱馬
つーかお前はさっさと帰れよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え!なんで!?
いる気満々だった。あたしも防衛?協力しようとか考えてた。
川村壱馬
川村壱馬
いたってつまんねぇーよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
帰ったってつまんない!
川村壱馬
川村壱馬
わがまま言うなよめんどくせぇな
湯浅愛羅
湯浅愛羅
だってー!
川村壱馬
川村壱馬
校舎内にいたら巻き込まれるかもしれねぇ。だから帰れ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
なにに?
川村壱馬
川村壱馬
喧嘩
湯浅愛羅
湯浅愛羅
校舎外で絡まれたらどうすんのよォ!
川村壱馬
川村壱馬
1人では帰さねぇよ
川村壱馬
川村壱馬
リードに送らせる
あらVIP待遇。でも、
湯浅愛羅
湯浅愛羅
つまんないよ。ここにいたい。
川村壱馬
川村壱馬
……寂しいのか?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ちょっと
川村壱馬
川村壱馬
……また泣くのかよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
多分
シュンとしてたら壱馬は少し黙ってなにか考えていた
川村壱馬
川村壱馬
わかった
やった!


そう言おうとした私より先に壱馬が言う。
川村壱馬
川村壱馬
俺ん家に帰れ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ??
川村壱馬
川村壱馬
1人なのが嫌なんだろ。じゃあ俺ん家先帰っとけ
なるほど!って……壱馬の家!?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
そそそそんな!  ダメでしょ!!
川村壱馬
川村壱馬
なんで?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
なんでって、だって
あたしは……
川村壱馬
川村壱馬
変なこと気にすんな
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え……
川村壱馬
川村壱馬
死んだ旦那の前の嫁の子供なのに、って思ってんだろ?
なんで分かるんだろう、こやつ。
エスパーなのはもう重々分かったけど、やっぱり相変わらず驚いてしまうのは致し方ない
川村壱馬
川村壱馬
お前のこと心配してる。会いたいって言ってた。
川村壱馬
川村壱馬
それに、弁当。食ったなら分かんだろ
そうだ―――。
会いたくないとか、憎いとか思ってたらあんなに愛のこもったお弁当は作れない。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
―――うん
あたしは大きく頷いた
川村壱馬
川村壱馬
俺の家に行けばお袋がいる、レイもいる
湯浅愛羅
湯浅愛羅
レイ?
川村壱馬
川村壱馬
湯浅愛羅
湯浅愛羅
妹いるの!?
川村壱馬
川村壱馬
うち4人兄妹
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え! 多ッ!
びっくりなんですけど! 初耳だし!
そんなにいっぱいいるとは知らなかった。
あたしを誘拐まがいなことをしたあの人が兄だってことは知ってるけど。
川村壱馬
川村壱馬
兄貴と俺と弟は、お袋の前の旦那の子供だが、一番下の妹とレイはお前の親父と俺のお袋の子供
はい!!!???
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ってことはあたしと血繋がってんじゃん!!
川村壱馬
川村壱馬
あぁ、半分はな
異母姉妹だよね!?
ってことは、半分血繋がってるんだ!
湯浅愛羅
湯浅愛羅
そこ重要でしょ!!
川村壱馬
川村壱馬
そうか?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
……
川村壱馬
川村壱馬
……説明しろってか
大事なことを全然言わない壱馬を睨むあたしに渋々言う
コクリと頷いたあたしに、少しため息をつきながら口を開いた
川村壱馬
川村壱馬
1番上の兄貴、お前を車で迎えに行った奴がカイ。実の親父に引き取られて俺とは早れて暮らしてた。今はもう24歳で、結婚して上手くやってるらしい。
あの無愛想な奴は兄貴か…。そういえば壱馬は何歳なのって聞いたら、お前より兄貴で高校通ってんだから18に決まってんだろって言われた。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
でも同じクラスじゃん
川村壱馬
川村壱馬
しょうがねぇだろ。俺のクラスに入れるしかなかったんだから
湯浅愛羅
湯浅愛羅
なんで?
川村壱馬
川村壱馬
は?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
だからなんで?
川村壱馬
川村壱馬
あ?
聞くなよって顔。愚問だろって顔。
こいつも結構分かりやすい。
川村壱馬
川村壱馬
お前は俺が面倒見るって言ったろ
だからだよ、って続けた壱馬は少し照れているみたいだった。

あたしは心の中でホッコリ嬉しかったけど、それを隠して『そっか』と言った。

そして、また壱馬は兄弟の話を続けてくれた。
川村壱馬
川村壱馬
弟がユウ。中3。家にはあんま帰ってこねぇ。遊びまわってるらしい
ほーヤンキーの弟もヤンキーか。
……もちろんそんなこと言えるわけが無い。。
川村壱馬
川村壱馬
で、妹がレイ。小6
湯浅愛羅
湯浅愛羅
可愛い?
川村壱馬
川村壱馬
当然だろーが
実はシスコンらしい。これもモチロン言えるわけが無い。。
川村壱馬
川村壱馬
説明してやったんだから帰れよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
…わかった
川村壱馬
川村壱馬
俺が帰ったら家に送る。それまで俺んちいろ、送らせる
あたしが頷くと同時にテキパキ進める壱馬はよっぽどさっさと帰って欲しいみたい。

壱馬が『慎』、って名前を呼ぶと教室から威勢のいい返事が聞こえる。
川村壱馬
川村壱馬
悪い、こいつ家まで送ってやってくれ
長谷川慎
長谷川慎
はい! 壱馬さんのお宅でいいんですか?
川村壱馬
川村壱馬
あぁ
長谷川慎
長谷川慎
わかりました!
川村壱馬
川村壱馬
頼む
なんだ好青年っぽい綺麗な顔だち。
リードの慎。一応クラスメイト……。
でも、灰色の制服は見事に着崩されていて、もはやあんまり原形をとどめてないような。。
どうやら原形に近いのは北人っぽい。
長谷川慎
長谷川慎
愛羅ちゃん、行くよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
はいっ
なんか変に緊張しちゃって勢いよく立ちすぎた。
恥ずかしいから、反動で倒れた椅子は放置して帰ろう。
また明日ねって返してくれた北人に、また明日って返して。
じゃあなって言った翔平に、じゃあねって返して。
またなって言った樹にまたねって返して。

あたしは教室をあとにした。
長谷川慎
長谷川慎
愛羅ちゃんは凄いな
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ? なんで?
長谷川慎
長谷川慎
よっぽど君が大切なんだろうね、壱馬さんは
長谷川慎
長谷川慎
これはもはや愛情だな
湯浅愛羅
湯浅愛羅
えっ、と…
トップのみんなはあたしが彼女じゃないって知ってる。

だから多分、同じクラスのリードも。

なのに、どゆこと??
長谷川慎
長谷川慎
俺、一応灰高で1番喧嘩強いんだ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
長谷川慎
長谷川慎
あ。もちろん壱馬さんは除いて
壱馬が1番強いらしい。だからヘッドなのか。
あれ、でもトップのみんなは?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
トップよりも強いの?
長谷川慎
長谷川慎
喧嘩はね。北人さんは…よくわかんないけど、あの人は未知だから。
長谷川慎
長谷川慎
でも翔平さんと樹さんよりは強いと思う、俺
自慢には聞こえなかった。慎は『喧嘩はね』って最初に言ったから。トップの彼らは、慎より上。その理由は喧嘩の強さだけじゃない、そう真っ先にしめしていたから。
長谷川慎
長谷川慎
俺に君をおくらせたってことはそーゆーことなんだよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
そーゆーこと…?
長谷川慎
長谷川慎
壱馬さんにとって何よりも大切だってこと、君が。守るために俺を使うくらい
自分の次に強い慎を送らせた。
その壱馬の気持ちが本当は物凄く嬉しかったけど恥ずかしかったから『ふぅん』って言っておいた。

そんな見た目とは裏腹にやたら凄い慎。

そんな慎があたしなんかのために……
湯浅愛羅
湯浅愛羅
…面倒だった?
長谷川慎
長谷川慎
え? はは、全然?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
―――慎、ありがとう
慎はニッコリ笑ってくれた。
送ってくれたのはバイクでだった。
壱馬の家がどこなのか知らないけど、そんなバイク使わなきゃ行けないくらい遠いのかな?
バイクの後ろで落ちないように必死でしがみつきながらそう思ってた。
長谷川慎
長谷川慎
着いた
湯浅愛羅
湯浅愛羅
近っ!
たしかに、あたしが借りてるマンションよりは学校から離れてるけど、バイクで飛ばしちゃったからあまりに一瞬だった。

ヘルメットを慎に渡してバイクから降りて目の前の家を見上げる。






















……言葉を失った





























































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